表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星空で繋がる世界  作者: 江崎涙奈
第1章 リスタート
13/37

11.後日祭<前編>

 


 ガヤガヤ…ーー


 大通りに立ち並ぶ出店の数々に、道行く人は王子の誕生祭の翌日ともあって心なしか浮き足立っていた。そんな中、エルナもスイに抱かれてお祭り気分を楽しんでいた。


 不思議な光物の数々に、体に悪そうな色の食べ物から普通に美味しそうな食べ物までいろいろあった。その大半が目新しいものばかりで興味を引かれ、きょろきょろと出店を見ていると、前を歩いていたルセが急に振り向いた。


「じゃあ、スイ兄さんここから二人で行っていい?」


 ルセに発言に明らかな期待の眼差しを向けるレセに、スイは失笑した。


「ええ、構いませんよ」


 そう言うとレセはぱあっと顔を綻ばした。


「ルセ、レセの事を良く見ていて下さいね」


「う「ねぇ、早く!」ちょっ、レセ!……やめ…引っ張る…って…うわっ!」


 レセにずるずると引っ張られ、人込みの向こうに消えたルセの姿は既に見えなかったが、盛大に倒けた音だけがそれを雄弁に物語っていた。


 あー………


 毎回の如く、レセに振り回されるルセに心の中で暫し黙祷を捧げた。




 * * *




 ………あれ?


 さっきから何故か人気のない方へない方へと進んでいく。


 お祭りは!? 出店は!?


 ちらちらと見えていた出店に並ぶ食べ物は見たことも無いようなものばかりで、どれか一つくらい食べれるかなという細やかな期待を馳せていたのに…


 でもまぁ、子供だから駄々でも捏ねれば買って貰えるだろうな~、っていう打算的下心があったのは否定出来ないけどさ


 でも…と食べれない事に不満なエルナは、色々と理由を付けては業を煮やしていた。


 次第にそれは膨らんでいき、何処に向かっているのか説明が無い事も重なって耐え切れずにスイの腕をくいくい、と引っ張った。


 何ですか?と尋ねるスイに疑問をぶつける。


「どこりゅくの?」


 スイは一拍間をおいて少し意地悪な顔をして、良い所ですとだけ言った。


 納得出来ず顔を顰めていると、頭をぽんと叩かれた。


「行ってからのお楽しみです」


 そう言うともうそれ以上は教えてくれなかった。


 う~~、気になるなぁ…


 そう悩んでる間にもスイは複雑に入り組む裏道を迷うことなく歩いて行った。すると、その内遠くに聞こえていた喧騒が徐々に近づいてきた。


 裏道を抜け開けた視界に飛び込んできたのは、埋め尽くすほどの人で溢れ返った広場だった。


 そこは始めに居た場所より一層賑やかで、楽しげに響くアコーディオンやトランペットの音色、あちこちで行われるパフォーマンスや、生花で彩られた服を纏いくるくると踊る姿に、エルナは不満を忘れて見入っていた。


 他にも、派手な衣装に奇抜なメイクをした人が風船のようなものを持っていて子供に渡したり、簡易メイクを施している人や、売り子などいろんな人が居た。


 良く見れば、人々はドーム状のカラフルなテントに向かって並んでいるようだ。此処が最後尾と書かれた看板を持った人の周りに、更に人が集まって列が短くなることはない。


 ここに並ぶのかと思いきや、スイは列を気にすることなくテントに向かって行く。そのまま、勝手に裏方へ回るスイにエルナは慌てた。


 部外者が入っちゃいけないんじゃないの!?


 そう思い周りを見ると、見事に部外者以外立ち入り禁止の文字があった。前を見れば、向こうから大柄な男の人が来た。


 あ~~来ちゃったよ…うん、私子供だから知りません!!


 内心必死に言い訳するエルナは、目に手を当てその場をやり過ごそうとした。


 ………あれ?


 恐る恐る手を退けてみると、さっきの男の人は何も言わずに通り過ぎた。


 結局そのまま誰にも見咎められることもなく、奥の部屋の前に立ち止まった。そしてドアをノックすると、急に扉が開いた。


「誰!……ってスイじゃないの!!」


 斑に赤の入った髪の艶やかな女性がスイを見ると、怒ったように目を吊り上がらせた表情から一転、嬉しそうな表情へ変わった。そして、跳び付くように女性がスイに抱き付いた。


 久し振りの再会の所為か随分と熱い抱擁が交わされていた。そんな傍らで、秘かにエルナは押しつぶされそうになっていた。


 うぐっ…ちょっ、もうちょっと、私が居ること考えてーー


 身動ぎ一つ満足に出来ない状態で待つ事、数分(実際はおそらく数秒)ゆっくりと二人は離れた。


「お久しぶりですね」

「ふっ、久しぶりだね」


 笑いあう二人。息苦しさを感じてはいたとはいえ、こんな状況で流石に文句は言えずにスイを見上げる。


 …スイ兄、嬉しそうだな


 仕方ない、その笑顔に免じてあげよ


 そう思って黙って見守っていたが、長引くと思っていた挨拶もそこそこで終わった。


「それで、この小さなお嬢さんは?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