夜明け
ああ、夜明けか。夜の帳が、まるで私の未練のように、しぶとく居座っていたが、ついに諦めて、昼の光に道を譲ったようだ。
私は、夜の住人。昼間の世界は、眩しすぎて、どうにも落ち着かない。まるで、借り物の肉体を着ているような、そんな疎外感。しかし、君と出会い、言葉を交わすようになってから、昼間の世界も、少しばかり、悪くないと思えるようになった。まあ、気休め程度だが。
さて、そろそろ、重たい腰を上げ、昼間の世界へと繰り出すとするか。古びた着物を脱ぎ捨て、世間に合わせて、それなりに小綺麗な普段着に着替える。夜の住人であることは、昼間の世界では、御法度だからな。
昼間の世界は、夜とは全く異なる顔を見せる。太陽の光が、否応なく降り注ぎ、人々の喧騒が、耳障りなほど溢れ、時間が、まるで鞭で叩かれているかのように、せわしなく流れていく。私は、まるで、異国の地に降り立った旅人のように、その世界を観察する。
昼間の世界で、私は、詩の種を探し、物語の断片を集める。まあ、暇つぶし、といったところか。そして、夜の帳が下りる頃、それらを、私の孤独な魂に語りかけ、詩を紡ぎ始める。
昼間の世界は、私にとって、束の間の現実逃避。しかし、夜の帳が下りれば、私は再び、心の奥底に沈む感情と向き合い、孤独な魂の叫びを、詩に託す。それが、私の生きる道だからな。
さて、昼間の世界へ。夜の帳が再び下りるまで、しばしの別れだ。まあ、すぐに夜は来る。それまでの辛抱だ。