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義母との対面

辺境伯の屋敷から街までは一本道を馬車で移動し、ソフィアはレイスの母親がいる街へとやってきた。

「このまままっすぐ別邸に向かうのよね」

「はい。時間などすべて知らせてありますので、寄り道している時間はありません」

初めての街に観光してみたい気持ちがないわけではない。だが、今回の目的は義母に会うことなので、ソフィアはおとなしく窓から街の風景を眺めるだけとなった。

別邸に向かうのはソフィアと専属メイドのリノアだけだった。

結局ソフィアは義理の母親に会うということになったが、それに見合った服を用意することはできず、辺境伯へ来たときに来ていた服で行くことになった。

リノアはそんなソフィアの服装を見ても、特に何も言ってこなかった。もともとクローゼットに服がほとんどないことを彼女は知っているので、何を言っても意味がないとわかっているのだろう。

レイスも森にすぐ行くのではなくソフィアの見送りをしてくれたが、服の指摘をすることなく送り出してくれた。

「もうすぐ到着します」

窓から街の様子を見ていたソフィアは、街に入ってすぐにリノアが到着することを告げてきて驚いた。

もう少し街を見てからだと思っていたので、眺めるだけの観光はこれで終わりとなった。

「早いわね」

「別邸は街の中でも森に近い場所にあります。できるだけ距離を短くして移動しやすいようにと考えられているためです」

緊急時に動きやすいようにということのようだった。

「帰りであれば街の中を見て帰ることはできます」

「そうね。あまり遅くならなければ、少し見ていきましょうか」

そうすれば馬車の中から見るだけでなく、散策も可能になるだろう。

それを楽しみにソフィアは別邸にいるレイスの母親へと意識を向けるのだった。

ほどなくして馬車が速度を落とし始め、大きな屋敷の前で止まった。すべての建物を一つにしている森の屋敷と比べると小さく見えてしまうが、貴族の屋敷としては十分に大きく、敷地も広いことがわかった。

門番がいて、ソフィアが来たことを告げるとすぐに中に入ることができた。

少し緊張していると、馬車が屋敷の前で止まり、扉が外から開かれた。

先にリノアが降りていき、そのあとにソフィアが馬車から顔を出すとそっと手を差し伸べてくる男性がいた。

レイスとあまり変わりないか少し上の年齢に見える男性は静かに手を差し出していて、その手を借りてソフィアは馬車から降りた。

「ありがとう」

礼を言うと男性は静かに目礼をしただけだった。

「よく来てくれました」

屋敷の玄関に一人の女性が微笑みながら立っていた。

茶色の髪に緑色の瞳。目の雰囲気と瞳の色がレイスによく似ていて、彼女がレイスの母親であるイリアナ=グリーストだ。

「初めまして、レイス=グリースト様に嫁いだソフィアです」

エリッドとは名乗らなかった。すでにソフィアは結婚した身だったことと、エリッド伯爵家は叔父が引き継いでいるからだ。

「レイスの母のイリアナ=グリーストよ。会えて嬉しいわ。それに、聞いていたとおりね」

挨拶を済ませると、イリアナはソフィアを頭からつま先までじっかり視線を動かして観察してから言った。

不躾な視線ではあったが、ソフィア自身を品定めしているのではなく、服装を見られているのだと思ったからだ。義母に会うには明らかにふさわしくない服装をしている自覚はあった。

おそらくレイスが別邸に連絡を入れてソフィアのことを伝えていたのだろう。学生時代に来ていた服をいまだに着ていて、ドレスを持ち合わせていない。そんな令嬢が嫁いできたと報告でも受けたのかもしれない。

レイスの前では隠すことなく堂々とドレスを持っていないことを伝えたが、すでに事情を知っているこれから義母として慕っていく相手には堂々と言うには気が引けた。それよりも、何を言われてもいいように覚悟をするほうが先だと思えた。

