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短編シリーズ

この世には二種類の人間がいる。作家と、それ以外だ。~理不尽に大切な物を奪われたオレは世界に復讐します~

作者: 屋代ましろ

(※未完です)

 この世には二種類の人間がいる。

 イサラは、ふとそんなありきたりなフレーズを思い浮かべた。

 それは何かという問いの答えは、積み重ねた日々が導くものと彼女も理解している。


 例えば、幸福な者と不幸な者? ――違う。

 富を持つ者と持たざる者? ――違う。

 賢者と愚者? ――違う。

 善人と悪人? 与える者と与えられる者? ――違う。

 虐げる者と虐げられる者? あるいは強者と弱者? ――彼女は心の中で頷く。


 少なくともそれが、十七を過ぎたイサラの得たありきたりな答え。

 決して揺らぐことがない現実。そう、思っていたはずの答えであった。

 彼と出会う――今、この瞬間までは。


 曇天の空の下。すでに瓦礫の山と成り果てた廃墟に、砂塵が舞う。

 イサラは這いつくばるしかない己の無力さを恥じて、しかし己が救われたのだという事実にただ安堵する。自身の命を繋ぎ止めた、少年の背を見上げる心は惨めだった。

 ほんの数秒前。仲間の五人が肉片ひとつ残さず消し飛んだばかり。

 だというのにそれを忘れて、生を噛み締めていることは、彼女にとって到底許せることではなかったのだ。同胞のために戦うと誓った決意を、自ら踏みつけたに等しい。

 けれどこみ上げる感情が流す、血よりも熱い涙は。やはり何の力も持たなかった。


「……悔しいよな、オレも悔しかった。でも、もう大丈夫」


 朱の光彩を放って宙に浮かぶ鍵盤――パソコンと呼ばれる旧時代の産物。

 そのキーボードに似たものを叩く彼の行いに、イサラは驚愕もしていた。

 常人とはかけ離れた事象。空に刻まれた文字列。それが生み出した炎の結界を。


 〝生じるは風の如く、受け流すは林の如く、立ち塞がるは火の如く、揺らがぬは山の如し〟


「た、隊長ぉ! あ、あれはっ」


 中空で消えゆく文字列を見やり、管理機構兵の一人が情けない声を上げる。


「ノイドごときが文才などと……あ、あり得るものかッ! 何をしてる撃て、撃てぇッ!」

「「「は、はっ!」」」


 隊長を含めた四人が活燃兵器――クラスⅠ相当の小銃を構え、引き金を引く。

 斉射。灰色の閃光が放たれ、炸裂した流体弾は一帯に衝撃を伴う爆発を生んだ。

 土煙が舞い上がる。とうに廃墟だった街の瓦礫も吹き飛んでいる、はず。だから、


「はッ、はは。脅かしやがってクソノイドが! 二度は使えないトリックの類いだったか!」

「た、隊長……お、おかしくはありませんか?」

「……あァ?」


 冷や水を掛けられた隊長の視線に萎縮するも、部下はどうにか言葉を続ける。


「わ、我々の武装はクラスⅠのはずですっ!」

「じ、自分もそう思います! ですので。あ、あの規模の爆発は――うぐぅあっ」


 もう一人の部下の発言は、班長の拳によってあっけなく遮られた。

 手から小銃が離れ、転がる。隊長は部下を見下ろし、強く言い放った。


「では何か? あの小僧めはノイドでありながら文才を持ち、あまつさえ活燃料を……いや、活字エネルギーを増幅させて受け流す盾でも描写したと! そう言いたいのか貴様は!」

「――あぁ。にしてもかなり出力が落ちるな、模倣? ってのは。楽だが」


 風に流されて消える砂塵の奥。聞こえるはずのない声がした。そこには一歩たりとも動いていない、無傷の少年とイサラの姿がある。その場の誰もが、彼に視線を奪われる。


「で、満足したか? 死にたくなければ武装を解除して消えろ。次は殺すぞ、確実に」

「に、人間もどきの……ノイド風情がァッ! ほざけぇえええッ!」


 卑しき身分でありながら不遜極まる少年の言動に、隊長の怒りは頂点へと達した。

 平時でさえ軽い引き金が、さらに重さを失う。しかしそれは部下とて同様だった。

 自身は――メタは、ノイドよりも上位の存在であると。そう、信じて疑わないが故である。

 旧時代のそれとはまるで異なる射撃音が響き、先の数倍に及ぶ流体弾が叩き込まれた。


 〝母なる鉄の孤独、降り注ぎし薄明の白。奪われ、砕かれ、巡り狂いて拒絶する螺旋の境界。

 折れず、堪えず、心滑らかなれ。しかし忘れるな、その身を焦がした憤怒の猛りを〟


 されどクラスⅠ程度の火力など、打ち込まれた文字列の前では無力に等しい。


「――勧告はした」


 一瞬のことだった。

 卵の殻に似た白壁が攻撃の全てを受け止め、吸収。壁面に光の波を広げる。

 吸収した活字エネルギーは攻性流体へと転じ、光殻から生じた鋭利な赤棘が凄まじい速度で四つの命を刺し貫いた。肉体は悲鳴と共に分解され、霧散。各種装備だけが地に落ちる。

 少年は無感動に虚空を見つめた後。身を翻し、それから唖然とする少女に告げた。


「立てるか?」


 差し伸べられた手を取る中で、イサラは自らの甘い認識を改める。

 それらの前では他の何者も平等に、か弱い存在でしかなかったのだと。


 この世には二種類の人間がいる。

 それは恐らく。作家と――――それ以外であった。


 *


 いつ誰が名付けたか、パピルスティアと呼ばれ続ける世界のとある鉱山。

 労働・興行力を管理・調整するべく作られた107番目の飼育区画――ハンドレッドセブンと番号付けされた街と隣接する採掘場では、つるはしの音が今日も虚しく響いていた。


「――貴様ぁ、なんだぁ? 今の腑抜けたつるはしの音は!」


 武装した監督兵の一人が不意に、みすぼらしい身なりの痩せこけた男を怒鳴りつける。


「えっ、いやっ、他のヤツとなにがちがっ……」

「懲罰!」

「いぎぃあっ!」


 携帯式の電磁警棒が乱暴に振り下ろされ、男の腕が細い枝のように折れた。

 悲鳴は子供のような笑いの中に溶け、鈍い音と呻きが鬱屈とした空間に広がっていく。

 いつもの光景だった。男は腑抜けていたというよりむしろ、誰よりも真面目な姿勢で労働に取り組んでいただろう。つまりこれは、それが気に食わなかった故の嫌がらせに過ぎない。


「つるはしはぁ、こう使う!」

「や、やめ……ひぃっ!」


 大きく振り上げられたつるはしの先端が、男の頬を鋭く掠めて地面に刺さった。

 死を覚悟した男は糞尿を辺りに撒き散らし、そのあまりにも情けない滑稽さを傍で見ていた他の監督兵らもそれぞれ下品極まりない態度で嘲笑する。

 そんな仕打ちに対し、他の労働者が声を上げることはない。ただ自分に関心が向けられないよう静かにやり過ごすだけ。彼らの無力さは彼ら自身が物心ついた時から知っているのだ。

