第25話 面会
黙っている私に夫は、こう言った…
「…博子、今すぐ返事しろとは言わない…当分は、おまえも入院生活だし…退院するまで、しばらく時間がある…ゆっくり考えろ…」
そして、静かに病室から出て行った…確かに今は生きてること自体に感謝しなくちゃならない身だけど、退院後のことを考えたら、いっそのこと死んでしまった方がよかったかも…と思ったのも事実だった。
でも、助かった今、生死をさまよっている山田くんにも生きてほしい…
たとえこれから先、二度と会うことが許されないとしても…
これが正直な今の気持ちだった…
いろんなことがありすぎて疲れてしまった私は、山田くんのことを考えながら、いつの間にか眠ってしまった…
どれくらい眠っていたのか…ふと目を開けると見知らぬ女性の顔が見えた。
不安げに覗き込むその顔は、なぜか懐かしい感じがした…
「…や、山本さんですか…?」
おずおずと尋ねる女性…
横になったまま私は、小さく頷いた。
「…私、山田でございます…山田拓也の母で…」
突然のことで声も出ない私は、静かにその女性を見つめた。
50代前半とおぼしき感じで、事故のショックで憔悴しきってはいるものの、美人というより可愛いらしいタイプに見えた。
「…この度は、息子のせいで大変なことになってしまって…本当に申し訳ございません…」
深々と頭を下げられてしまった…
突然の面会で謝罪を受けた私は、申し訳ない気持ちでいっぱいになった…