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シャンディラ編5

続き

議会は王国の歴史上でも類を見ない白熱を帯びていた。

国の外交方針、国民への対応の案は優秀な議員たちのもと早々にまとまった。

しかし、次期の王を『第一王子サンジェル派』か『第二王子セキュリス派』のどちらにするか。

それが最大の論点であった。

多数派はサンジェル派である。

議論は毎回サンジェルに傾くものの、ルージェラルド家の一存で振り出しに戻る。

その繰り返しが起きていた。

そしてなんの進展がないまま、2日が過ぎる。


「サンジェル王子。本日の予定ですが...」

「大丈夫だ。頭の中に入っている。」

「さすがです。」

「我は王になる器だ。当然のこと。セキュリス王子の動向は?」

「変化はありません。先日と同じく、ルージェラルド家当主カバズゼル様と会談を。」

「そうか。」

付き人は既に連日の長時間会議で疲弊している。

自身にも多少の疲れを感じている。

そろそろ決めなくてはならない。

「ルージェラルド家が求めているものはただ一つ。戦争だ。」

ルージェラルド家は元々領地を持つ小貴族の一つに過ぎなかった。

それがここまで肥大化したのは戦争特需を一身に享受したからに他ならない。

現在アリアトリス王国の軍需品のほとんどの生産を担っている。

彼らの稼ぎは戦争に依存しているとも言っていい。

そして彼らは戦争の度に領地を増やす。

彼らの狙いはそこにある。

「...確か会議までにまだ時間があったな。我は今から少し祈りに行ってくる。」

「了解いたしました。会議の準備は手順通り整えさせていただきます。」

サンジェルは至って冷静であった。

現時点ではこちらが圧倒的多数派。

セキュリス派は中心にルージェラルド家がいるだけ。

そこを攻略できればなし崩しだ。

しかしいくつか疑問は浮かぶ。

(なぜ、セキュリスは今更王座を狙い始めたんだ?元々彼は王座に興味はなかった。不可解なほど突然だ。ルージェラルド家にも不信感がある。そもそもこの王位戦自体ほとんど僕の出来レースだ。何故ここでごねる必要がある。どう説得したところで連合王国とは戦争しないと分かっているはず...)

サンジェルは少し考えたが、今考察したところで答えは見つからないという結論を脳内で導き出し、足早に教会に向かった。


「記憶喪失?」

俺は路地裏で救った女の子をとりあえず治療すべく、教会病院に来ていた。

そこで牧師に聞かされたのはあまり実感のない言葉だった。

「そうですな。どこかでかなり強い衝撃を受けたのでしょう。」

「まじすか。」

女の子に目をやる。

あまり衰弱はしていないようだ。

殴られてはいたが、跡が残るような傷はない。

「まあ、良かったというにはまだ早いが、とりあえず良かった。重大な怪我はなさそうだ。」

記憶喪失という問題はあるが、その辺は今後どうにかするしかない。今考えても無駄だ。

「とりあえず覚えてるところを確認しよう。名前は?」

「アムアリーナ。アムアリーナ=ザール=ハヴァロスゲール。」

「長!!今の君の記憶容量のほとんどそれに使ってないか?」

すると、牧師は少し笑った後に呟いた。

「ふむ、ザールといえば東の領地ですね。ザール家が統治する農業が盛んな土地です。ザール家に関係があるのではないでしょうか。」

「ザールですか。ここからどのくらいで着きますか?」

「ここからは距離があります。馬車を使っても一週間はかかるかと...」

「...一週間ですか。」

「馬車を借りる資金の面も考えるとかなりコストは高いですね。王国に支援を要請したらどうでしょうか。医療関連として申請すれば多少の費用は負担してくれるでしょう。」

「そうですね。考えてみます。」

ふと、静かだと思い女の子に目をやる。

「あれ?」

いなかった。

「どこに行ったんだ?まだ聞くことあったのに...」

「大丈夫です。教会内にはいるでしょう。ここは私の領域でもあるので。」

「すごいっすね。」

そんなことを話していると後ろのドアが開く。

「リーゼ。元気かな?」

そしてこの部屋に入ってきたのはサンジェルさんであった。

「サンジェルさん!?」

「あ!君は!えっと、そうだ、名前聞いてない...今更だが、名前は?」

「あ、俺は司馬総司です。司馬で大丈夫です。」

「シバって言うんだ!いい名前だ!シバッ!って感じで。」

それはよくわからない。

「それでシバ、なんでこんなとこに?」

「あの、女の子が暴漢に襲われてまして。」

「何その話危ないな。」

「俺がその子を助けて、ここに連れてきたって感じですね。」

「素晴らしいじゃないか!いい精神性を持っている!」

「いえいえ、そんな。でも、彼女は今記憶喪失らしくて。」

「なんと。」

俺は大体のことをサンジェルさんに話した。

「なるほど、ザールか。」

「すみません。ザールしか名前覚えてなくて。」

「いやいや、ミドルネームがザールって分かっただけでも収穫だよ。まあ、記憶喪失な以上虱潰しに情報に当たるしかないね。それで?どうするの?シバは。」

「あ。」

確かに、俺が別に彼女を助ける義務はない。

たまたま成り行きで助けることになっただけ。

そこまで思い入れがあるわけでもない。

「そうですね...」

だけど、なぜか、俺は

「とりあえずザールまで同行します。」

彼女を助けたくて仕方ない。

「じゃあ、支援を出すよ。」

「え?支援ってどういう?」

「え?王国から医療支援を出すってこと。」

「なんでサンジェルさんが?」

「あ!」

気付いたかのような反応をした後、サンジェルさんは笑いながら俺に衝撃の事実を話した。

「えーー!!!!!!!!」

「あははははは!ごめんごめん!いうタイミングなくてさ!」

「え?本当ですか?第一王子って...やば、不敬なことやってないかな?」

「大丈夫さ!もう友達みたいなものだろ?何やったって全然気にしないさ!」

「くっ素晴らしい漢だ...!」

「僕女だけどね。」


その後サンジェルさんは付き人の方が来て、彼女を回収して行った。

俺は彼女が去った後しばらく悶え苦しんだ。

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