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シャンディラ編3

続き

アリアトリス国王が死んだ。

このことは王国内部を激震させたが、外部には全く衝撃を与えなかった。

王国中枢機関が隠蔽したのだ。

王城の警備は大損害を受けたものの、首都内に展開していた予備兵力を暫定的に警備に当て、この任に付けられた兵士は魔術などを用いた徹底的な口止めが行われた。

なぜなら現在アリアトリス王国は東部山岳地帯を支配するザクゼン連合王国と緊張状態にあったからだ。

そのため国王が死んだことを公にすれば王国全体でで動揺が起きる。

その隙を突かれるのをアリアトリスは恐れたのだ。

そしてこの行動を考案、実行したのは


サンジェル・アリアトリスである。


彼は王の間でたった一人奇跡的に生き延びた。

父の死に直面しながらも冷静に内政を立て直した。

まさに王の器である。

この功績を讃え、多くの大臣、貴族が彼を今すぐに王に据えるべきだと考えた。

しかし、


「女が王になるなどありえん。」


そのような意見が散見される。

アリアトリス王国議会は全会一致制ではないものの、その主張をした貴族が問題であった。

ルージェラルド家。

アリアトリス王国の領土の2割を持つ巨大貴族であり、生粋の保守派だ。

アリアトリス王国議会の過半数がサンジェルを国王に据えようとしても彼の一存で変わる。


王国は揺れる。



「....よく寝たな。」

目を覚ますと知らない天井だった。

窓から街を見渡すと嫌でも痛感させられる。

「俺、やっぱり違う世界に来たんだな...」

大通りの様子を見てみると、初日は少し焦っていたのかあまり気付かなかったが、ポツポツと普通の人間とは違うのであろう人種の人々も大通りを歩いている。

それがまた別世界感を際立たせる。

「とりあえず、情報収集をしよう。俺はこの国もこの世界のことも全く分かっていないしな。」

昨日サンジェルさんと話したことで分かったが、この世界でも元の世界の言語は通じるようだ。

元々そう出来ているのか、はたまたマシスの計らいか定かではないが、ありがたいことだ。

外に出る準備をし、軽い足取りで階段を降りると正面受付の男が昨日のように気だるそうに座っている。

「...起きたのか。明日も起きていなかったら医者か牧師を呼ぼうかと思っていたが。」

「え?なんでですか?」

「...お前さん、丸三日寝たまんまだったぞ。」

「は?!え?!まじですか?!三日?!」

「...ああ、だいぶ疲れてたんだうな。この部屋の奥に水浴び場がある。使いな。」

「ありがとうございます。」

「...礼なんていらねえよ。そもそも宿泊者は全員使えるサービスだ。使わなきゃお前が損だ。」

俺はその言葉に甘えて水浴び場を使うことにした。

タオルもサービスして貰った。

ありがたい。

優しいなおじさん。

一通り水浴びを終え、タオルを竿に掛け、服を着直し、やっと俺は外に出た。

「おお...!」

外に出て石造りの地面を踏み、改めて等身大で街を見ると二度目のはずなのに圧倒された。

疲れからか前は感受性が鈍っていたのだろう。東京の街とは違うまた異質の活気だ。

「安いぞ!安いぞ!」

「銀貨4枚!毎度!また来いよ!」

「ハハハッ!違いねえ!」

多くの人の話す声の合唱が耳の中を支配する。

「...ッ!と、とりあえず情報収集だ。あと生活用品も買わなくては...」

雰囲気に気圧されながらも歩き始める。

少し歩くと一際目立つ酒場を見つけた。

「ありきたりだな。」

そう一言呟き、俺は迷いない足取りでそこへ向かう。

実際こういう様々ものが混雑した場では世間話はしやすい。

常連客かのようにカウンター席に座った。

完璧だ。

「店主さん。水とおすすめの品をくれ。」

クールな注文だ。

「あいよ、銀貨二枚と銅貨一枚な。」

「うい。」

こういう所では舐められたら終わりだ。

少しでも初心者感を出せば輩はすぐ寄ってくる。

こなれた感じを出すのがコツだ。

...まあそれでも


「おいおいにいちゃん〜!ここ初めてかぁ〜?」


輩にこんな絡まれ方はするんだが...

