1.少女からの申し出。
ここから第1章です(*'▽')ノ
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「えっと、ですね……アリシアさん。ひとまず貴方の持ってきた魔素結晶の換金額なのですが、ざっと計算した感じだとこの額になります」
「あ、これならしばらく生活に困りませんね!」
治癒魔法の意味があったのか分からないけど、受付嬢のミルさんは意識を取り戻した。そして明らかにふらつきながらも、何かの装置で魔素結晶を照合してくれる。
その結果、出てきた金額は宿をしばらく借りるのに十分な金額だった。
十分に満足できるそれに対し、アタシが目を輝かせていると――。
「えー、それでですね。こちらの守護竜の鱗なのですが、どうしましょう?」
「どうしましょう、ってなにがですか?」
次にミルさんは、そのように訊いてきた。
こちらが首を傾げて訊き返すと、彼女は「あー」と遠くを見るような表情を浮かべる。そしてどこか諦めたような感じに、こう説明してくれた。
「基本は鑑定した上で換金、なのですが。正直なところ見込み額の時点で、ギルドが支払える限度額を超えているかと思います」
「なるほど……?」
「――ですので、今回はお引き取りいただいて。この鱗を加工するなりして、今後に役立てた方が良いと思うのですが、いかがでしょう?」
「……ふーむ」
つまりギルドで扱うには手に余るので、自分で処理してくださいってことね。
アタシはそれを把握した上で、どうするべきかを考えた。ドラゴンの鱗であるなら、今後のために防具への転用を試しても良い。紫電の剣で消滅しなかったのだから、たぶんそれなりの耐久性を誇ると思った。ただそうなると、依頼先だけど――。
「もしもし、そちらのお姉さん?」
「え……アタシのこと?」
「そそ」
悩んでいると、後ろから声をかけてくる人があった。
振り返るとそこにいたのは、アタシよりもいくらか年下の獣人少女。ぴょこんと生えたオオカミの耳に、栗色をした癖のある髪。円らな黒の瞳には曇り一つない。
背丈はアタシの胸ほどまでで、かなりの小柄だった。
だけど思いの外、成熟した身体つきをしているようにも見える。そんな身体を薄い装備で守り、背にはなにに使うか分からない道具箱を担いでいた。
「わたし、ナターシャ! 裁縫師をやってるんだけど、話しない?」
そして、そう名乗りながら微笑む。
アタシはついミルさんと顔を見合わせたが、
「え、えぇ……うん。とりあえず、話をするくらいなら」
問題ないだろうと考えて、少女――ナターシャの話を聞くことにした。
◆
「改めて自己紹介するね! わたしはナターシャ・オルクル、裁縫師として色々な防具を作ったり、直したりするのが仕事だよ!」
「アタシは、アリシア。一応、新人冒険者……かな?」
「新人っていうには、最初から飛ばしてるけどね」
「…………飛ばす?」
ギルドの広場にある椅子に腰かけて。
アタシとナターシャは、改めて互いの素性を明かした。こちらが自己紹介すると、何やら妙に遠い目をされてしまったけど、いったいどうしたのだろう。
こちらが首を傾げていると、少女は苦笑しながら話を戻した。
「まぁ、それは置いておくとして! お願いがあるの!」
「お願い……?」
訊き返すと、ナターシャは頷く。
「アリシアさんが手に入れたそれって、守護竜の鱗、だよね?」
「うん、そうだけど……」
「お願い! わたしに、それで防具を作成させて!!」
そして、両手を合わせてそう頭を下げるのだった。
アタシはどういうことか分からず、思わず返答に窮してしまう。すると彼女は立て続けに、このように言うのだった。
「それで最高の防具を作って、見返したい人がいるの!!」――と。
真剣な表情で、真っすぐにこちらを見ながら。
そんなナターシャの姿に、アタシは少しだけ考えてから、
「分かった。それなら、お願いできる?」
「やった!」
ものは試し、というものだろうと考えて。
何やら気になることはあったけど、申し出を受けることにしたのだった。
ひとまず平日は13時、20時頃に更新です。
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