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戦闘

「敵の数は50程度だ。森に入った瞬間、森から出ることになる。すぐ近くに敵がいるから、みなそのつもりで足を踏み入れるように」

レイスの説明に、騎士たちは覚悟を決めたような表情をする者と、いまいち理解できないで複雑な表情をしている者がいた。

当然である。

チクニの力を借りて瞬間移動をした上に、目の前に敵がいる状況になるのだ。想像ができる者たちはレイスの説明をすんなり聞き入れられたが、そうでない者は半信半疑なのだろう。

それに、チクニはどれだけの人数を移動させられるのか聞いていなかった。

ここにいるのは敵兵よりも少ない15名。ほかにも騎士はいるのだが、すでに騎士団長が警備を増やすため街に行かせてしまった者たちがいる。

ここに集められているのは屋敷を警備し、森を警戒するために残った騎士たちだった。火事の状況や敵の動き次第では屋敷を捨てることも考えて少人数にしてしまった。

チクニの力を借りられることになるとは思っていなかったし、ソフィアが火を消してくれることになるとは、騒ぎが起こったときには誰も考えていなかった。

もう少し人数がいれば数で圧倒することも可能だったのだろう。それができないとはいえ、戦闘で負けるつもりもなかった。

「チクニは移動だけの助けしかできない。敵との戦闘は我々だけで行うことになる」

チクニが戦闘の手助けになると勘違いしている者がいないように、レイスは念のため伝えておいた。

すると騎士たちが引き締まった表情に変わる。

半信半疑だった騎士たちもレイスの言葉に移動するということが理解できなくても敵と戦うことは理解できていた。

「行くぞ」

それを合図に森の中へと足を踏み入れた。

すると目の前が木々で鬱蒼としているはずの森だったのに、数歩進んだ時には視界が開けて、森の外に出たことがわかった。本当に一瞬の出来事で、説明をしていたレイスでさえ一瞬過ぎて拍子抜けしてしまいそうだった。

だが、近くにレイスたちとは違う気配を感じて、一瞬にして気が引き締まった。

「近いぞ」

隣に立っているエクスが騎士たちに言うと、移動にざわつき始めていた騎士たちが一斉に静かになった。

すぐに臨戦態勢に切り替われるのは日ごろの訓練のおかげだろう。

「すでに国境を越えているな。超えていなくても、先に攻撃してきたのはあちらだから、我々は反撃になる。仕掛けたところで問題ない」

歩いて移動しているようで地面から伝わる馬が移動する振動は伝わってこなかった。ばれないために明かりも使わずに団体で移動しているようだが、その気配ははっきりと捉えることができていた。

グリーストの騎士がすぐ近くにいるなんて、敵は思いもしていないのだろう。

正確な位置までは暗くてわからないが、これだけ気配を漏らしてくれていれば奇襲をかけるのに問題なかった。

「夜明けまでに終わらせるぞ」

それを合図にレイスが駆け出すと、グリーストの騎士たちが一斉に動き出した。

今までの訓練の成果が試される時でもある。

だが、レイスの予想に反して、油断していた敵国の兵は夜明けを待たずに壊滅させることを、この時は反撃を介したレイスたちもまだ知ることがなかった。


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