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幽霊のふりをした話

【キーワード】


①先輩

②イタズラ

③廃墟

④厨房

⑤ラーメン

⑥お盆

⑦写真

⑧リアクション

⑨幽霊

⑩ポルターガイスト











 いよいよ百話目ですね。

 長期戦でしたし、皆さん小腹が空いてきた頃じゃないですか?

 だから、ちょっぴり飯テロなこの話をさせてもらいますね。


 これは、私が同じサークルの【先輩】と一緒に体験した怖い話です。

 私が所属していたサークルには【イタズラ】好きな【先輩】がいました。

 その【先輩】の名前は……仮にRさんとしましょうか。

 Rさんと私はバイト先も同じということもあり、プライベートでも一緒に遊ぶような仲でした。

 当時の私たちがハマっていた遊びのひとつが、【廃墟】での【イタズラ】でした。

 私たちの地元には有名なホテルの【廃墟】があって、そこにはわざわざ遠くの県からも人がやってきます。

 しかし、ホテルが潰れた原因は運営会社の経営難でしたから、特にこれと言って怪現象が起こるわけではないのです。

 そこで、私たちがお化けの代わりになって肝試しに来た人たちを驚かせてやろうと思ったのです。


 Rさんが思いついたのはホテルの【厨房】に隠れてする【イタズラ】でした。

 そのホテルの食堂は二階の見晴らしがよくて、肝試し客の車が来るのを見張るのにはもってこいの場所です。

 私たちは外から見えにくい位置に食堂の椅子を運んできて雑談をしながら人を待つのです。

 そして、人がホテルの中に入ってきたら椅子を片付けて奥の【厨房】へ身を隠しました。

 窓のない【厨房】へ入ってからが本番で、そこからはRさんは職人のように動き始めるのです。

 キャンプ用の簡易コンロを使って小鍋にお湯を沸かし、どんぶりを準備して。手早く作るのはインスタントの【ラーメン】です。

 Rさんは肝試し客が食堂に辿り着くまでの時間を把握していて、それに合わせて【ラーメン】を作るんです。

 しかも、トッピングのチャーシューや煮卵を家で仕込んでくる徹底ぶりです。

 そうして出来上がった【ラーメン】をホテルに残っていた【お盆】に載せて、食堂のテーブルの目立つ位置に置くんです。

 あとは適当に割れたグラスと空のピッチャーを転がして準備完了。

 どんぶりと割り箸は新品なのに、他をホテルにあったものにするだけでリアリティが出るんだそうです。

 そして、仕事を終えたRさんは【厨房】へ引き返してきます。

 私とRさんはシンク下の収納だったり大型冷蔵庫の中だったり適当なところに隠れて人が来るのを待つんです。

 荒れ果てた【廃墟】の中でできたての【ラーメン】を見付けた人間がどういう【リアクション】を取るか知ってますか?

 悲鳴を上げて逃げ出す人、【写真】を撮る人、とりあえず食べてみる人。十人十色で面白いんですよ。

 で、食べた人はみんな口をそろえてこう言うんです。

「うまい!!」

 そのリアクションを聞くたび、Rさんはガッツポーズをしていました。

 ただ、この【イタズラ】何度もやり過ぎてしまいまいて。

 食べログに載っちゃったんです。

「非業の死を遂げた職人の【幽霊】が作る、至上の一杯」とか書かれちゃって。

 【写真】を見てもらえばわかると思うんですけど、普通のインスタント【ラーメン】なんですよ。

 廃ホテルの食堂っていう異質な空間で、肝試し中っていう異常な精神状態で食べるから慣れた味に強い安心感を覚えるんだと思うんですけど……。

 食べログに載ってから急激に肝試しに来る人が増えたから、私たちが見つかるリスクも当然増えました。

 で、そろそろ潮時かなぁってRさんと話していたんです。

 Rさんの卒論の時期も近付いていましたので、その年の八月十六日。【お盆】の最終日を私たちの【イタズラ】の最終日にしようということで決めました。


 時期的に夏休みと重なったせいもあるのか、その日は三組の肝試し客が間を開けずにやってきました。

 そんな時でもRさんが作る【ラーメン】は一杯だけ。

 Rさんの持っているどんぶりが一つだけっていうのが理由なんですけどね。

 Rさんはいつも通り職人のような手つきで【ラーメン】を作り、食堂に配膳してシンク下の収納に隠れました。

 私は肝試し客の【リアクション】を聞きたくて、【厨房】の出入り口から近い食器棚の中に隠れました。

 私たちが身を隠してすぐに賑やかな声が聞こえ、いつも通り「うまい!!」という言葉も聞こえます。

 その直後、恐れていたことが起きました。

「【厨房】に誰かいるんじゃね?」

 誰かが言い出して、足音がこちらに向かってきたんです。

 最後の最後に見つかるなんて嫌だ。そう思いながら息を殺すのがやっとでした。

 そんな時、【厨房】の奥から物が崩れる音が聞こえました。

「【ポルターガイスト】だ!」

 肝試し客の間抜けな声も聞こえます。

 それからしばらく、いろいろな音が聞こえていました。

 私は最後だからと【先輩】が【イタズラ】してるんじゃないかと思ったんです。あの人ならやりそうでしたから。

 私も全身を揺さぶって食器棚を揺らしました。

 それから間もなく、肝試し客の声は聞こえなくなりました。

 やれやれと思いながら食器棚から出ると、そこには真っ青な顔をしたRさんがいました。

 どうしたのか尋ねると、Rさん、【ポルターガイスト】の起きている間は怖くて縮こまっていたらしいんです。

 それを聞いて私も怖くなっちゃって。片付けも早々に二人で逃げ出してしまいました。

 あれからあの【廃墟】には行っていません。

 でも、先月の日付で食べログが更新されているんですよね。

 あのホテルに行けば【幽霊】が作った【ラーメン】が食べられる気がするんですが、どなたかこれから行ってみませんか?

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