「このような格好で申し訳ありません」

「事情は聞いています。今日は気にせずに屋敷に入りなさい」

「ありがとうございます」

ドレスを持っていないことは事実で、言い訳もできない。そんなソフィアをイリアナは許してくれた。

「彼女を部屋に案内してあげて」

「わかりました」

先ほど手を貸してくれた男性が案内してくれることになり、彼の後をついて屋敷の中へと入る。

一緒に来ていたリノアはイリアナに呼び止められて、玄関ホールで何かを話していた。

ソフィアは案内されるままに奥へと入っていく。

屋敷の構造は森の邸宅とあまり変わらないようになっていた。

大きな違いは窓の外に目を向けると広い庭や建物が見える。敷地を囲う塀で境界が区切られている光景は、久しぶりに見た気分になった。

数日森の中で生活しただけでも、懐かしさを感じてしまう。

『ここは王都と同じだね』

『森の気配がないから、広く感じる』

森の精霊の領域で、その一角を人間が住めるように許可された屋敷では、レラとワッカが窮屈に感じていたようだ。勝手に森の中にも入れないため、屋敷内を飛ぶくらいしかできなかったが、ここでは気にすることなく屋敷の敷地を飛び出していくこともできる。

「散策してきてもいいわよ」

『今はやめとく』

『ソフィアに何があるかわからないもんね』

小声で許可すると、精霊たちはソフィアの頭にくっつくようにしがみついた。来たことのない場所に、知らない人たちばかりのためソフィアの心配をしてくれたようだ。

戦闘が起こるわけでもないし、義母と話をするだけなのだから心配するようなことは何もない。それでも、何もわからない場所に来ていることには違いがないので、精霊たちが寄り添ってくれることは嬉しかった。

「こちらでお待ちください」

男性が部屋に入ってソファを勧めてきた。

ソフィアが座ると男性が胸に手を当てて軽くお辞儀をしてきた。

「申し遅れました。私はこの屋敷の管理を任されているシゼル=ジーニーです。父が森のお屋敷で執事長を務めております」

「エリオットの息子さんだったのね」

茶色の髪に緑の瞳はエリオットと同じだ。特に目元がよく似ている。

「息子がいるという話は聞いていなかったわ」

息子が別邸で執事をしているとは出かける間際にも言われなかった。

驚かせるつもりだったのか、言う必要がないと判断したのかはエリオット本人でないとわからない。

「今後、こちらに来ることもあると思います。よろしくお願いいたします」

丁寧は言い方に、彼はソフィアを受け入れてくれるようだと判断できた。

「お飲み物を用意します」

そう言って、シゼルが部屋を出ようとしたところで、イリアナがリノアと一緒に入ってきた。

「挨拶は終わったかしら?」

「はい。これからお茶の用意をするところです」

「それは後でいいわ。それよりもやらなければいけないことがあるでしょう。そちらの準備をしてちょうだい」

「わかりました」

シゼルはそのまま部屋を出ていった。

やることがあるということにソフィアは首をかしげていると、イリアナが向かいのソファに座った。

じっとソフィアを見つめてくる。その反応に何かこちらから話をしなければいけないと思いソフィアが口を開こうとしたところで、イリアナがどこか憂いを含んだ視線に変わったのがわかった。