マジかよ早速標的にされたわ。

だが、それでも俺は焦らない。

「ああ。そうなんだよ。田舎から出てきたばっかでさ、右も左も分からないんだ。ちょっとこの街のこと教えてくれないか?」

こういう時は素直に行くことだ。

ここでどんちゃん騒ぎして目をつけられる方が面倒だしな。

...まあそれでも


バシャア!


水をかけられるわけだが...

どうなってんだこれ突然治安悪すぎだろ。

「ああ、水がもったいない。」

「ハハハ!水なんてこの国には腐るほどあるんだよ!この街のこと知れたな!にいちゃん!」

「うん。ありがとな。」

怒りを抑えながら俺は返答をした。

しかし、輩はさらに調子に乗って顔を近づけ、俺にドスの効いた低い声で脅しをかける。

「お前あんま舐めた態度とんなよ...?ここはお前の住んでた田舎じゃねえんだ。大通りの路地裏で痩せたガキやジジババが物乞いしてるるだろ?お前も同じにしてやろうか?」

これが舐めた態度になるってなんだよ!

てかここまで発展するの早すぎるだろ!

「...ハァ。」

俺は小さくため息をつく。

ここまで調子に乗られたらこっちも強硬策に出るしかない。

頭を掴み、首に腕を巻き、軸となっている腕を押さえる。

そしてカウンターに置いてあるフォークを周りにバレないよう静かに首に近づける。

目の前の人間にのみ気付かれるのうな殺気を出して。

「...ッ!!!!!」

「...今から俺からも脅しかけるな。今すぐこの店を出ろ。そして二度と俺に話しかけるな。」

「あ、ああ。分かった。」

「俺のことは周りに公言するな。分かったな?」

「も、もちろんだ。」

「いいぞ。」

俺はそういうと輩を解放する。

こういう時は力の差を見せつけるのがいい。

相手が反応する前に終わらせるのがコツだ。


一騒動のあと店主が裏から出てきて、俺の注文の品を出してくれた。

「ありがとうな!」

バターが塗られたであろうこんがりパンに塩胡椒がかけられた少し赤みのかかる牛肉、見ただけで美味いと卵焼き、そしてレタスが少々。

「ああ、最高。この時点でうまい。食べなくてもわかる。ご馳走様。」

「何言ってんだ。食えよ。」

店主が少し笑って食べることを促されると、俺は酷い空腹の犬のように食らいつく。

「うめっうめっうめっ」

「なあ、にいちゃん。」

「ん?」

「ここ初めてだろ?」

「ああ、初めて。田舎から出てきたばっか。だからここのこと全く分からんのな。ちょっとばかし教えてくれん?」

「何から聞きたい?」

「じゃあまずは...」


一通り話を聞いた。

まずおおまかな国の体制。

この国は王国と名乗るものの、実際は宗教国だ。政治のトップは国王だが、名目上のトップは神様だとか。

王朝名はアリアトリス朝。

たしかサンジェルさんもアリアトリスと名乗っていたな...もしかしたら王族なのかも知れない。

次はこの都市のこと。

大体のことはサンジェルさんに聞いたが、まとめるとここはアリアトリス王国の首都シャンディラ。

50年戦争時、最大の決戦となった要塞都市らしい。

戦争中、そして戦争後、腐敗した前首都であるデロンを放棄し、ここに遷都したそうだ。

現在は世界でも有数の経済規模を持つ都市だそう。

そしてちょっとした世界情勢。

まあこの辺は複雑だからおいおい考えるとしよう。

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