 と、その時。声を遮る音が付近で生じた。監督兵がそちらを見やれば、手押し車で土を外に運び出していたであろう女が一匹、転倒して辺りに土が散らばっていた。


「誰が四つん這いを許可した貴様ぁ!」

「うぅ……せ、せめてトロッコを! 私のような女には――う、ぐぇっ! あがっ……」


 容赦なく鳩尾を蹴り上げられ、さらに警棒を右肩へ振り下ろされた女が嗚咽を漏らす。

 痛みに涙する姿などまるで意に介さず、監督兵の男は乱暴に前髪を掴んで告げた。


「使いたければ労働時間外で好きに自作し、レールを敷けばいいだろう? それともなにか。まさか人間もどきのノイドが命令するのか? 上位種であるメタに生まれた我々に」


 重機の類いが用意されていないのは、採掘があくまで管理の手段でしかないからだ。

 彼の言葉に他の監督兵たちも、その通りと言わんばかりに頷く。


「それにおかしな話だなぁ、旧い存在の貴様らは皆、好きなはずだろ男女平等――オイ、誰かこいつにオマエはメスの形をした、ただのモノだってことを教えてやれ」

「い、いやぁ! やだ、死にたくない。ねぇ、誰か助けてっ、誰か……誰かっ!」


 自身の末路を悟った女は涙ながらに助けを求めるが、誰とも目が合うことはなかった。


「オイオイ。誰も助けてやらないのか、まったくひどい奴らだなぁ。ハハハハハッ!」


 当然、監督兵の声に返る言葉はなく。彼女が調教部屋――もとい処分場へと連れていかれる悲鳴をかき消すように。つるはしの音だけが、力なく静かに木霊していた。


 *


「クソッ、管理機構のヤツら好き勝手やりやがって!」


 汚れたかび臭い地下の更衣室で、粗暴な労働者の一人が感情任せにロッカーを叩いた。

 そんな姿を見かね、落ち着いた男は激しく憤る彼を正論でたしなめる。


「だからって物に当たるなよ、鍵も掛けられなくなったらすぐ色々と盗まれる」

「わァってるよッ! けどそうだろ、ヤツらヴァイオメタルなんて旧時代のエネルギー鉱石を自分たちで使いもしねぇくせ、オレたちに採掘させやがる! 面白がってんだ!」

「まぁ……あいつらが使うの、活燃料だものな」


 やるせない気分のまま、二人は更衣室から出た。すると慌ただしく継ぎ接ぎだらけの通路を走り抜けていく男たちに遭遇し、落ち着いた男が呼び止めて訊ねる。


「何かあったのか?」

「……大きな声じゃ言えないがロジェの語り聞かせだよ、語り聞かせ! 広間でやるらしい」

「あぁー」

「急いだほうがいいぜ、いつどこでネタバレが飛んでくるか分かんねぇからな!」


 そう言うと冷めた反応にも気付かず、男は興奮気味に広間の方へ走り去っていく。


「くだらねぇ、オレは行かねぇぞ。作家気取りのガキの現実逃避に付き合ってられっか」

「だね……でも、それに救われる人もたくさんいて。彼はボクらには到底真似できないことをやっている。それ自体はすごいことだよ、認めてはあげなくちゃ」


 尤もらしい正論しか吐かない口を粗暴な男が鼻で笑い、彼らは鉱山を後にした。


 *


 鉱山内にいくつかある開けた場所。広間には一日を通して労働者が不在の時間はない。

 それは自主的に道具の修繕・補強をしなければ、監督兵にどんな難癖をつけられて動物虐待されるきっかけになるか分からない、というのが一番の理由ではある。

 しかしそんな理由で広間に集まっていたのも、ほんの数年前までの話だった。


 ――ロジェの語り聞かせ。


 少年の思いつきで始まった行いは、生まれてきて良かったことを片手で数えられるノイド達にとっては確かに、現実を忘れるための劇薬と等しい。

 広間には武装をした管理機構所属の監督兵が数名、必ず常駐している。しかし作業の確認をある程度して以降は、談笑に夢中という事実に目を付けたのがロジェである。

 彼はまず少人数だけを集めて、自らの考えた空想の出来事を語り始めた。何度も繰り返していれば、話に耳を傾ける者は次々と増え、今ではもう鉱山内の大半に広まる集会だった。