「ご両親とはあまり上手くいっていなかったのかしら?」

「え?」

「急に嫁ぐことになったとはいえ、何も準備がされないまま送り出すなんて、どこの貴族であっても聞いたことがないわ」

「えっと・・・」

イリアナが何を言いたいのかよくわからなかった。

両親は半年前に馬車の事故で亡くなり、今回の結婚を知ることはできないし、何かを準備してくれることもなかった。叔父も当然のようにソフィアを追い出すように送り出した。

明らかに何かを勘違いしていることは察することができたが、何から話せばいいのか考えてしまった。

「あの、イリアナ様」

「すでに結婚したのですから、あなたは私にとって義理の娘です。他人行儀な呼び方をしてはいけません」

まだ義理の母親として認められているのか不安だったソフィアはイリアナを名前で呼んだのだが、それが気に入らなかったようだった。

「はい、お義母様」

言い直すとイリアナが明らかに嬉しそうな笑顔を見せた。

いろいろ誤解があるようだが、彼女はソフィアを受け入れてくれていることだけはわかってホッとしてしまった。

「私の両親ですが、半年前に馬車の事故で亡くなっています」

両親と仲が悪いと思われているところから説明することにした。

両親がすでにいないことを知らなかったイリアナは、驚愕の表情を浮かべたが、すぐに冷静になったのか表情が元に戻る。

「そうだったのね。ごめんなさい。急な結婚だったこともあって、あなたのことを事前に調べる時間がなかったの。さっきは勝手なことを言ってごめんなさい」

「大丈夫です。半年経ちましたし、私の中では整理がついています」

突然の両親との別れに、当時は衝撃を受けて何もできなかった。

周りが助けてくれたことで葬儀などは順調に執り行われ、ソフィアはただ両親がいなくなった喪失感と悲しみに耐えながら涙を零していればよかった。それも時間と共に落ち着いて、今では両親のことを思い出しても悲しいというより懐かしいという気持ちのほうが少しずつ大きくなってきていた。

「それでもまだ半年よ。辛いと思うこともあるでしょう。私も半年前に息子を亡くしましたから」

息子であるレイスは次男だ。彼女が言っているのは長男で、レイスの前に辺境伯をしていたクリス=グリーストのことを言っていた。

詳しいことをソフィアは聞いていなかったが、半年前に亡くなったことで王太子の護衛騎士をしていたレイスが爵位を継ぐことになったのだ。

「夫はすでに他界しているし、私の家族はレイスだけになってしまったわ。家族を亡くした悲しみはわかるつもりよ」

ソフィアは親を。イリアナは子供を失った。立場は違えど家族を失ったという悲しみは共有できた。

「エリッド伯爵家は今は?」

「父方の叔父が引き継いでいます。王都の屋敷には叔父と従妹のセレスが住んでいますので、私が結婚しても、問題はありません」

『あいつらはソフィアを追い出したんだ』

『あたしの水で屋敷を水浸しにしてから来ればよかったわ』

精霊たちが爵位を継いだ時の叔父家族のことを思い出したのか、ソフィアの頭の上で頬を膨らませて怒っていた。

声はソフィアにしか聞こえないので返事をするわけにはいかない。黙って聞き流すことにする。

「叔父が爵位を継いだとしても、姪であるソフィアさんの結婚に、何も準備をしてくれなかったの?」

「えっと、それは」

両親がいないことでソフィアの結婚の準備は叔父がするべきだとイリアナは考えが至っていた。それについてどう説明すべきか迷ってしまう。正直に追い出されたというべきか、うまくごまかしてみようかと考えたが、ソフィアの現状を見る限り、ごまかしが効くような状態ではないことにも気が付いてしまった。

「叔父とはあまり仲が良くなくて・・・」

できるだけ包み込むような言い方がソフィアが出した答えだった。

あまり仲が良くないという言い方でも、結婚のための準備を何もしてくれなかったという事実は残ってしまう。

「・・・そう」

イリアナは短くそれだけ言った。その言葉にどれだけの感情が含まれていたのか、ソフィアには知ることができなかった。

「それにしても、ソフィアさんの状況はレイスもわかっているはずなのに、あの子は何かしてくれたかしら?」

話がエリッド伯爵家からレイスへと変わった。

「特には」

ソフィアの服装を彼も見ているし、ドレスがないことも把握している。だが、彼は朝食を共にする時間はあっても、すぐに森へ行き夕方まで戻ってこない。

夕食で顔を合わせても、そのあと違う部屋で就寝するというのがソフィアが森の屋敷にやってきてからの日常となっていた。

「まさか、何もしようとしていないの?」

「いろいろと忙しいようですし、私もお屋敷から出る機会がありませんから」

街にも今回初めて来た。ドレスを見繕うにも街に来なければ何もできない。

ここまで来たのだからイリアナに行きつけのドレスショップがあれば聞いておこうと思った。大きな街なので何軒かありそうだ。

そんなことを考えていると、イリアナが手を額に当てて天井を見上げ始めた。

「ここまで女性に疎いなんて、育て方を間違えたかしら。夫はそんな人ではなかったし、クリスも結婚はしていなかったけれど、女性に対しての対応はできていると思っていたから、レイスも大丈夫だと思い込んでしまったわ」

