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プロローグ 粗暴な公爵令嬢は勘当され、そして――。

新作です(*'▽')女性主人公ハイファン、挑戦します。






「えー、本日で諸君らは我らが王都立魔法学園を卒業し――」



 壇上では学長が長い原稿を読んでいる。

 アタシはそれを眺めつつ、この魔法学園で学んだことを思い返した。ありがたいことに主席の座を賜り、魔法学や剣術、さらには錬金術に治癒術など、すべてに努力が実を結んだ。それでも卒業後は公爵家の令嬢として、第一王子のミカエル様と婚姻の儀を執り行うことが決まっている。

 この身につけた力を活かす場所が限られるのは、少しだけ残念な気もした。

 それでも家の取り決めなら、仕方ない。



「それでは、卒業生代表――アリシア・アルカディア、壇上へ」

「……はい!」



 そう考えて、アタシは気を引き締めつつ返事をして立ち上がった。

 卒業式はそうやって終わりを迎え――。




「……え? お父様、それはどういうことですか?」

「二度も言わせるな。お前は今日付けで、このアルカディア公爵家から勘当だ」



 ――帰宅して父に報告すると同時、そう告げられた。

 いったい、なんの冗談だろう。アタシはそう思っていたのだが、お父様は至って真剣な様子だった。つまり勘当処分は嘘偽りや、驚かすことを目的としたものではない。

 お父様は本当に、アタシを捨てるといったのだった。



「お父様、理由を聞かせてください……!」



 さすがに、動揺を隠せない。

 アタシの震える声による訴えに対し、父は静かにこう告げた。



「お前のような粗暴で暴力的な娘など、恥ずかしくて王家に嫁がせられない」

「そ、そんな……!?」



 その言葉に、こちらはもう唖然とするしかない。

 こんな曖昧な理由によって、居場所を奪われていいのだろうか。そう訴えたかったが、しかし意義を挟む余地すらなく、お父様は続けるのだった。



「本日中に最低限の荷物をまとめ、明日の明朝に家を出ろ。……分かったな」



 彼はそう言い残すと、こちらに背を向けて立ち去る。

 アタシは声もなく手を伸ばすしかできず、ただその場に立ち尽くした。







「うーん、これからどうすれば……?」



 必要最低限の荷物をまとめ、翌朝になるのを待ってアタシは家を出た。

 その際に親しかった給仕の子たちから、せめてもの路銀といってお金ももらったけど。この金額だといくら節約しても、一週間もすれば路頭に迷ってしまう。要するに、なにか仕事をして稼ぐことが必須になるのだけど、いかんせんアタシは元貴族。

 街の人の中には、貴族という人種を毛嫌いする方もいる、と聞いたことがあった。

 それならもっと身分が無関係で、アタシの経験を活かせる場所が良い。



「あ! それだったら、格好の場所があるじゃない!」



 そこまで考えて、アタシは閃いた。

 あの場所であればきっと、実力さえあれば相応の扱いを受けられるはず。そう思って、アタシはスキップしながら『その場所』へと向かうのだった。



「さぁ、到着したわ! ここが『冒険者ギルド』ね!」



 自由と実力主義を掲げる場所。

 すなわち冒険者たちが集まるここなら、アタシにも居場所があるはずだった。足を踏み入れると、どこか外とは違う独特の匂いが鼻につく。それでも我慢できないものではないし、そのうちに慣れるだろうと思えた。

 そんなわけで、アタシは受付の女性に声をかけて――。



「あのー、冒険者になりたいんですけど。魔法学園主席、って実績になります?」

「……は、はい!? 魔法学園主席!?」



 そう訊ねると、思い切り目を丸くされてしまった。

 周囲の人々も何事かと、こちらに向かって視線を投げてくる。若干の居心地の悪さを覚えて頬を掻いていると、受付嬢の方は少し考えてからこう言った。



「えっと……証明できるもの、ありますか?」

「あ、これとかどうですか? 主席卒業のバッジです!」

「……おっふ」



 特に迷わずアタシが授与されたバッジを示すと、彼女は明らかに引きつった笑みを浮かべる。そして冷や汗をダラダラと流しながら、




「ちょ、ちょっとお預かりしますね!? 本物か確認してきます!!」




 そう言い残して、受付の奥へと下がって行ってしまったのだった。



 






 ――その様子を眺める人々の中。

 目深にフードを被ったとある人物が、何かを考えるようにアリシアを観察していた。そして一言、このように口にするのだった。



「魔法学園を主席卒業、か。……興味深いな」




 粗暴だとして、公爵家を勘当された令嬢アリシア。

 彼女はさっそくその無自覚さで、周囲に波乱を起こそうとしていた。



 


本日は3話投稿。

20時、22時予定です。


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