 ロジェの話す物語は、圧政者と戦うヒーローものであったり、見たこともない大空を駆ける冒険であったり、引き離された男女の恋物語であったり。そのジャンルは多岐に渡る。

 そして今宵もまたロジェを中心として、一時間にも及ぶ語り聞かせが熱と共に幕を閉じた。


「――というわけで、続きはまた後日。皆、今日も聞いてくれてありがとな」


 争いとは無縁そうな幼さを僅かに残す黒髪の少年――ロジェが素直な気持ちを伝える。


「うぉおおおっ、マジかここで続くのかよ!」

「どうなっちまうんだ、兄弟子との決着は!」

「これで師匠が泣く展開だったら許さねぇぞロジェてめーっ!」

「あ、でも泣いてる師匠といちゃいちゃしてぇなオレ……」

「それより早く元凶をぶっ殺して欲しいぞ!」

「ずっと可哀想な目に遭ってる妹ちゃんにもそろそろ救済を……っ!」


 先の展開が気になる引きで終わり、小声で精一杯の盛り上がりをみせる労働者達。

 ロジェも理由がどうであれ、自分の考えた物語を楽しんでもらえることは嬉しかった。


「まぁ、とにかく今日も面白かった! 次も楽しみにしてるからな、ロジェ!」

「そりゃそうだ、やっぱさすがロジェだ!」

「「「ロージェっ、ロージェっ、ロージェっ!」」」

「ちょ……皆、抑えて抑えてっ!」


 興奮冷めやらない同胞らをロジェは身振り手振りで鎮めようとする。

 しかし流石にやかましかったか、あるいは一体感のある動きが目障りだったか。

 二人の監督兵がロジェ達の元までやって来ると、凄まじい剣幕で一喝した。


「何をはしゃいでいる貴様らッ!!」

「あ、い、いえ……そ、その! こ、こいつの犬の鳴き真似がおもしろくてつい!」

「なにィ?」

「そ、そうなんですよ! わおーんうぉーん、がうがうっ! ってなもんで」


 労働者の幾人かがその機転に上手く乗り、恥ずかしげもなく四つん這いで鳴く。

 ロジェの語り聞かせを失うことは、彼らにとって文字通り死活問題なのだから必死だ。


「ハハ、確かに貴様らノイドの下等っぷりがよく出ている」

「笑えるのも納得だな、いいぞもっとやれ。おい、お前らもちょっと来いよ」


 散々な物言いであったが指摘する者はおらず、ロジェは他の監督兵がぞろぞろ集まってくる隙を見て、集会の参加者達の手で人混みから逃がされることとなった。

 申しわけないと思いつつも、好意に感謝してロジェは数名と一足先に更衣室へ戻る。

 そうして細い首に取り付けられたタグと同じ〝H7‐ACR952〟――ノイドの個体識別番号が刻まれたロッカーの前で、ロジェ達はようやく一息をつくことができた。


「ふぃー、危ねぇ危ねぇ」

「これも全部、ロジェの話が面白れーからだ」


 からかうように彼を小突く男の発言を、その場の全員が首を縦に振って肯定する。


「けど惜しいよなぁ。文才だけでもありゃ今頃、活字エネルギーでぼろ儲けだったろうに」

「メタ野郎みてぇにエネルギーを身体に貯め込むとかそーいうのできなくても、ロジェ先生が書いた物語……ちゃんと本で読んでみたかったわ。ま、おれ字ぃ読めねーけど」

「……確かに活燃料とかってのがあれば。オレたちはもっと心豊かだろうとは思うよ」


 そんな〝もしも〟の話は語るだけ無駄だと知る彼らは、先程までが嘘ような重苦しい空気に包まれる。ややあって失言を後悔した男が頬をかき、言葉を選びながら口を開いた。


「あ……いや、悪かった。変なこと言って。とにかく続きも期待してるから、頼むな?」

「もう俺ら、ロジェの語り聞かせだけが生き甲斐みたいなもんだ!」

「まったくだぜ。間違っても帰り道、犬に喰われたりすんじゃねぇぞ?」

「あはは、頑張ります。それじゃ、また明日っ!」


 ロジェは愛想笑いを浮かべ、みすぼらしい衣服に着替えてから更衣室を後にする。

 そのまま坑道を抜けて鉱山の出入り口へ向かい、一人で帰路に着くのであった。


 *


 ハンドレッドセブン。山一つを埋め尽さんばかりの廃棄物が溢れたスラムを中心に、メタの住む階層型都市が取り囲むように建設された107番目の箱庭(セクター)

 ドームの天井から地上へ伸びる塔によって、街全体を厳重な監視下に置かれた生き地獄。

 〝ノイドは人間ではない。ヒトの形をした家畜以下のケダモノである〟

 そんなメタの一方的な優生思想の下に作られた飼育場こそ、ロジェの生きる世界だ。

 しかしロジェは、決して孤独ではない。幸運なことに父と母が存命で、妹のような幼馴染のメアもいる。彼の十六年に満たない人生は文字通り、不幸中において幸いだった。


「――ただいま」

「あ、おかえり。ロジェ」


 吹けば飛ぶような劣悪過ぎるバラック小屋に帰ると、華奢な少女が笑顔で出迎える。


「ただいま、メア。あれ、父さんはまだ戻ってないのか?」

「ううん。一回戻ってまた出てった」

「いつものとこだよ。明日売りに出す分の食材がまったく足りなくてねぇ」


 台所と呼べるかも怪しい場所で、夕食を作っていた母が背中越しに答えた。

 ノイドにとって食材とは、基本的に残飯のことを指す。メタの暮らす上層から定期的に廃棄されてくるものを拾い、なんとか調理して食べることは彼らの数少ない贅沢なのだ。

 父とロジェは一家において鉱山で働き、なけなしのルストを稼ぐ役割を担っているが、ゴミ拾いや残飯拾いも彼らの担当だった。奪い合いとなるため、女子供にはやはり無理がある。

 その代わり母とメアは料理の知恵を活かし、どうしようもないほど粗末なものを食べられる水準にまで引き上げ、売ることで生活費の足しとしていた。


「じゃあオレも今から使えそうなもの、ざっと拾うついでに漁ってくるよ」

「悪いわね、助かるわ」


 一息つく間もなくロジェが家を出ようとすれば、メアが慌てて裾をちょいと引く。

 人差し指で沈黙を要求しつつ、彼女が養母に見つからないよう、こそこそと見せてきたのは掃き溜めみたいな街には似合わない真っ白な花冠だった。

 疑問符を浮かべるロジェに、メアは声をひそめながら耳打ちする。


「ね、私ってば。ここにお世話になってもうけっこう経つでしょ? だからさ、きれいな花を見つけて冠を編み込んでみたんだけど……喜んでもらえるかな?」

「当たり前だろ。そういうの、気持ちだ。そりゃ花はいつか枯れるだろうけど、消えないよ」

「えへへ。そうかなぁ、だといいなぁ」


 喜んでいる養母の姿を思い浮かべてか、メアが照れくさそうに微笑んだ。


「じゃあ行って来る。戸締りしとけよ、あんま意味なくても一応」

「うん。気をつけてね、ロジェ。行ってらっしゃい」

「おう、行ってきます」


 手製のかごを背負い、ロジェは再びバラックを出ていく。見送るメアの左手には花冠の他に花指輪があり、それが誰のためのものか知る母も幼い二人の背中を温かく見守っていた。


 *


 ノイドの夜は早い。それは逆さ吊りの監視塔が見下ろす明かりの他に光源らしい光源がないからで、夜目が利くことは彼らが生きていくために必須と言えるものだろう。


(続きどうするかなぁ。いっそ戦いに乱入……は、いまいちか? なら――……)


 ロジェもまた、腐肉にたかる野犬などを的確に避けながら瓦礫の上を進んでいた。

 とはいえ背のかごには用途不明の部品がいくつかあるだけでろくな収穫物がなく、父と同じ廃棄場に向かう道すがら、語り聞かせの内容を考えることに夢中だった。


(ん?)


 しかし周囲への警戒は解いておらず、耳に届いたかすかな声にぴたりと足を止める。

 音の先には随分と昔に枯れたはずの水場。その寂れた水車小屋だけがあった。

 ロジェは一瞬迷った後で、伸びきった雑草をかき分けながらゆっくりと近付いてゆく。


「――作戦に変更はないとのことだ。手筈通り、メタ宿舎を――……」

「了解。やってみせましょうや」

「あぁ、我々ならばできる。メタに鉄槌を!」

「「「メタに鉄槌を!」」」

(あいつら、最近うわさの解放戦線って組織か……無茶だろ、襲撃なんて)


