第18話 初デート
家を出てすぐ、携帯が鳴った。
「もしもし…」
「あ、俺。もう着いたから。」
「ほんと?!すぐ行くからっ!」
「うん、分かった。」
電話を切って急いで走った…。
いつもは、歩いて5分の道のりを走って3分。運動不足の私にしては、かなり頑張ったかな。
そして、駅に着いたとき、車に乗っている山田くんを見て、胸がキュンとなった。
30過ぎの私が言うのもおかしいけど、学生のときの初デートみたい…そう、昔に戻ったみたいな感覚…
でも、山田くんに声をかける前に、コンビニの窓に映る自分の姿を見て、そんな気持ちも風船がしぼむように小さくなってしまった…
だって、急いで走ったせいで髪はボサボサ、顔は真っ赤、服まで乱れる始末…。とても、これからデートするような姿じゃなかった。
少し身なりを整えようと窓に近づくと、私の後ろにもうひとつ顔が…!
振り向くと山田くんだった。
「どうしたの?山本さん?待ち合わせ、コンビニだった?」
「…いいえ、駅前で合ってるよ。」
「そうだよね…車、あっちだから行こう!」
そう言って、私の手を取る山田くん…
あまりにも自然に手をつないだので、恥ずかしいを通り越して、ぼーっとしてしまった…
きっと端から見たら、若いお兄さんに引っ張られている、変なオバサン?だったかも…
ぼーっとしている間に、車に乗せられ、気がつくと海岸線を走っていた…
「…山本さん、大丈夫?気分でも悪い?」
と、山田君の声。
やっと現実の世界に戻った?!私は、
「うん、大丈夫…」
と言いながら、窓から見える海を眺めた…