第19話 小さな島の…
本当に今日は、いい天気だった…。窓から見える海も穏やかで、入ってくる風も心地いい…
しばらく会話もなく、車を走らせていた山田くん。そういえば、何処へ向かっているんだろう…?
そんな気持ちを見透かしたように、山田くんが声をかけてきた。
「山本さん、何処に向かっているか分かる?」
「さぁ…」
「静かで、とてもいい所なんだけど…山本さん、絵は好き?」
「えっ?嫌いじゃないけど…」
「よかった。じゃあ、楽しみにしてて。」
と、笑顔の山田くん。
でも、正直なところ絵画を観るなんて、年に1回くらいで、特別詳しいわけでもなかった…
山田くん、絵画観賞も趣味なのかなぁ…?
そんなことを考えているうちに、車は高速道路へ入った…
えっ?!何処へ行くの…?
そんなに遠出するとは思わなかったので、少し不安になった。子供たちが、帰ってくるまでに戻れるかしら?高速に乗って1時間、着いた所は小さな島にある大きな美術館だった…。
以前、TVでも紹介された所で、1度は行ってみたいなぁ…と思っていた。
「山本さん、ここ来たことある?」
「いいえ…初めて。行ってみたいなぁとは思ってたけど…」
「…よかった…ここ、美術館も素晴らしいけど、まわりの景色も最高なんだ……」確かに周りは海で囲まれて美術館の建物も違和感なく風景に溶け込んでいた…
私たちは、お昼時だったので、まずはランチをとることにした。
美術館に隣接してあるレストランは、平日にも関わらず賑わっていた…
地中海のイタリアをイメージしたような造りで、雰囲気もよかった。
「…ここでいい?割とランチも安くておいしいんだけど…」
と山田くん。
「いいよ。雰囲気もいいし、料理もおいしそう…」
席に着くと、私たちは周りの人達が食べているミニコースのランチを注文した。