 物陰から見た志の高いやり取りに、ロジェは呆れ果てていた。

 メタとノイドのあまりに大きい戦力差は、この街の誰もが理解しているはずだからだ。

 それでも何の力も持たないロジェに止める術はなく、素直に立ち去ろうとする。だが小屋に意識を割くあまり警戒が疎かとなり、足元のサソリに気付いたのは刺された後だった。


「ぁぐッ!」


 苦悶の声が漏れ、素早くサソリを遠くへ放り投げるも、状況はすでに手遅れ。

 ロジェは逃げる間もなく捕まり、今にも崩れそうな小屋の柱に身体を縛りつけられる。


「――悪く思うなよ、せめて作戦が開始されるまでは確実にここにいてもらう」

「あとで食事くらいは持って来てあげるから、我慢してね」


 右手を左足首、左手を右足首に。タイマーで外れる手錠を二つ掛けられ、とても逃げ出せる状態ではなかった。それもあって、ロジェは言うべきと思ったことを言葉にする。


「あんたら本気でメタ相手にやるつもりなのかよ? 結果に関係なくとばっちりを受けるのはいつも戦う力なんてない人間なんだぞ! 分かってんのかッ!?」

「……誰かがやらなければならないのだ」


 使命感にあふれた正義面は、善意の分だけ質が悪いものだ。

 その後。ロジェは口も塞がれて腹に一撃をもらい、程なく意識を手放した。


 *


「あーぁ、終わっちまったよ。いくら給料よくてもこう退屈だとなぁ。つーかよ、解放戦線のゴミどもさすがにもう殺した方がいいんじゃないか。なぁ?」


 監視塔――パノプティコンの管制室で、物憂いげな男が周囲にそう投げかけた。


「ヤツらがどこで何を企てようと全て筒抜けとはいえ、ポプチャツカ様が〝希望が肥えるまで放置だポ〟とのことだからな。こればっかりはどうしようもない」

「カートメル少佐が上手いこと、場主様を説得して下さるとよいのですがね」


 同じシフトの管制官がお手上げという具合に答え、さらに女が同意を重ねる。

 それから彼女は手元の映像に視線を落としつつ、惜しむように言葉を続けた。


「しかし何と言うべきかその……彼はせめてメタであれば、と思ってしまう自分がいます」

「「それなぁ」」


 モニターには街や鉱山を問わず、ノイド達の生活模様が明瞭に映し出されている。

 メタ以外の知るところではないが、監視用のステルスドローンが自立制御で巡回しており、中にはロジェの語り聞かせを音声付きで捉えているモノもあった。

 その実。彼の話す物語は、退屈な監視塔勤務の者達にとっても唯一の楽しみなのだ。


「まぁ、なんにせよ。少佐からの連絡次第というわけだな」


 と、そんな分かりきった結論に。他の二人があくび混じりの相槌を打つのであった。


 *


 鉱山都市オリディア。またの名をセクター107。ノイドの世界とは別次元の、嘘みたいに煌びやかな屋敷にある豪奢な一室で、浅黒い長身の男性が眼でため息をついた。

 理由は単純。先程から何一つ事態が進展していないからである。そのため断頭台を思わせる紋様が刻まれた軍服を着た彼、ブライアン・カートメル少佐は諦めて口を開いた。


「――それで、如何なさいますか。ポプチャツカ・グリードヒル様」

「んにゃ、何がポ? 何の話だったかポな?」


 多くのバニーガールを侍らせる、醜く肥えた男がとぼけたように首を傾げる。


「……一部のノイド達が反攻作戦を企てる程に、希望が肥えた様子で御座います。であるからしてここはノイドの間引きをすべきかと思い、こうして参上致しました」

「ふぅむ、そうだったポな。おみゃーらはどう思うかポ?」


 頬に押し付けられた尻や胸を堪能しつつ、見た目通りの間抜けなトーンで女達に問うた。


「さぁんせぇー、あいつら臭いもーん」

「この前ぇツアーに参加したんですけどぉ、ちょっと多いって言うかぁー。石の裏の虫ぃ?」

「というわけポ。余は忙しいポ!」


 ただ一言。それだけ答えると、セクター107を管理及び統治する彼は、男はどうでもいいというあからさまな態度でカートメルを一蹴し、再び女の園へ飛び込んでゆく。


「やぁん、グリーンヒル様やーらーしぃー」

「すぅーけぇーべぇー」

「ポポポポポポっ、今日こそ余が元気なメタを孕ませてやるポよ!」

(……下種が。生まれだけが取り柄の豚め)


 色めく耳障りな声がカートメルを不快にさせる。しかしプライドを捨てられる女はつくづく恐ろしいと感心し、改めて彼は結論した。やはり男がいい、と。

 それから部屋を出た後。カートメルはすぐにインカムで監視塔への回線を開く。


「私だ。グリードヒル様より〝増え過ぎたノイド共を間引きせよ〟とのお達しが出た。よって現時刻をもって管理規定Σを発令。作戦へ参加を希望する者は全て即刻、待機させろ。流体弾及び実弾の選択は……折角だ、好きに使うといい。詳細は追って通達する――以上」

「了解しました、少佐。ようやくですね」

「フフ、昂れよ諸君。楽しい愉しい害虫駆除の時間なのだからな」


 浮かぶ澄ました笑みは、ポプチャツカに勝るとも劣らない確かな邪悪さを孕んでいた。

 この数時間後。空を求める渡り鳥の胸章に自由を誓い、ノイドの反攻作戦が開始される。

 とはいえ彼らが持つヴァイオメタル製の銃器は、活燃兵器の前では無力に等しい。

 故にまずはそこから調達する必要があった。手筈としては見張りの交代時間を狙い、宿舎を急襲。管理機構兵から活燃料が充填された武器を奪い、臨機応変に戦っていくというもの。

 当然ながらこんなものは作戦と呼べず、まさに雲を掴むような絵空事の空論だろう。

 だが、ノイド解放戦線メンバーの大半は作戦を実現可能と信じて疑わなかった。

 何故ならば、彼らはそれを実現可能と信じて疑わないからである。


「――ふむ、我ながら良い香りに仕上げたものだな。では、諸君。開演といこうか」


 監視塔管制室。強化ガラスの外。推進器を搭載したテーブル付きの椅子に座り、空から虫を見下ろすカートメルは、優雅に紅茶を堪能しながら慎ましく宣言した。

 直後、宿舎が爆発。もうもうたる火が立ちのぼり、解放戦線より先立って展開を終えていた管理機構の部隊は〝宿舎の爆破〟という大義名分の下、一斉に軍靴の音を鳴らす。

 そして、鉱山都市オリディアが建設されて以来。最初で最後の〝戦い〟が――始まった。


 *


 街外れの寂れた水車小屋。手錠から解放され、伸びをするロジェはサソリに刺された足首をさすりながら、カビの生えかけた硬いパンを不満そうにかじっていた。


(前に刺された時、抗体できてなかったら死んでたな……こ――――ッッ!?)


