表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/39

変な家

 翌日になって、放課後に彩花の家へ行く段となった。彩花の家で起きているポルターガイストの現場検証に行くためだ。


 別に沈んでろとまでは言わないけど、あれだけ怪奇現象を怖がっていた彩花が三橋と帰る時になって明らかにウキウキしているのは何か納得がいかない。髪型までツインテールでバッチリ決めてるし、なんだか、そのためにポルターガイストをでっちあげたの? って訊きたくなる。


 だけど、当初の怖がり方からして、彩花の話は本当なんだと思う。わたし自身が日頃から幽霊が見えているわけで、彩花の家に何かがいる可能性は高い。


 はたして仮に幽霊だった場合に、素直に説得へ応じる幽霊なんだろうか。というか、呪怨みたいなやつが出てきたらどうしよう。そうなったらわたしにはどうしようもない。伽椰子(かやこ)さんに話し合いが通じるとは思えないし。そう考えたらわたしが怖くなってきた。


「大丈夫だよ。すべての物事には、何かの理由があるんだから」


 わたしの心理を見透かしたかのように三橋が言う。励ましてくれてはいるんだろうけど、なんだか怖がるべきじゃないものに怖がっていると言われているみたいで嫌だ。


 それはそれとして、わたし達はすぐ彩花の家に着いた。わたしらの家とは違って、彩花の家は学校から近くて羨ましいなって思う。


「おじゃまします」


 一応挨拶を口にしながら家へと入ると「今は親がいないからさ」と彩花がどこか嬉しそうに言う。まあ、居たら居たで気は遣うんだけど。


 彩花に案内されて、子供部屋のある二階を目指す。結構急な廻り階段を踏むと地味にギシギシと音が鳴る。三橋を先に行かせたけど、きっと自分が先に行けばパンツが見えちゃうからだろうなと思いながら彩花の後ろを付いて行った。


 彩花の部屋に着くと、女子力が高いというか、ぬいぐるみやら花が置いてあって、なんか狙ってる感がなくもない気がするけど黙っている。指摘すればわたしの方が嫌な女にされちゃうだろうから。


「この部屋でポルターガイストが?」

「うん。そこまで頻繁じゃないけど、時々物が動いたりするの。そういうのが無ければ安心して暮らせるんだけど」


 急に彩花の口調が真面目になったので、まあ本当のことを言ってるんだろうとは思う。たしかに寝ようとしているところで鉢植えとかが動いたら嫌だよね。


 とはいえ、そんな急に心霊現象が起こってくれるはずもないので、しばらくこの部屋で過ごしながら何かが起こるのを待つことにした。


「じゃあ僕はここで」


 そう言って三橋が部屋の隅っこの壁ぎわあたりに腰を下ろす。おそらくここから部屋全体が見えるせいだろう。ヒマつぶしのためか、持ってきた文庫本をそこで読みはじめる。


「ねえ、三橋君のそばに行っていい?」


 そう訊くと、彩花は返事を待たずに三橋の隣に座った。なんだか猫みたいな動きだった。体をぴったりと密着させていて、なんだか気に入らない。


「ちょっと、離れなさいよ」


 わたしの言葉を無視して、彩花は「にゃあ」とばかりに三橋へ体をくっつけている。やっぱりこの女、はじめからこれが目当てで……。


 そう思った瞬間、なんだか血の気が引いたようにヒヤっとする空気が流れる。三橋もそれを知覚したみたいで、部屋のあちこちに視線をさまよわせる。


「何かあったの?」


 さすがに尋常でない何かを感じ取ったのか、彩花が不安げに訊く。三橋は答えずに警戒した目で左右を眺めていた。


 ――うん、この部屋に何かいるね。


 そう思った瞬間、机の上にあるコーヒーカップが動いた。


「来た」


 彩花の言っていたポルターガイストが起こっている。どうやらわたし達は、本当の怪奇現象に出会っているらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