突然の嘆きにソフィアは数回瞬きをした。何が起きたのかよくわからなかった。

「突然の結婚とはいえ、王都で過ごしてきたのだから女性への対応の仕方くらい身についていると思ったのに」

「あの、お義母様」

「なんて嘆かわしいことなの」

ソフィアの声は届いていないようだった。

イリアナはしばらく天井を仰いでいたが、やがてソフィアに顔を向けると手をどけたその表情は何かを覚悟しているように見えた。

「やはり、私が動いて正解だったわ」

何を言っているのかわからなかった。とりあえず落ち着こうと心の中で思った瞬間、イリアナが部屋の隅に控えているメイドに声をかけた。

「あれを用意してちょうだい」

「かしこまりました」

メイドは3人いたが、2人がすぐに部屋を出て行った。残ったのはリノアだったが、彼女は静かにその場に立ったままだった。

「ソフィアさん、服に困っていたでしょう。レイスが動いてくれればよかったのだけど、あの子はそれどころではない状況にいるの。だから、私のほうであなたのドレスを準備することにしたわ」

「ドレスですか」

辺境伯夫人となったソフィアだが、ドレスを持って嫁いでくることができなかった。学生時代の服を着るしかなく、新しいものを買うにもお金がない。あの屋敷で生活している分には他の貴族と会うこともなさそうだし、しばらくは今のままでも大丈夫だと思っていた。

必要になればレイスに頼んでドレスを準備すればいいと楽観視していたのだが、イリアナはソフィアの状況を知って、いてもたってもいられなくなっていた。

ドレスもお金もない妻を放っておいて森に行っている事情も分かっているが、それでも妻に対して失礼だと考え、義母になる自分が動くことにしたのだ。

そのため今日ここへ呼び出したのだが、そんな事情をソフィアが知ることはなかった。

再び部屋の扉が開くと、ぞろぞろと人が入ってきて、みなそれぞれにいろいろな荷物を抱えてきた。

明らかにここの使用人ではない服装に、ソフィアは大量に運ばれてくるドレスや生地、靴に装飾品を目の前にして呆気にとられるしかなかった。

伯爵家にいた時でさえこれほどの量を見たことがなかった。まるで屋敷に店が丸ごと来たような感覚だ。

「初めまして奥様。この町でドレスショップを経営しております。『絹の羽』の店主ティーシャと申します。以後お見知りおきを」

「グリースト家は代々この絹の羽でドレスを仕立てもらっているのよ」

ティーシャのあいさつに軽くうなずくと、イリアナは次々と運ばれてくる品物に驚くこともなく当たり前のように話を進めていく。

「ソフィアさんのドレスを何着か作りたいの。今は夏と秋の物をお願い。冬の物は後日お願いするわ」

「かしこまりました。まずは採寸をしたいと思いますので、奥様はこちらにどうぞ」

衝立が用意され、その中に入るように言われる。ティーシャとソフィアだけが隠れてしまうと、あとは職人技とでもいうべきか、邪魔になる服を脱がされ、あっという間に採寸が済まされてしまった。

この状況に頭がついていかないうちに、どんどん進んでいく。

精霊たちはきれいなドレスや宝飾品に興味がわいたようで、ソフィアに危害がないとわかると、部屋のあちこちを飛び回っていた。

「では、ドレスの試着をしましょう。気になる物があれば言ってください」

とは言われたが、あまりにも数が多くてソフィアはどれを着たらいいのかわからない。

『ソフィアにはこれが似合うと思う』

レラが黄色の華やかなドレスを示して嬉しそうに飛び回っている。

『ぼくはこっちのほうが似合うと思うよ』

ワッカが青いシンプルな物を選んでいた。

『宝石で豪華にすればいいんだよ』

という主張も加えてくる。

ソフィアでは決められそうにないので精霊たちが選んだものを選ぼうとしたとき、ソファに座っていたイリアナが別のドレスを指さした。

「ソフィアさんにはシンプルな物より華やかなドレスのほうが似合いそうね」

年齢にしては幼さが見え隠れする顔立ちをしていることは自覚していた。シンプルで落ち着いた大人びたドレスよりも、華やかで見栄えのするドレスのほうがいいと考えたようだった。