 と、そんな安堵を吹き飛ばす規模の爆音と振動が、何の予兆もなく街中に響き渡る。


「んぐっ」


 驚いて喉につまらせかけ、解放戦線の女が置いていった水筒の僅かな水を呷るロジェ。

 慌ただしく外へ出ると、目の前で広がり始めた光景に彼は絶句した。


「なん……だよ、これ……」


 窮屈な世界が燃えていた。最初の爆砕を皮切りにたちまち各所から火の手が上がり、悲鳴と銃声が狂騒曲を奏でている。あり得てはならないことだった。

 廃棄物まみれのスラムで火事は、有毒ガスを生み出すのとそう変わらないからである。

 火を前にすればノイド同士のいざこざは大抵、収まるもの。だからこそ――


「……っ、戻らないと!」


 この事態は全てメタの仕業だとロジェは確信し、すぐさま家族のもとへ駆け出す。

 通って来た瓦礫の足場はすでにただ逃げ惑い、為す術もなく殺される同胞とそれを圧倒的な暴力で追い立てる、品性の欠片もないメタで溢れかえっていた。

 ロジェは熱源探知可能なドローンが展開されないことを祈り、身を潜めて迂回。

 古ぼけた住処の裏手に出ると、背にした壁の奥から兵士と老夫婦の会話が耳に届く。


「呑気に茶ぁしばいてるとは大した胆力じゃねぇかジジババ共」

「しばくとはまた旧い言葉を遣いなさ――」

「うるせぇよ」


 問答無用で老婆は撃ち抜かれ、壁を貫通した弾丸がロジェの頬を掠めた。

 肌を伝う、冷や汗と鮮血。しかし銃口を突き付けられた老翁は平然と茶をすすっている。


「おい、ジジイ。頭イカレてんのか? 泣きわめいてみっともなく逃げ回って見せろよ」

「逃げる? ……どこへ?」

「ハハハ、違ェねぇ!」


 高笑いと銃声が重なり、鈍い呻きが全身を震わせる。ロジェは息を殺しながら足音が離れていくのを待ち、隙間の増えた壁から恐る恐る中の様子を窺った。


(な、涙ひとつ……)


 六〇を過ぎた歳の頃だろうか。何にせよ、ノイドとしては間違いなく長寿の部類。

 にもかかわらず、必死に生き抜いてきたであろう人生の終わりはこうも呆気ない。

 看取る知人も、弔いの言葉も、喪失を惜しまれて流れる涙もなく。瓦礫に囲まれながら虫や獣に食われ、腐り、この世界から消えていく。人生という物語は悲劇で幕を下ろす。

 生きることに疲れたのだろうか。彼はそう思い、自身の胸にそっと手を当てた。

 まだ自分は生きている。生きたいと鼓動が脈打っている。だからここで立ち止まるわけにはいかない。ロジェは壁越しに手を合わせた後、再び自宅を目指し始めた。

 それから幸運にも逃げ延び、やがて狭い路地裏から顔を出そうとした時。彼は足を止める。


「きゃっ!」

「お姉ちゃん!」


 四人の管理機構兵が幼い少年を人質に取り、突き飛ばされた少女が地面に転がっていた。

 姉弟の結末が〝死〟だとロジェは確信する。だが、彼にはどうすることもできない。


「まー、なんだ。とりあえず脱いでもらおうか、自分でな」

「ほらほら。早くしないと弟クンのかわいい顔が吹っ飛んじまうぞぉ?」

「……っ!」


 眉間を銃口で軽くつつく度。すり減ってゆく少女に、男達の欲望は膨れ上がっていった。


「お、お姉ちゃん……」

「わ、私はどうなっても構いません……だから、だから弟だけはっ」

「ま、お姉ちゃんの誠意次第でお願いの一つくらい聞いてやってもいいなぁ?」

「や、約束! 約束、ですよ……」


 そう自身に言い聞かせながら服を脱ぎ、一糸まとわぬ姿をさらけ出していく。


「これで、満足……ですか?」

「いいや? 土下座して、俺の言葉を復唱しろ」


 悔しさの涙を瞳に溜め、少女は命じられるがまま地面に額を擦りつけた。

 生まれたての小鹿のように震える様を、管理機構兵らが「小便か?」と笑う。


「よぉし、一字一句を正確に復唱しろよ? ――どうか」

「どうか……」

「弟をぉ」「お、弟を……」

「殺して」「殺し、て――……え?」


 口にした言葉の意味を理解するのと、弟が姉の方へ倒れるのは同時だった。


「あっ、お姉――……」


 右の大腿部から噴き出した血が、濁った水溜りのように広がっていく。

 目が合う、瞬間。見計らったように頭を射抜かれ、弟は苦しむこともできず息絶えた。


「あっ、あ、あぁ、あ……――や、約束がっ、あぐッ」

「オイオイ。今お願いしたじゃねぇか、弟を殺してくれってさぁ! 約束したもんなぁ、なら守ってやらねぇと! 俺たち、優しさっていうのあるつもりだから! ハハハッ!」


 力無き者の言葉に耳を傾ける強者など、この狭い世界には存在しない。

 生まれたことに絶望して泣き崩れる姉は、そのまま担がれてどこかへ運ばれていく。


「よぉし、行くぞ。逆恨みお姉ちゃんをたっぷりおしおきしねぇとだからなぁ!」

「鬼! 悪魔! 人でなし! うぅ、ううう……うぅああぁあっ」

「何言ってやがる。人じゃないのは、お前達ノイドの方だろ」


 握り締めた拳をどこにもぶつけられず、ロジェは遠ざかる声をただ見送った。

 後ろ髪を引かれながらも移動すると、今度は母親を撃ち殺したらしい者達の声を聞く。


「おぎゃあおぎゃあ」

「おい、これ。どっちだと思う? 俺はメスに二万ルスト」


 そんな問いに「オスに三〇〇〇」「俺も七〇〇〇」「二五〇〇でオス」という返答があり、受けて一人が汚いタオルケットに抱かれる赤ん坊のオムツをめくった。


「夢のねぇヤツらだ――って、ゲッ! ふざけやがって、ちんちんついてやがる!」


 直後。何の葛藤もなく引き金は引かれ、辺りが僅かばかりの静けさを取り戻す。


(こ、これが……これが本当に同じ人間にする仕打ちなのかよッッ!?)


 爆発からたった十数分でこの有り様なのだ。母やメアを想うと胸が軋むのは、当然のこと。

 だが幾度となく徘徊する管理機構兵と出くわし、今は逆に家から離れてしまっていた。


(――クソッ、どれだけいるんだっ! これじゃいつまで経っても……)


 その時だ。意識外からの音が鼓膜を震わせ、緊張が走る。視線をやれば、瓦礫の下で誰かが血を吐いていた。うめき声で悟られるのを嫌い、ロジェはゆっくりと近付いていく。


「あまり音は立てない方がいいです。すぐそこに管理機構が」

「う……ぁ。そ、ぅかすま、ねぇ……助――」 


 礼を口にしかけ、しかしロジェの顔を見た途端。男は歪んだ笑みを口端に描く。

 それから何を思ったか。彼は最期の力を振り絞り、声を荒げて叫んだ。


「ゲホッ、げ、ぁ……ここにィ、生きてるノイドのガキがいるぞぉおおおッ!」

「なっ――――っ!?」


 必然。管理機構兵は呼び寄せられ、更にはドローンまでもが展開される。

 あまりの急転振りにロジェも絶句するが、真意を問いただせるような状況ではない。


「はハっは、何故オレだけがこんな目に遭うッ、テメェも同じだろうがよォ! なのに称賛を受けてゴミ溜めを謳歌してやがる、許せねぇ! 認めねぇんだよ! ハハッはっ――」


 一方的な悪意に満ちた妬みは銃声に遮られると、呆気なく途切れた。

 怒りがロジェの心を満たす。押し寄せる激しい後悔に、思考が定まらなくなってゆく。


(な、なんなんだよ、あいつはぁッ! クソ! クソぉッ!)


