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ホーリー☆ナイト! ー新人サンタクロースの奮闘記ー  作者: 走井 響記 (Hashii Hibiki)
修行編
40/85

妨害

 「あっ、そうだ、BGM」

師匠は音楽を大音量で再生させたスマホを柵に置いた。

クラブで掛かっていそうな、聞いた事のない曲だ。

改めて息を吐き、フラフープを思い浮かべる。

音楽がうるさいな……。

ハイテンションな曲が、僕の集中力を削いでいく。

一分。二分。三分。

必死に、フラフープを思い浮かべ続ける。

曲が終わったらしく、甲高い英語から始まった女のそれに切り替わって間もなく、体がすとんと落ちた。


 「はい、六つ目クリアァ! 次ぃ!」

音楽に遮られない様、必死でフラフープを思い浮かべる。

師匠は、僕の集中力を鍛える為に敢えて音楽を、しかも大音量で流しているのだろうか。


 「オッケー! 七つ目ぇ!」

ギャルがパラパラを踊る際に使いそうな曲が始まって間もなく、師匠は言った。

テレポーテーションに成功したらしい。

それから何となく聞き覚えのある二曲が終わり、レゲエと思しい曲の二番のサビと思しい部分で、体がすとんと落ちた。


 「はい、あと二つぅ!」

息を吐く。

TikTokの音源によく使用されている三曲が連続して掛かり、その終盤辺りで、テレポーテーションに成功した。


 「はいぃ! ラスイチィ!」

柵の手前に置かれたフラフープを思い浮かべる。

聞いた事のない歌声の、聞いた事のない曲が流れている。それに負けない様、精一杯集中する。


 「最後まで気ぃ抜くなよ」

バラード調に紛れた衝撃的な単語が、数回耳に入った。職場でも歌でも未だかつて聞いた事のないストレートな下ネタであるそれは、やはり聞き間違いではなかったらしい。

その後も様々な下ネタが飛び出す。何て過激な歌詞なんだ。

いや、そんな事より、集中しなくては。フラフープを、必死に思い浮かべる。

野球に例えるなら豪速球レベルの下ネタが、僕の集中を妨げる。


 長年〝一発屋バンド〟と揶揄されてきたバンドが今年リリースした十数年越しのヒット曲。

今年の春に公開され、泣けると話題らしい映画の主題歌。

全く聴いた事がないが、どことなく不快な印象を受ける曲。

訳の分からない同じフレーズを延々と繰り返すラップ。

インフルエンサーが投稿した〝歌ってみた動画〟がきっかけで本家が知れ渡ったらしい曲。

次々と、曲が変わっていく。

懸命に、最後のフラフープを思い浮かべる。

そして、男のソロシンガーがカバーした八十年代のヒット曲が始まって間もなく、体がすとんと落ちた。


 「はい、一周クリアァ! よし、丁度昼だし、この辺にすっか」

師匠の号令で、今日の修行はお開きとなった。


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