天然
「こんにちはぁ」
つちださんの笑顔がまた、疲れとストレスをリセットしてくれた。
彼女は僕にとってオアシスの様な存在だ。
改めてそう思いながら、レジに向かう。
いつもの様にアメリカンドッグを注文しようとしたが、ホットスナックコーナーにそれはどうやらないらしかった。
「あっ、アメリカンドッグ揚げます?」
そう訊かれ、「お願いします」と答える。
「あっ、はぁい」
つちださんは背後のドアを開け、裏に入った。
何やら、笑い声が聞こえる。
つちださんが戻って来た。
「ごめんなさぁい、アメリカンドッグなかったですぅ」
つちださんは申し訳なさそうな笑みを浮かべながら言った。
可愛いな。彼女の少し天然な部分を見る事が出来、思わず口角が上がった。
代わりに肉まんを注文すると、つちださんはそれを僕に渡しながら「ごめんなさいねぇ」と再び言った。
可愛い。改めてそれを実感しながら、「いえいえ」と返す。
浴室を出て、レモンサワーを吞む。
水曜日という、折り返し地点を通過した。
あと、二日。息を吐く。
それから、レトルトカレーを盛り付け、テレビを点ける。
芸人のネタを、笑いながら判定する司会者。
UFOの映像に絶叫するタレント達。
難問を瞬時にクリアする東大生。
特に惹きつけられるチャンネルはなく、スマホでネットニュースを眺める。
アパレル店員に苦言。
嫌いな芸人を実名告白。
事務所を退所し、個人事務所を設立。
芸能人に因るSNSでの投稿やテレビ番組での発言を切り取ったものや、どうでもいい記事ばかりが並ぶ。
Huluを開く事にした。
何かいい映画やドラマはないだろうか。
画面をしばらくスクロールしていると、ずっと気になっていた映画の存在を思い出し、それを再生した。
期待外れだった。
設定は斬新で面白かったが、展開がイマイチに思えた。
途中から結末が読めた。そして、それを裏切ってはこなかった。
いわゆる実力派で主演クラスの俳優達が名を連ねており、彼等の演技力は申し分なかっただけに、残念だ。
話の展開や構成が、出演者の足を引っ張っている。完全に彼等の無駄遣いだ。
あえて続編がありそうな終わり方にしているのだろうが、それが公開されたとしても、恐らく観ないだろう。少なくとも、金を払って映画館で観に行く事はない。
口コミを見てみる、賛否両論だった。
称賛は設定の斬新さに触れている意見が殆どで、批評はやはり、展開についてのものが殆どだ。
出演者の俳優がカッコ良かったという理由だけで、星を五つに設定している連中がちらちら目立つが、大半が自分と同意見らしい。