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第30話 結末

長らく投稿が遅れて、すみません。いろいろ悩んだ結果の結末です。どうぞご覧くださいませ。

山田くんから手渡された封筒には、夫からの手紙が入っていた…。


博子へ…

結婚してから私が先日退職するまでの間、本当に家族のために尽くしてくれてありがとう。

また、この10年、君から笑顔を奪ってしまったこと、本当に申し訳なく思っている。

山田くんとの一件があってから、私なりに夫婦のありかたについて考えてきたつもりだが、君の心が私の元へは戻りそうにないことを痛感した10年だった。

君は、あの事故以来、本当に家族のために働いてくれたと思う。子供たちも春には、それぞれの道へ進むだろうし、私の両親も旅立った。私も退職したし、今こそ、君を自由にする時だと思う。君と結婚できて幸せだった思い出を糧に、残りの人生を過ごそうと思っている。

本当に今までありがとう。そして愛している…博子


一気に読み終えた私は、口数の少ない夫の気持ちをようやく理解したような気がした…

夫は夫なりに私をずっと愛し続けていたんだ…と思うと涙が止まらなかった…。

封筒の中には、夫の欄を埋めた離婚届が入っていた。

ずっと隣にいた山田くんが、静かに口を開いた…。

「事故で僕の意識がなかなか戻らない間、ご主人さんが何度も両親に謝罪しに来てたらしいんだ…僕が一人息子で、まだ若かったからだと思う…なかなか回復の兆しが見えなくて、諦めかけてた両親を励ましてくれて…本当だったら、自分の妻に手を出すような相手なんて、どうなってもいいはずなのにね…正直、この10年、博子さんに会うために生きてきたけど、あなたをご主人から奪うのは無理だと、今はっきり分かったよ…」

山田くんの話を聞いて、主人の寛容さに驚いた…私が逆の立場だったら、到底許せる相手ではない…

山田くんの言うとおり、夫以上に私を愛してくれる人は、いるのだろうか…?


この10年の空白を埋めるように山田くんと語り合った私は、目的の地へたどり着いたのに気付いた。そこは10年前、山田くんと最初で最後のデートの場所、あの美術館だった…。

また、こうして山田くんと一緒に来ることができるなんて…

10年前と変わらない景色…隣には変わらない笑顔の山田くん…

あの時は、これから始まる恋の予感にときめいていたはずなのに…今は、その恋が終わろうとしている…

こんなカタチで山田くんとさよならするなんて思いもしなかったけど、でも、生きていてくれただけでも神様に感謝しなくちゃね…

いろんなことが走馬灯のように頭の中を駆け巡っていくなかで、山田くんは10年前と同じように、ゆっくり優しく抱きしめてくれた…

「もう一度、こうして抱きしめることができただけでも、神様に感謝かな…」

その言葉を聞いて、思わず笑って答えた私…。

「私と同じこと考えてる…」

本当に生きていればこそ、なんだ…とお互い感じた10年だったんだね。今は、別れることになっても、生きていれば、また出会えるし、大切な人には変わりないから…。そんな想いを込めて、私も山田くんを優しく抱きしめた…

「さよなら、山田くん。生きていてくれて、ありがとう…」

いつの間にか傾いた夕日に包まれて、二人のシルエットもオブジェの一部になっていった…

(終)

長い間、ご覧くださり、ありがとうございます。恋人や夫婦の在り方について、皆さんも考えてみてくださいね。いろんなご意見も頂きありがとうございました(^O^)

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