第23話 家族との…
病院のベッドの上で、空白の時間を取り戻すかのように、ゆっくりと確実に記憶がよみがえってきた・・・。
でも、やっぱり山田くんがどうなったかは、わからない・・・
最悪の事態も考えたくはないけど、考えずにはいられない・・・
動かない身体のもどかしさも加えて、本当にどうしたらいいか、わからなかった・・・
どれくらいの時間、ぼんやりとしていたのか、しばらくすると外が騒がしくなってきた。
そして、急にドアが開くと、夫と子どもたちが入ってきた。
「・・・大丈夫か?俺が誰か分かるか?」
「ママー!大丈夫?痛くない?」
「ママ・・・ママ・・・」
子どもたちは、安心したのか泣き出してしまって、夫の目にも、うっすら涙が浮かんでいた。
その姿を見た時、自分がなんて「浅はか」だったのか、痛感した・・・
ああ・・・一人の人間として、女性として生きる前に、家族として守らなくてはいけないものがあったのに・・・
「・・・ご、ごめんね・・・」
怪我をしていたため、その「ひと言」を言うのがやっとだった・・・
10分ほど子どもたちと一緒にいたあと、夫は子どもたちを家に連れて帰った。
帰り際、「後で、また来るから・・・」と言い残して・・・
それから1時間後、夫が戻ってきた。
「…ちょっと、いいか?」
私は、少し頷いた。
「…何から話したらいいか…あの男…山田君だったか…今も意識不明の重体だそうだ。」
私の目から涙が流れ落ちた…
「…事故の原因は、対向車がセンターラインを越えて突っ込んできたからだそうだ…とっさに、山田君がハンドルをきってくれたおかげで、おまえは助かったのかもしれない…」山田くんらしい…と胸が痛くなった…