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【TRPG】怪談白物語用 フリーシナリオ集  作者: 牧田紗矢乃


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11/11

嫁もらいの話

キーワード


①同級生

②雰囲気

③ブーケトス

④スタッフ

⑤無表情

⑥白無垢

⑦胴上げ

⑧おじさん

⑨あっという間

⑩記憶











 ここ最近、陽が沈むのが早くなってきましたね。

 暑かった気温もだんだんと落ち着いてきて、秋の気配も感じられます。

 こんな季節になると思い出す、そんな話を今宵の百話目として語らせていただきます。


 あれは、【同級生】の結婚式でのことでした。

 【同級生】同士での結婚ということもあってか、新郎側、新婦側ともに友人席には見知った顔が多くいました。

 そのせいで会場はちょっとした同窓会のような【雰囲気】になり、式が始まる前はあちらこちらに小さなグループがいくつも出来上がっていました。

 始まる前から賑やかだった式はつつがなく進行し、残るは【ブーケトス】のみとなりました。

 私自身は参加するつもりではありませんでしたが、やはり盛り上がるイベントですから楽しみな気持ちには変わりありません。

 周囲の女性陣も心なしかソワソワし始めています。

 その時です。

 司会進行をしていた【スタッフ】が、口を開きました。

「それでは皆さまお待ちかねの、『嫁もらい』のお時間です」

 一緒のテーブルに座っていた数人は顔を見合わせて首をかしげました。

 始めは【スタッフ】の言い間違えかなと思ったんです。

 ところが、男性陣の席から歓声が上がって一斉に人が動き始めたんですね。

 【ブーケトス】で女性たちが集まるように、浮かれた【雰囲気】の男性たちがステージの近くへ集まりました。

 そこへ、【白無垢】姿の一人の女性が【スタッフ】に連れられて登壇しました。

 【同級生】のA子です。

 いつもクラスの中心にいて常に騒がしかった彼女の姿からは想像もつかないくらい静かで【無表情】で、まるで人形のようで不気味でした。

 新郎がA子の上半身を、新婦がA子の足を抱えるような形で彼女を持ち上げると、司会の【スタッフ』が意気揚々と告げました。

「それでは、嫁もらいのお時間です」

 次の瞬間、A子の体は宙を舞い、男性たちの輪の中へ吸い込まれるように落ちていきます。

 無数の手がA子に向かい、まるで【胴上げ】でもされているかのようにA子の体は跳ねていました。

 時間が経つにつれて、A子の争奪戦に敗退した男性たちが少しずつ輪の中心から離れ始めます。

 そして、ようやく【胴上げ】のような動きも鎮まりA子は地に足を着いて立ち上がりました。

 もみくちゃにされたせいでセットされていた髪は乱れ、【白無垢】の着付けもめちゃくちゃになっていますが相変わらず人形のように静かで【無表情】です。

 争奪戦の生き残りもいよいよ二人になり、掴み合いのケンカのような【雰囲気】になっていました。

 その二人の顔を見た時、ハッとしたのです。

 二人とも私の【同級生】で、それぞれ時期こそ違いますがA子に片思いをしているという噂があった男子なのです。

 片方はガリ勉タイプの気が弱くて細身な男性、もう片方は背も高く筋肉質なガキ大将だった男性。

 二人がケンカをすれば、結果は火を見るより明らかです。

 皆が息を呑んで見守る横で、なにやら怪しげな動きをしている人物がいることに気が付きました。

 頭は禿げ上がり、スーツのベルトの上に肉が乗り上がるほど太った初老と言って差し支えのない年の【おじさん】です。

 【おじさん】は静かにA子に近付くと、彼女の腰に手を回して【あっという間】に抱え上げてしまいました。

 そこからは一瞬の出来事です。

 【おじさん】は私たちの制止をはねのけてA子を抱えたまま結婚式場を飛び出していきました。

「嫁泥棒だ」と誰かが言い出します。

 その話は【あっという間】に広がって、ガリ勉とガキ大将もケンカをやめました。

 騒然とする会場の中、司会の【スタッフ】だけが冷静に嫁もらいの終了を告げました。

 混乱のまま終了した結婚式は、私たちの【記憶】に強く残っています。


 ここからは後日聞いた話になります。

 A子を連れ去った【おじさん】は嫁もらいのある結婚式におよそ二年に一度現れて、女性を連れ去ってしまうため、「嫁泥棒」と呼ばれている人物だそうです。

 なぜこの話をしたのかと言いますと、私の【記憶】が確かであればA子が連れ去れてからもう少しで二年が経つのです。

 気になってあの時式に参列していた数人に連絡をしてみましたが、A子の安否を知っている人はいませんでした。

 果たして、A子は元気でいるのでしょうか。

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