1.再スタート!?
あの………ここ、何処ですか?
「あっ! 見て見て!! 今、エルナが私の方を見た!」
「リア姉さんじゃないよ。僕の方を見たんだよ。」
「違う! 今のはどう見ても私の方だった!!」
紅い髪に緑の目の少女と金の髪に少女と同じ緑の瞳の少年が、私の顔を覗き込むように顔を近づける。
いやいや、そんなに顔近づけたら見るに決まってるじゃないですか。
というより誰ですか?
私はさっき確か、どっかの勇者さまに“魔王! 覚悟!!”とか言ってブッスリ刺された筈……めっちゃ痛かったから夢じゃないだろうし、あれは確実に死んでた。てか、もとの私の世界はどこいった!?
誰か説明をーーーーー!!
嗚呼でも、私の心の叫びに答えてくれる人はいないんだろうな…
「リア、ルセ、落ち着け。エルナが驚いてるだろ。」
紅い髪に藍色の瞳の少年は、二人を私の前から退かしてくれた。
おお! ここに来て初めての常識人!! 感動のあまり涙が出そう……
そんな事を思いながらこっそり涙ぐんでいると、紅い髪に藍の瞳の少女が、ひょこりと顔を出してきて、そろそろと指を私の手の所に持ってくる。
条件反射でつい握ってしまった。
「わっ、今レセの指握ったよ!!」
「…レセ…嬉しそうね」
「うん! とっても嬉しい」
わ~、この子の可愛い~~
朱の髪に緑の瞳の少女が喜ぶ少女の頭を撫でていた。
その光景を微笑ましく見ていた私だったが、ある事に気付いた。
うん? 今更だけど、私の手めっちゃ小さくない!?
自分の手をにぎにぎしながら、一人首を傾げる。
…妙に違和感あると思ったら、周りのモノ全て大きいし……えっ、もしかして…………
核心に触れかけたと思ったら、いきなり誰かがが私の体を持ち上げた。
うお!?
「リア姉さんだけずるい! 僕も!!」
「お前はまだ小さいから駄目だ!!」
私を支える腕を少年が引っ張る所為でぐらぐら揺れて怖い!!
誰かーーーー助けてーーーーーー!!!!
『ひっく、ひっく、ひっく……』
「わっ、どうしよう!?」
私を抱いていた少女は突然泣き出した私に慌てふためいていると、金の髪に藍の瞳の女性がそっと私の体を抱き上げた。
「あっ、お母様!」
温かい体温に優しい香り。なんだか良く分からないが、凄く落ち着く。気付けば泣き止んでいた。
きょとんとした顔で見上げると女性は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
「ふふっ、初めまして。貴女の名前は、カルティーエルナ=クレイヴ・アルデ・ルーンよ。私は貴女のお母さん。」
お母さん!?新たなる生命の誕生!?
落ち着け…落ち着け!状況を整理すると………つまり
私、赤ちゃんになっちゃった?
信じがたい事実にしばし呆然としていると、今度は紅い髪に緑の瞳の男性の腕に抱かれていた。
ゴツゴツとした手で優しく頭を撫でる。すると今度は少女が横からほっぺをツンツンとついてきた。
「エルナはお母様似ね」
「お父様の影もない~」
「いやそんなことはないぞ!! ほらこの鼻筋とか……」
いったいどうなっているのかはよく分からないが、冗談を交えながら談笑する一家団欒のその姿に自然と笑みが浮かぶ。
「「笑った!!」」
少女たちが嬉しそうに手を取り合い喜びあうと、一家は朗らかな笑いに包まれた。
私ことカルティーエルナ=クレイヴ・アルデ・ルーンは、クレイヴ家の新しい家族の一員として祝福されこの世に生を受けた。