第13話 映画館で…
たわいない話をした後、電話を切った私。
家事を済ませて、久々に映画でも観てこようと思い、身支度を始めた…
何を観るかは決めていなかったので、行ってから選ぶことにした。
何ヶ月ぶりかの映画館。何が上映されてるんだろう…と思いながら、一覧表を眺めていると、向こうから見慣れた顔が…
「あ…山田くんだ!」
ーったく…学校サボって!一言声をかけようと思って一歩足を踏み出したとき、隣に可愛い女の子が見えた…。二人は楽しそうに笑っていた…。
とっさに後ろを向いた私は柱の陰に隠れた…。
二人は、そのまま楽しそうにしゃべりながら、映画館を出て行った…。
後ろ姿を見つめながら、すごくショックを受けている自分に気付いた。
二人が出て行った扉をしばらく見つめていたら、いつの間にか涙が頬を伝っていた…。慌てて化粧室へ入ったけど、涙が止まらなくてなかなか出ることができなかった。
結局、映画を観ることもなく逃げるように家に帰った…
そのまま寝室にこもって泣いているうちに、いつの間にか眠ってしまった私。子供たちの
「ただいま…ママ具合悪いの?」
と言う声で目が覚めた…
「おかえり…大丈夫だよ。ちょっと疲れただけだから…すぐ、おやつの用意するね。」
そう言って顔を洗おうと洗面所へ…。でも、鏡に映った自分の顔はひどかった。なにもかも消し去りたい気分で何度もゴシゴシ顔を洗った…
とりあえず、平静を装いながら普段通り家事をこなした。けれど、刻々と近づくバイトの時間が怖かった。いつも通りに山田くんに接することができるのか正直自信がなかった…