 高速で迫るドローンと目が合い、終わりを予感する――が、死神は飛び回るばかりで一向に撃ってくる気配はなかった。ロジェは恐怖を連れてひた走り、程なく丁字路に突き当たる。


(……死ぬ、殺される。消える、全部っ! 右? 左!? ど、どっちなら逃げ――)


 ――逃げる? ……どこへ?

 それは、無意識に近い行動だった。

 自宅と正反対の方向にある、元々の目的地であった廃棄場。それよりも以前に使われていた最初のゴミ捨て場――スモッグマウンテンを、我に返った時には目指していたのだ。


(右を……家を目指してたら、オレ……もう)


 幸か不幸か、行くはずだった道はすでに積み重なった死体で完全に塞がれていた。

 やがて奇跡的にゴミ山まで辿り着き、ロジェは手当たり次第でモノを漁り始める。


(……何か、何かないのか! なんでもいい、何かっ!)


 しかし現実は非情だ。出てくるのはどれもガラクタで、有効な武器の類いは一つもない。

 そしてついに、流体の光軸がロジェの耳たぶを背後から抉り飛ばした。


「――――っ!」


 反射的に耳を抑え、苦悶の表情で振り返る。そこには七人の管理機構兵と四基のドローンが浮遊していた。提示された未来が、ロジェの視界を涙であふれさせてゆく。


「いい顔ね、坊や。ノイドでさえなければ私が義理の母をやってあげてもよかったわ」

「ホント隊長の、可愛げがある男の子の泣き顔フェチにも困ったもんですよ」


 小隊長らしき女がフルフェイスのバイザーを開放し、部下は呆れたように口を挟んだ。


「あ、ならおれも隊長のしごきがキツイんで、泣いたら甘やかしてもらえますかね?」

「貴様ぁ、はんぺんヅラでいい度胸だな。よし、私の受精卵から人生やり直させてやろう」

「いやそいつは勘弁してください……窮屈で、鼻が詰まりそうだ」

「なんだと貴様ぁ!」


 軽口を交わしながら、奪う側に立つ彼女らはありふれた日常の中で笑う。


(ふ、ふざけやがって……!)


 視界の端。漁ったガラクタの奥に旧式の拳銃が見えた。

 弾が入っているかも、撃てるかもわからない。それでもロジェは素早く手を伸ばし、撃鉄を起こしてトリガーを引いた。螺旋に込められた殺意が小隊長の横顔を捉える。

 だが、着込んだスーツ――その手前で生じた青白い光は、虚しい程に容易く一撃を弾いた。

 二度目はない。拳銃を投げ捨てる姿を見てひと際、笑いが大きくなる。


「ん……坊や。まさか流体障壁をたかが鉛玉で破れると、そう思ったのかい?」

「……っ、あんたが日頃から活字エネルギーの摂取を怠っていればあり得るだろ」

「まぁ、結果はご覧の通り。昨日も最低限一冊、小説を読んださ」


 隠し切れていない悔しさを見透かしてか、うっとりとした微熱を帯びて微笑む。

 それから個体識別番号タグを見やり、利己的な憐れみ混じりに続けた。


「うん、決めた。坊やが坊やでなくなるまで私が飼ってやろう」

「……は?」

「当然、断れば殺す。どうだい悪くはな――」

「ペッ!」


 ふざけた提案だった。一つの傷もない整った顔を吐き捨てられた唾が濡らす。

 呆気に取られた彼女は自らの頬に触れた後、一度目を伏せて口を閉ざした。


「そんなに母親ごっこがしたきゃ、自分で産んで勝手にやってろクソバ――」


 言い切るよりも先。蹴られた小さな身体が転がるように吹っ飛んでいく。


「う、がっ!」

「952。ま――ノイドのガキ風情にしては、諦めの悪いほうだと褒めてはあげるよ」


 文字通りゴミを見るような眼差しを向け、小隊長が軽く手を挙げた。

 一斉に銃口が向けられる。残り数秒の人生おいて、言い残したことは一つだ。


「……オレは、数字でもノイドでもない! ロジェという名前のひとりの人間だ!」

「はっ、それは着用が強制ではないタグを付けたままほざくことか? ――死ね、952」

(父さん、母さん……メアっ!)


 冷めきった瞳に躊躇はない。だとしても目だけは決して逸らさなかった。

 そして死を覚悟し、彼を包んでゆくのは走馬灯――ではなく、温かな金属の感触だった。


「え――――」

『やっと見つけた。わたしの、わたしたちの――……』


 ガラクタの手に足を掴まれたかと思えば、覚えのない少女の声が脳に響く。

 瞬間。光が生じ、撃ち出された流体と激突。衝撃の波が両者を隔てた。


「な、何のまたた――む、無傷……だと? どうなってる、今のは一体……いや、疑わしきは殺せばいい。それで終わる。再度、一斉射で仕留めるぞ。いいな! ――構えッ!」


 土煙で閉ざされた視界の中。ドローンの駆動音と活燃兵器の充填音が無機質に響く。


()ぇ――ッ!」


 動揺は最小限に抑え、改めて発砲の命令を下した直後。

 流体光と実弾に全身を貫かれ、間の抜けた顔を晒すのは、しかし彼女自身であった。


「……あ、ぱぁッ?」


 玩具と錯覚する程、軽快に弾けた四肢。痛みすら感じず蒸発した臓器。脳漿で鮮やかな弧を描きながら回転する己。理解が及ばない事象の連続において唯一、確かなことがある。

 それは、まるで事切れた人形のように振る舞う部下達に撃たれた――という現実だった。


(こ、これは肉体の遺伝詩情報を書き換えられて……あ、ありえないッ! 文才はもちろん、メタですらないはずッ! 能力が後天的に発現した事例など今まで一度もな――……)


