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星空で繋がる世界  作者: 江崎涙奈
第1章 リスタート
8/37

‐.外出事情

この話は4~6の父母sideです

 


〈side:ーーー〉


 厳格な空間の中、王座に座るのは貫禄漂う男。その男は不機嫌なオーラを隠しもせず頬杖を突いた。その姿を隣に座る女が窘める。


「ディーリス、いけませんわ。アルバスタ殿がいらっしゃるのに」


 そんな女の言葉にディーリスは眉を顰めた。


「それくらい分かっている。だがなレイア、いくらなんでも遅すぎるだろう…ここに座ってから何分経つと思うんだ!?」

「凡そ10分程です」


 その問いに横に控えていた優秀な部下が瞬時に答えた。レイアは呆れて言う。


「まだその程度じゃないいですか」

「例え10分でも王を待たせるとは何事だ!?」


 理不尽極まりない事を言うディーリスに、レイアは冷たい視線を送った。


「あら?では、彼らが着く時間より30分も早く来た方は、何処の何方ですか?」

「うっ…」


 ディーリスが言葉に詰まっていると、タイミング良く兵士が告げに来た。


「アルバスタ様とフレイティー様がお付きになられました」


 ディーリスはこれ幸いとその話を終わらせそっぽを向く。


「…ふん、やっと来よって」


 レイアからの刺さる視線に気付かない振りをして、ディーリスは座り直した。レイアは溜め息を一つ零すと正面に向き直った。




 * * *




「アルバスタ=クレイヴ・アルデ・ルーン様、並びにフレイティー=クライヴ・アルデ・ルーン様ですね。どうぞお入りください。」


 そう言って門番の男は、深く腰を折った。扉の向こうには見た目麗しい男がこちらを見ると、笑みを浮かべてやって来た。


「これはこれは、アルバスタ殿とフレイティー殿じゃないですか」


 物腰柔らかな男に、フレイはにっこり笑い会釈を返す。


「ええ、お久しぶりですね。ノルドレス殿」


 ノルドはフレイの笑みを見た瞬間、相好を崩した。


「嗚呼、フレイティー殿は何時見てもお美しい…どうです今夜私と…」


 フレイの手を取って口付けるノルドを、アルバは容赦なく叩く。


「ノルド! 人の妻に手を出すなっ!!」

「いいじゃないか少しくらい」

「他の女の所でも行け!!」


 睨むアルバを飄々と躱すノルドとの喧騒は止むこと知らず、寧ろ苛烈になっていった。


 しかしフレイは自分の事で争う二人など見向きもせず、当たりをキョロキョロと見渡し、目に付いた兵士に声を掛けた。


「そこの貴方、ちょっといいかしら?」

「は、はいっ!!」


 こっそりと様子を見守っていた兵士は、急に声を掛けられ挙動不審な返事をした。


「陛下の下に案内してくれるかしら?」

「わかりました!!」


 そう意気込んだ兵士だったが、未だ喧嘩を続けるアルバとノルドをどうするべきか悩んだ。


「…あ、あの…アルバスタ殿は…」

「放っておいて構わないわ、さぁ行きましょう」


 そうばっさりと切り捨てるフレイに、兵士はそれに従うのが一番だと思い拝謁室に案内することにした。




 * * *




 フレイは拝謁室の絨毯を踏みしめ、失礼の当たらない位置まで行くと、ドレスの裾を摘み、腰を折った。


「フレイティー=クライヴ・アルデ・ルーンです」


 凛とした声が部屋に響いた。


「表を上げよ」

「はい」


 許しを得たフレイは顔を上げ王座を見上げた。ディーリスは少し戸惑いながら尋ねた。


「…アルバスタはどうした。一緒ではないのか」


 フレイは首を傾げて、口元に手を当てた。


「途中まで居たのですが…気付けば居なくなっていました」


 困りましたねと満面の笑みで言われ、何も言えなくなるディーリスだった。


「フレイ、久し振りね」


 黙ったディーリスに代わり、レイアがフレイに声を掛けた。


「王妃様もお元気そうで何よりです」

「あら、随分他人行儀だこと」

「場所が場所ですので」


 ふふふと笑う二人に薄ら寒いものを覚えたディーリスは、アルバが早くここに来ることを切実に願った。


「あら、早かったわね」


 そうフレイが呟くと扉が開きアルバが入って来た。


「先に行くなら行くと、そう言ってくれ…」


 相変わらずなフレイに、アルバは少し疲れた表情を見せた。そんな二人に、ディーリスは咳払い一つした。


「今日呼んだのはな…」


 話始めたディーリスの言葉を遮って、レイアは聞いた。


「お話が長くなりそうでしたら、フレイと二人で私の部屋でいても宜しいでしょうか?」

「…構わん」

「では、フレイ行きましょう」

「えぇ」


 そう言って退出していく二人を待って話始めた。


「それで、呼びつけた理由は何ですか」


 アルバの不敬に当たる物言いに、ディーリスは気にした様子もなく続ける。


「嗚呼、お前のところに娘が生まれたと言っておったな」

「言いましたよ?」


 それがなんだと目で訴えるアルバに、ディーリスは意地の悪い笑みを見せる。


「ということで会わせろ」

「は?」


 唖然とするアルバをそのままに、話を続ける。 


「噂によると、フレイティー殿によく似ているそうじゃないか」

「…まさか、そんなことの為だけに人の休日を潰させてたんですか!?」

「そんなことじゃないだろう」


 怒るアルバをディーリスは王の権限で一蹴し、止めの一言。


「来月のアレスティアの誕生祭には連れて来いよ」


 がっくりと肩を落とすアルバに、拝謁室はディーリスの豪快な笑い声が満たした。



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