抽選
「先生、そろそろさ、〝星付け〟は締め切っちゃっていいかな」
入社して早々、スマホを弄り出した渡仲以外の三人によるラジオ体操が終わると、釣井は言った。
「あっ、もうそんな時期だね。じゃあそろそろ、抽選始めましょうか」
ヤクルトの容器をごみ箱に捨てた参田は、十字に交差させた腕を伸ばして体を捻じりながら言った。
ラジオ体操後の追いストレッチらしい。
「この時期にね、プレゼントする子供と調査の順番を抽選で決めるの。プレゼント出来る子供の数には限りあるからね。用意出来るプレゼントの数だったり、あと、アタシ達、少数精鋭でやってるわけだし」
〝精鋭〟は関係ないし、自分で言うなよ。
それから釣井は、K-POPらしいグループの画像が表示されたパソコン上の〝抽選〟という名前のフォルダーをクリックし、星マークが三つ、二つ、一つのファイル名と並んだ〝施設利用者〟の文字をクリックして見せた。
すると、スロットの様な枠に囲われたゼロが七つ連なっているのが表示された。
「んで、ここをクリック」
釣井が下に表示されたスイッチのイラストをクリックすると、スロットが回転し始めた。
「すごいでしょ? これ、アタシが作ったの」
声だけでどや顔具合が分かるその言葉の後、枠内の数字は停まった。
そして、画面上はある子供のデータが表示された。
「このルーレットをやると、その番号の子がこうやって自動的に出てくるの。で、ここをクリックするの」
画面上部にある、〝ギフター候補に入れる〟という文字を囲う丸い枠をクリックした釣井は、そのページを閉じると、〝ギフター/ギフター候補〟という名前のフォルダーを開いた。
「で、ここにさっきの子が加わったってわけ」
釣井は星マークと並ぶ〝施設利用者〟という文字をクリックした。
すると画面上には、沢山の名前が並んだ。
「で、〝ギフター〟に確定したら、こう」
名前の一つにカーソルを合わせた釣井は、チェックボックスに印を付けた。
「あっ、〝ギフター〟っていうのはプレゼントする子供ってことね」
〝ギフター〟だと、ギフトを贈る側の意味になってしまっているじゃないか。
「じゃあ、手分けして抽選していくよ。とりあえず、アタシと汰駆郎君が施設の子で、先生と唯武樹が星三つの子ね」
「ほーい」と返事をした渡仲は、「じゃあ、やるか」と言いながら屈伸を始めた。
下半身は関係ないのではないだろうか。
それに今ストレッチをするのならラジオ体操をしておけば良かったじゃないか。
抽選を行っていく。
「てか、先に抽選して当たった子を星付けした方が効率良くない?」
釣井は僕の耳元で言った。
「って、思ったでしょ? 星三つの子と施設の子を優先する為と、二重チェックの意味でも先に星付けしてから抽選してるの」
「成程ねぇ」と渡仲が言う。
「知らなかったの、今まで。ずっと疑問を持たずにやってたの?」
「まぁね」と、渡仲は他人事の様に返すと、コーラを飲んだ。
「てか、最近ホント、子供達の情報収集にちょっと苦労してんだよねぇ」
「情報収集……?」
僕は釣井の呟きに返した。
「あれ、言ってなかったっけ? 子供達のデータはアタシがネットワークを駆使して、かなり特殊なルートで入手してるの。でも、今はセキュリティの時代だからさぁ、どんどんそれが難しくなってってるんだよねぇ。まぁ、アタシにかかれば朝飯前だけど。てか、二度寝前?」
「ハッカーだもんな」
そう言ってコーラを飲む渡仲に「ひっと聞きの悪い」と、釣井は吐き捨てる。