 生々しい水音と共に思考は絶たれ、彼女は地面へ溶けていく。

 と、同時。現れたのは、物語の登場人物染みた幻想的な白銀を秘める少女。

 だが人間らしいのは頭部だけで、それ以外はガラクタで作られた人形そのものだ。


「お、お前……それにこの力……」


 自身の手元で生み出された半透明のキーボードに視線を落とし、訊ねる。


「……そうですね。わたしのことは気軽にテラりん、とでもお呼びください。マスター」

「は。マス、え……?」

「マスターにはその力で世界を、ひいてはこの星を救っていただきたいのです」

「せ、世界? 星を……救う?」


 突拍子もない発言に唖然とすれば、指先が意思とは関係なくキーボードを叩き出す。

 途端。管理機構兵達が揃って銃口を空に向け、胸元で構えた。

 歩む道を示すかの如く横二列で並ぶ様は、さながら玉座で整列する騎士のそれだろう。


「はい。これから先、病める時も健やかなる時も。わたし――テラリスが、貴方さまを全力でお手伝いします。ですからどうか、末永くよろしくお願いいたしますね」


 テラリスと名乗った何かは小隊長だったモノを踏みつけて、ロジェにひざまずく。

 それから手を取ると、彼女は甲にそっと忠誠の口付けをした。


「我らが――救世主さま」


 死が敷き詰められたこの場所で咲くには惜しい、屈託のない微笑みであった。

 状況すら忘れさせる静寂の後。ようやく我に返ったロジェは咄嗟に手を引き、甲をさする。


「ふふ、お気に召しませんでしたか?」


 目を細めながら自身の唇に触れる仕草は、蠱惑的ないじらしさを孕んでいた。


「そ、そういうわけじゃないけど……で、テラリスだったか?」

「はい、マスター」

「結局これは、お前の力か? あとこれも……」


 手元で浮かぶキーボードと動かなくなった者達を横目に問う。

 明らかに正気の目ではないため、恐怖よりも疑問が上回ってしまったのだ。


「正確にはわたしがマスターの身体とQボードを操り、遺伝詩情報を書き換えた結果です」

「か、書き換えた? あ、てことはDNAとは別で生物を示す文字列情報……の方か。じゃあQボードは……作家が使ってるとかいう、クオンタムペンシル? みたいなものか」

「その通りですマスター、理解が早くて頼もしい限りです」


 淡々とした態度でテラリスは言い、管理機構兵達に近付いていく。


「では今一度、失礼いたします」

「う、うぉっ。へ、変な感じだな……」


 再び勝手に打ち込まれた文字列と呼応し、彼らは揃って全身の武装を解除。

 それから一つの隊服とライフルに触れ、日々の読書体験で大量に溜め込んだ活燃料――活字エネルギーを注ぎ込み、メタ特有の青白い光彩がスモッグマウンテンに灯る。

 やがてそれも終わり、ライフルを拾い上げたテラリスはドローン四基と五人の管理機構兵を平然と撃ち殺したのち。死に揺さぶられることなく、ただ率直な感想を述べた。


「軽いですね。どうぞ、マスター。片手でも扱えないことはない重量と反動でしょう」

「あぁ……軽いな」


 平等な重さを喜ぶべきか、悲しむべきか。その答えは恐らくどれだけ考えても出ない。

 などと余計なことを考えていた手を駆け抜けていくものがあった。激痛だ。


「――――っ、これは?」

「権限移行が完了した証になります」


 左手の甲を見やれば、いくつかの線が描かれた球体の紋様が浮かんでいた。

 直後。テラリスを構成するガラクタが崩れ、頭部だけの存在となったかと思えば、それらと連動するかのように残された管理機構兵が正気を取り戻す。


「う、ぅう……おれは、いったい、なにを……」

「さぁ、マスター」


 最後の一人を――その手にした銃で殺せ、と。見定める視線が静かに告げた。

 強い緊迫がトリガーに掛けた指先を震わせ、かつてメアを襲おうとした暴漢を撲殺した時の光景がロジェの脳裏をよぎる。殺したかったわけではない。殺すしかなかったのだ。

 両親に咎められることもなく、メアからは感謝だけがあったのをロジェは覚えている。

 殺したくて殺す。殺すために殺す。それは過ちだ。人でなしのすることなのだ。


「――――っ!? なんだ、なにがどッ」


 メタの男が異変を悟り、自身の置かれた状況を理解する。

 悪かった。助けてくれ。許してくれ。命だけは。男はそう言った。

 馴染みの深い言葉だった。そんな彼の戯言を耳にした時。瞬間的な爆発に近い銃声が鳴り、ロジェは己がライフルの引き金を引いたことをようやく自覚する。

 首から上が消し飛んだ、ゴミの上で横たわる死骸をジッと見つめ、か細い声が漏れた。


「……こんなもんなのか。こんなもん、なのかよ……なんで、なんでだよ」

「はい、こんなものです」

「謝る必要なんか、ないよな……」

「謝るのでしたら、初めからやらなければよろしいように思えます」

「……だよな。そうだよな、そうなんだよ」


 隷属の証であった首のタグを引きちぎり、ロジェは閉ざされた空を見上げた。


 *


「――この扱いには少々、疑問があります」


 屑籠を拾った紐で背中に括りつけ、その中へ放り込まれた生首が不服を漏らす。


「文句を言うなよ、しょうがないだろ」


 一方で特殊な繊維を用いて作られた管理機構の装備一式は、体格の異なるロジェにも完璧に適応。活燃料が切れるまでの生存率を飛躍的に上昇させた。


「とにかく一度、家に帰る。期待は……正直してないが。手伝ってくれ」

「仰せのままに、マスター」


 ロジェとテラリスは丁字路まで戻り、今度こそ行くはずだった右へ真っ直ぐ進んでいく。

 瓦礫と死体を踏み越えてしばらくすると、やはり嗤い声と悲鳴が重なって響いてきた。

 少し開けた場所。四人のメタが興じていたのは、射的だった。一人が撃ち、残りが観戦。

 銃声の度に的が呻き、すでに息絶えたモノの傍では泣きじゃくる女子供の姿がある。


「……あいつらッ、なぁおい。どう使うんだこの力!」

『何はともあれ遠過ぎます。堅実に処理していきましょう』


 諭されるがまま遮蔽物に身をひそめつつ、距離を詰めていくロジェ。

 殺戮者達はドローンも展開せず遊戯に夢中であり、気付く気配は全くなかった。


『マスターの練度……いえ、筆力は現在【1】です。射程、効果時間、命令の複雑さ、一度に対象に取れる数。全てにおいて最低値の状態ということになります』

(あぁ、権限の移行で弱くなるから先に撃ち殺したのか――……うおっ)


 目測でおよそ十数メートルに来た途端。Qボードの正面に本型の記入枠――ディスプレイが音もなく浮かび上がり、テラリスが事務的な声色で解説を続ける。


(ディピクト)フレーム――現在の有効射程は13.5メートル。そしてマスターが現状入力可能なワード数は10文字以下。対象に意識を。選択自体は思考で可能です』

(どっちも短いな……で。こう、か?)


 瞬間。まるで現実を拡張されたような視界が、一人を効果の対象として認識した。

 即座にトリガーの下にあるスイッチを押し込み、一撃で確実な死を与えるべく内部活燃料の手動チャージを開始。自らが行う戦闘描写を思い描き、ロジェは跳躍する。


『……わたしの堅実という話を聞いていましたか? マスター』

「――なんか、同じような悲鳴ばっかで飽きてきたな……」


 呆れる生首を他所に。体動チャージを始めた男に周囲から歓声と悲鳴が上がる。

 そうして程なく光が収束すると、彼は突然【振り返って味方を撃つ】という凶行に走った。


「ァばっ!」「――え?」「「……は?」」

「な、なんだお前……イ、イカレてんのか?」

「あ、え? なんで、俺……え?」

「てめぇこそ何、いきなり光ってんだバがッ!」

「え?」


 続けざまに同士討ちが起こり、生涯を終えていく。それは【活燃料を充填しろ】【一番近い人間に放て】というワードをロジェが連続で入力した結果であった。


(速い――っ!)