「普段使うドレスは胸元を強調させない物にして、パーティー用は肩まで開いた物にするのもいいかもしれないわね。肌がきれいなんだから、見せるのもいいと思うわ」

そんなドレスは着たことがなかった。学生時代はまだ成人していないこともあり肌を見せるようなドレスは一般的に着ることがなかった。肌を見せるようなドレスを着るのは基本的に成人してから結婚するまで。

結婚後もそんなドレスを選んでいると男を誘惑しているのかと周囲から冷たい視線を浴びせられるのが一般的だった。

だが、イリアナは肌を隠す部分が少なくなるドレスを選んでいた。

「成人したばかりで結婚してしまったから、こんなドレスは着たことがないでしょう。パーティーといっても辺境伯では行われる機会が少ないのと、ほとんど身内になってしまうから、これくらいのことをいちいち注意する人間はいないのよ」

ソフィアの心配を言葉にしていなかったのだが、イリアナはすぐに察してくれたようで説明してくれた。

確かに肌を見せるようなドレスを着た経験はなかったが、着られないということを気にしたこともなかった。

「奥様の体型でしたら、こちらのドレスなどいかがですか?」

それは大きく胸を強調してしまうドレスだった。こんなのを着て大丈夫なのかと気が引けてしまう。

「気になるようでしたら、羽織る物を用意いたしましょう。それだけで視線を分散させることができます」

ドレス自体を変えることなくレースなどでふんわり隠してしまえば視線が胸にはいかないということらしい。そのまま着てしまうと男女問わずソフィアは違う意味の注目を浴びてしまいそうだった。

「普段着るものも選びましょう。今は数着だけ既製品で代用するけれど、残りはソフィアさんに合わせたドレスを作りましょう。できるだけ早く完成させてちょうだい」

「かしこまりました」

ドレスの話はいったん終わり、普段着るためのドレス選びへと変わった。

落ち着いた雰囲気の服が用意され、その中でソフィアがすぐに着られるものを選んでいく。

「少しばかり手直しすれば、すぐに着られます」

ドレスを選び終えると、ティーシャはすぐに手直しを始めると言い出した。

選んだドレス以外はすべて撤収されていく。

「部屋を用意するから、夕方までにすべて整えておいて」

「わかりました」

ドレスを抱えたティーシャはすぐに別室へと移動してしまい、先ほどまでのにぎやかな空間となっていた部屋が、ソフィアが最初に入ってきたときの部屋へと戻った。

そのことにほっとしていると、シゼルがタイミングよく紅茶を運んできてテーブルに用意してくれた。

それを口にしてから、イリアナがソフィアを見た。

「ソフィアさん。今日はここに泊っていきなさい」

「このお屋敷にですか?」

イリアナと顔を合わせて、できれば好印象を持ってもらい森に帰ることが今日の目標だった。だが、突然泊まることになってしまった。おそらくソフィアには拒否権がないような気がしたのだ。

「わかりました。今日は帰らないことを連絡しておきます」

後で手紙を届けてもらおうと思うと、イリアナがなぜか不敵な笑みを浮かべた。

「手紙は私が書いておきます。ソフィアさんは気にせず、今日はここでゆっくりしていなさい」

その笑みが何を意味するのか、その時のソフィアはわからなかったがイリアナの指示に従うべきだと考えて、手紙を書くことをやめた。

「ドレスもすべて手直しができるでしょうから、明日一緒に持ち帰りなさい」

「わかりました」

その後ソフィアはイリアナと王都での話や、グリースト辺境領の話など、いろいろな話をして別邸で時間を過ごすのだった。


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