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真実の後

『まだ続きを見ますか?』

気が付けばレイスはチクニの目の前に立っていた。

夢を見ているような気分で今までレイスの知らない光景を見せられていた。

それはクリスが殺された直後の森での出来事だった。

今のだけで大体のことがわかる。

「ルミナというメイドは嵌められたようだな」

「ファルナという女性が、スパイとして屋敷に潜り込んでいたようですね」

隣に立っていたソフィアも同じものを見せられていたようだ。

「毒はファルナが用意したのだろう。ただ、飲ませてしまったのはルミナだ。そして、森に逃げるように言われてその指示に従ってしまった」

逃げたことでルミナがスパイだと思われてしまった。そして、それを追いかけたファルナは口封じのため森の中でルミナを始末した。

呆気ないほどの終わりだったが、そこへ騎士がやってきてルミナを発見した。

「彼女が殺されていることを確認したのに、彼も瀕死の状態で森から出てきて報告ができなかったのか」

騎士の顔をレイスは知っていた。

アルノ=セルベイという名前だったはずだ。クリスよりも少し年上だったはずだ。

アルノはルミナが誰に殺されたのかわからないまま森の中の探索を再開したのだろう。そして、ファルナとどこかで会った。

「あの騎士もファルナと会ったのでしょうね。でもスパイだと思わず油断しているときにファルナから攻撃を受けた」

ソフィアも同じことを考えていたようだった。

「彼は、アルノは騎士としての腕はよかったはずだ。だが、完全にファルナを味方だと思ったのだろう。そのせいで致命的な攻撃を受けた」

グリーストの使用人に敵がいるはずがないという先入観があったのだろう。クリスが殺されたことで敵の侵入を疑わなければいけなかったが、メイドの格好をしていたこともあって油断したと思われた。

「ファルナの方はどうしたのでしょう」

アルノが攻撃を受けたことはわかるが、ファルナはその後どうなったのか気になるところだった。ただ、敵側にクリスが死んだことが伝わっていなかった。森から出ていないことはわかる。

「アルノが瀕死になりながらもファルナを仕留めたか」

『あの女は生きていました』

レイスの考えにチクニが遠くを見ながら言ってきた。

『話を聞き、行動を見ている限りグリーストの人間ではないことは明らか。契約が切れているため契約者からの指示はありません。命令であの女をどうこうすることはできませんでした。ですが、勝手に侵入してきて騒ぎを起こした人間を森から出すはずがありません』

クリスとの契約が切れたチクニはグリーストの人間の命令を聞くことはなくなった。そして、クリスを殺したと思われるメイドに復讐するつもりもないようだった。

ただ、森の中でメイドを殺し、騎士を瀕死の状態にして騒いだことに対する罰として森の中に閉じ込めてしまった。レイスにはそんな風に聞こえた。

言い方は単調ではあったが、チクニの心までそうとは限らない。

契約者を殺されたことに対する怒りがあったのではないだろうか。

そう思うが、チクニの表情からは感情を読み取ることができなかった。

大体のことはわかったことだし、レイスは続きを見る必要がないと判断した。

「ルミナは、今も森のどこかにいるのか」

騎士のアルノは森から出られたが、ルミナは連れだしていなかった。先ほど見た森の場所に今も野ざらしでいるのではないか。チクニが弔ってくれるはずもない。

「できれば彼女を返してもらえないだろうか」

チクニに向かって言ったあとにソフィアを見た。契約者であるソフィアから言ってもらえればルミナを返してもらえるかもしれないと思ったのだ。

ルミナは嵌められた被害者だ。

ソフィアが静かにチクニを見る。するとチクニが一つ頷いた。

それと同時に森の中が変化した。

周りは木々に囲まれた場所で移動したのだとわかる。ついさっきまで開けた場所に立っていたのに、急に木が迫ってきたかのように狭くなった。そして、レイスの目の前に白い何かが横たわっていることに気が付いた。

それは明らかに人の骨だった。横たわったまま死んでしまったのがわかるくらいきれいに残っている。

先ほど見せてもらった内容から、それがルミナだと判断できた。ぼろぼろになっているがメイドの服もそのままだ

「全部回収するには布が必要だな」

急に森に行くことになり骨の回収など想像していなかったため何も用意をしていなかった。

「あとでもう一度回収するために来られるようにしておきましょう」

ソフィアに言われ、チクニも後でもう一度ここに案内してくれることになった。

「ルミナの骨はどうするつもりですか?」

軽く一礼してからその場を離れようとしたレイスにソフィアが質問してくる。

「家族に返せるのならと思うが、そうでないならアルノの側に埋葬しようと思う」

彼女の家族のことを調べなければいけないが、もしも家族がいなければ恋人だと思われるアルノの側に埋葬するのがいいだろう。見せられた光景だけでは恋人だと確定できないが、調べれば使用人の中で何か知っている者がいるだろう。

「そうですね。それがいいと思います」

ソフィアが同意してから、そっと手を挙げると景色が急に変わる。森の中ではあったが少し歩けば広い場所に出られるのがわかる。

よく見ると木々の間から屋敷が見えた。屋敷まで戻されたようだ。

チクニの姿はどこにもなかった。会話はなくてもソフィアの考えを読み取って場所を移動してくれている。これが精霊と契約者なのかと改めて思わされる瞬間でもあった。

「これから忙しくなりそうですね」

「そうだな。あの時のことがわかったからには忙しくなるだろう」

逃げたメイドは嵌められただけだった。スパイも判明したことを騎士団長に伝えなければいけない。

結局スパイであったファルナが森の中でどんな最期を迎えたのかレイスは聞くことがなかった。チクニも話すことはなく興味さえなかったことだろう。

それよりも森の中においてきたルミナのことが優先され、レイスはソフィアと一緒に屋敷に戻るのだった。


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