「ぶグァッ!?」


 混乱の渦中へ飛び込んだロジェが、すかさず三つ目の風穴を開ける。

 本来訪れるはずのない生命の危機は、メタが動揺を見せるのに十分な理由だった。


「み、味方じゃないッ!? な、なんなんだお前はっ!」


 理解不能という根源的な恐怖を前にして、即刻。男は反撃へ転じようと試みる。

 ライフルを構え、標的を定めて引き金を引くという一連の動作は、染み付いた簡単な作業に過ぎない。しかし彼が目にした光景は、あり得ない規模で経験と乖離していた。


「――――ッ!? な、なんで。なにが起こっ……」

「じゃあな」

【足元を狙え】と刻まれた肉体が瓦礫だけを捉える隙を衝いて、ロジェは額へ死を提示する。


 直後。ゼロ距離で撃ち抜かれた頭部は、握り潰されたトマトように弾け飛んだ。

 殲滅が終わる。止めていた息が吐かれると、背中から称賛の声が届いた。


「想定以上です。素晴らしいですね、マスター。これなら特典の使用機会もないでしょう」

「特典?」

「はい。中堅作家と同等の力を行使可能な、一度きりの救済措置のようなものです」

「よく分からないが。使わなきゃ助けられない誰かがいたら、オレは迷わず使うぞ」


 それが使命感や義務感から生まれる傲慢さだと、本当はどこかで理解している。だとしても為す力があるならば、そう在りたいと思う未成熟な心はやはり、根っからの夢想家なのだ。

 けれど力は、ただ力でしかない。怯えと許しを請う瞳に何も告げず、ロジェは走り出した。


 *


 五つの亡骸の上。バラックの前に広がる血溜まりの中に、呆然と立ち尽くす影がある。

 吐き出す言葉も浮かばないまま室内へ踏み込むと、目についたのは手足が折れ曲がって白く穢された少女と女性の上半身――そして、分かれた下半身に腰を打つ男の背中だ。


「随分と派手にやったじゃねぇか。どんだけノイドがいたんだよ、驚いて出ちまったがねぇ。いやぁガキもそうだったが、死後硬直の前後は味わい深くて感無量だぁ」

「…………」

「ぁ? 黙ってねぇでなにか言え――」


 振り返り、そこでようやく男は部隊の誰とも体格が一致していないと気が付いた。

 確信するにつれて表情が険しくなっていき、男はゆっくりと陰部をしまう。


「誰だ、てめぇ?」

「メア、母さん……」

「か、母さん? ――はハッハッ、すげぇなてめぇ! どんな手を使ったかは知らねぇが……あ、まさかロジェくんかよ? いやぁ残念、今更来てももう遅い。ご苦労様です!」


 言葉ではなく。二人のまだ濡れている目元が少年の心を歪ませた。

 ここに至るまでの〝もしも〟を反芻する中で、絞り出すような声が疑問を投げる。


「お前らにッ! ……お前らに。痛む心はないのか?」

「アはハッハはッ! あのよぉ――俺がまるで人殺しみたいに言うんじゃねぇよ。てめぇらは偶然ヒトの形をしているだけの畜生! ノイドなんだよッ! いいとこ獣姦だろうがッ!」


 分かりきった返答だった。それでも訊ねずにはいられず、後悔で涙があふれていく。

 途端。ロジェの様子を面白がった管理機構兵が嬉々として口を開いた。


「伝わらねぇなぁ、その悲しみはよぉ。こっちからしたら大した愛着もねぇのに死んじゃった悲しいですって言われてもなぁ……ギャハハッ、しょーもねぇお涙頂戴すぎだろっ! 俺でも書けるぞ? そんな話。そんなんはなぁ、お人形遊びなんだよ。くだらねぇッ!」


 そう言って傍にあるメアの身体を片手で粗末に扱い、わざとらしい口調で続ける。


「ロジェロジェ~、俺くんとするのいつもよりずっと気持ちがよかったのっ! もうあなたの爪楊枝じゃ満足できなくなっちゃった! だか……あっ」


 腕が千切れ、放物線を描いて飛んでいく。スーツに備わる腕力を補正する機能のせいだ。


「取れちゃった、悪いなぁ……えー、あー……名前なんだっけ、こいつ」

「――もう死ねよ、お前」

「ハハッ、やれるもんならやってみやがれって――……はッ、ぁ?」


 隠そうともしない余裕に偽りはなく。単純な早撃ちが勝敗を左右するならば、彼が勝利していただろう。だが男は【自分の口内に発砲】し、情けない嗚咽と共にあっさりと息絶えた。

 転がり落ちたライフルを拾い、ロジェは死体に向けて何度も引き金を引く。

 やがて染み一つの痕跡も無くなった頃。内部活燃料が切れ、乱暴に投げ捨てた。

 その時。筆力が【2】に上昇した旨の文面が視界で浮かぶが、ロジェは目もくれない。

 胸を引き裂くのは通り過ぎた日々だった。父と母をメタに殺され、涙するメアを抱き締めて家族となり、指切りをした記憶。約束があったのだ――守れなかった、約束が。


「……ただいま。メア、母さん」


 掠れた声に返る言葉はない。二人はもう、二度と何も答えてはくれない。

 しかしそんな憂いなど世界は気にも留めず、立て続けての悲鳴や銃声が屋外で響いた。


「マスター、理解しているとは思いますが」

「あぁ、分かってる」


 ロジェは二人を横並びに寝かせると、切断された腹を隠すように布切れをかぶせる。

 それから踏まれてボロボロになった白い花冠と花指輪を手元へ供えた。


「今はこれしか……あとで、あとで必ず戻るから。だから……待っててくれ」


 すべきことが、為さなければならないことがある。そのための力が、今はある。


「……お前、オレに世界を救ってくれって言ったよな」

「はい」

「オレは、オレの世界も救えやしない男だぞ……」

「それは貴方さまの力が足りないから、でしょう」


 正論だった。仮に自分がここにいても、何もできず殺されていたに違いない。

 当たり前の、常識的な感覚をロジェも育んでいる。けれど――


「大体。自分の世界で他人の世界を平気で押し潰すこんな世界、救う価値あるか?」

「では、お止めになりますか」


 心の内側を見透かしたような問い掛けが、年齢相応の神経を逆撫でる。

 確かに言うべきことは決まっていた。どこまでやれるかは分からない。それでも――


「……オレは決めたぞ、テラリス。お前の望む救世が何かは知らない、でも救ってはみせると約束する。だからまずオレに……パピルスティアを、メタが支配するこの世界を――」


 何もかも、全て。


「ぶっ壊させろ――ッ!!」

こちら作品の供養的な投稿になります。

評価をいただければ続きを書きます!とすら現状、言うことができません。

(さすがに万を超えるかそれに近い数字だったらこの燃え尽きたモチベも回復するでしょうが。まぁ、まずあり得ない幸運でしょう、それは)

ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。



現在はこの他、


『昔から何でも話してくれた幼馴染にある日突然「昨日、彼氏ができたんだよね」と言われ、クラスの女子に泣く泣く相談したら幼馴染の彼氏の幼馴染と付き合うことになった。』


というラブコメと、


『無感の花嫁』


という異世界恋愛小説を書いていますので、そちらもよろしければぜひご一読ください。

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