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第2話 転機
その日の夕食後、さりげなく話を切り出した…
「…パパ、最近できたばかりの温泉あるじゃない?この前、みんなで行った…」
「あぁ…」
「あそこで清掃員募集してるらしいんだけど、面接行ってもいいかなぁ…?」
「えっ?!」
それまでTVから目を離さなかった夫の顔が、こちらを向いた。予想していなかった話にキョトンとした表情。私の大好きな顔のひとつだった…
そういえば、15歳も年上ながら私が夢中になった理由の一つに、時折見せる子供っぽさがツボにはまったんだっけ…
そんなことを考えていると、夫の声が聞こえてきた。「大丈夫か?やれるのか?」
「えっ?!」
今度は私が驚く番だった。ダメもとで切り出した話だったので、肯定的な返事を期待してなかったから…
結局その日は、とりあえず面接を受けてみることで、話し合いは終わった…