第10話 恋?
その日の夜、職場の駐車場へ着くと、事務所へすぐ入らず、少しの間、車の中に居た私…
5分程して山田くんの車が駐車場に入ってきた…
車が止まったところで、携帯に手を伸ばす私。
トゥルトゥルトゥル…
「…もしもし…」
と、山田くんが出た…
「…山田くん、今日はちゃんと学校に行った?」
冗談ぽく聞く私。
「もちろん!真面目な俺なのに…」
と山田くん。
「じゃ、真面目な山田くん、仕事も真面目にしようね♪」
と私。
「あったりまえじゃん!」
とちょっと偉そうな口調の山田くんがかわいくって、思わず笑ってしまった…
「…じゃ、遅れるから切るね。また後で!」
「…また、後で。」
山田くんがそう言うと、時間を見ながら携帯を切った。
「5分前か…急がなきゃ!」
そう呟いて、急いで車を出た…
仕事の始まる1分前、事務所に駆け込んで来た山田くん。
「ギリギリセーフ…」
とか言いながら、タイムカードを押す山田くんの後ろ姿を見ていた私。
少しぼぉーっとしていた私は、振り返った山田くんと目が合ってドキッとした。そんな私に、いたずらっ子のような表情で、
「さぁ、仕事、仕事…」
と言いながら、私の肩をぽんっとたたいて通りすぎた…
仕事中も、なんだかフワフワした感覚が抜けなくて、気がつくと山田くんの姿を探している私。
なんか片思いしてた学生の頃みたい…と一人苦笑してしまった…
仕事が終わり駐車場へ向かうとき、隣を歩いていた山田くんが、耳元でささやいた。
「…あんまり、仕事中に見つめられると集中できないんで…」
気付いてたんだ!そう思うと、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなってしまった…