異世界転移した先は、剣と魔法のラノベ(執筆中)の世界!?
第1話
「お! やっと更新来た! 今週の『ジューシー☆カキフライ戦記』、どんな展開になってるのかマジ楽しみだ!」
会社からの帰り道、俺はスマホ片手にはしゃいでいた。
今開いているサイトは、最近一部で流行っている、小説の投稿サイトだ。
俺は先日、なんとなくそのサイトを見つけて暇つぶしに見ていたら、いつの間にかすっかりと、どっぷりと、ハマってしまっていた。
今や、時間があれば、手当たり次第にいろんな作品を読みふけってしまっている。
そのなかでも最近一番注目しているのがこの作品。
『ジューシー☆カキフライ戦記』
主人公は、大好物であるカキフライを食べた直後に猛烈な腹痛に見舞われ、意識を失い、気づいたら異世界にいたという導入から始まる、異世界転移の冒険ものだ。
ちなみに、タイトルにもあるカキフライが一話目以降一切出てこない事に関しては、今や何も違和感を感じない程には、俺もこのサイトに毒されている。
「いいな。俺もこういうの書いて見たいな」
だが、見るのとやるのとでは大違いだ。
実は一度、このサイトに感化されて、調子に乗って小説のようなものを書いた事がある。
だが、書き終わった翌日にそれを読み返して見ると、小学生の絵日記の方がまだマシに思える程に、酷いものが出来上がっていた。
その日以来、俺は読む専門となり、作品へのコメントもいつにも増して、気遣う様に、そして言葉を選ぶ様になった。
しかし、このサイトは凄い。
どんなに読んでも全然減らない。
あんなにも毎日、何時間も読んでいるのに、毎日毎日、新しい作品がどんどんと生まれて来ている。
面白い作品もあれば、つまらない作品もある。
時には、俺といい勝負をしそうな程に酷い作品と出会う事もあるが、俺はその作者のハートの強さに称賛を与えたい。
「がんばれ」
そして俺は、そっと閉じる。
さて、そんな俺だが、最近よくラノベの夢を見るようになった。
ラノベの夢というか、異世界の夢だ。
かなり末期だな。俺。
俺がこのサイトで特に好んで読んでいるのが異世界転生・転移ものだ。
他のジャンルも読むが、やはり好きなのはこのジャンルだ。
その中でも特に、ゲームの中の世界に転生・転移する系の物語が大好物だ。
多分、オンラインゲームにどっぷりハマったことのある人なら、『この世界の住人になってみたい』と、必ず一度は思ったことがあるはずだ。
もちろん、俺もそのうちの一人だ。
今ではかつてのようにガッツリとプレイする事もなくなり、時々気が向けばインをする程度。
廃プレイヤーとして某掲示板にキャラを晒されていた頃のようなあの情熱は、今はもうない。
というか、あれは若いから出来たことだ。あんな体力や気力はもうない。
それに、今はラノベやこのサイトにすっかりハマっているので、オンラインゲームにはここ長い間、インすらしていない。
「それじゃ、今日は帰ってカキフライ戦記を読んだら、それ系の作品を発掘してみよう」
◇
「お、これってもしかして!?」
俺は帰宅後、今週の『ジューシー☆カキフライ戦記』を読み終えたあと、俺の大好物ジャンルの作品を発掘する作業に移り、一つの興味深い作品を見つけた。
それは、俺にとって運命的とも言える内容の作品だった。
「この舞台になっているゲームの世界って、どう見てもあの
【グランドファンタジーオンライン】
だよな?」
俺の見つけたその作品のタイトルは、【グレイトファンタジーオンライン】。
ネタ元を隠す気が一切ない感じが一周回って清々しい。逆に好感が持てる。
内容としては、主人公がオンラインゲームをしていると、部屋が突然停電になり、ワタワタとしているとパソコンだけが再起動し、勝手にそのゲームが立ち上がったと思ったら、気づけばそのゲームの中に入り込んでいた。というプロローグから始まるお馴染みのゲーム世界転移ものだ。
何話か読み進めていると、その転移した先のゲームの設定や仕様が、まんま【グランドファンタジーオンライン】と同じだった。
地名や敵の名前も、どこか一文字を変えたり入れ替えたりするだけで、まるっきりほぼそのまんまで登場している。
「これは逆に新鮮だな。グラファン経験者ならわりと楽しめるんじゃないかこれ」
興味を持った俺は、この作品の詳細ページを覗いてみることにした。
その詳細ページによると、作者の名前は影宮キリト。
この時点でだいぶ嫌な予感しかしないが、読み進める。
物語はまだ五話分しかないようで、割と最近の作品のようだ。
更新は週に一回程度。どうやら書き溜めはしていないらしい。
ただ、一話あたりのボリュームが結構あるので、設定の説明とかでダラダラとしてさえいなければそこそこ話は進んでそうだ。
ちなみに、三話まで読んだ限りでは、主人公が転移したあと何も動きは無く、ひたすら説明回だったので、残り二話に期待したい。
しかし、予想外にも、この作品は作者にとって通算八つ目の作品になるらしく、物書きとしてはなかなか年季が入っているようだ。
しかも、他の7作品はちゃんと完結しているようで、これは意外と期待ができるかもしれない。
「ほおー、これはちょっと今後追いかけないといけないかもな。とりま、ブクマ」
とりあえず、ブックマークをした俺は、一旦風呂に入ってから、自室のパソコンでゆっくりと、未読の残り二話を読む事にした。
「まさか二話とも説明回の続きだったとは……」
しかし設定はかなりしっかりしていた。
そりゃ、ゲームの設定そのまんまなんだから、しっかりしてないわけがないんだが。
「でもこうして改めてみると、あのゲームもかなりしっかりと作られてたんだな。まあ、廃プレイするくらいにハマったゲームなんだから当然か」
そう独りごちながら、俺はパソコンのマウスを動かし、【グランドファンタジーオンライン】のゲーム起動アイコンにカーソルを合わせる。
カチカチッと二回、音が聞こえると共に、モニターには懐かしいゲームのオープニング画面が映し出されていた。
「うん、やっぱいいね。この雰囲気、この世界観。俺も異世界転移するなら、こんなところがいいね」
俺は画面の真ん中のログインボタンにカーソルを合わせ、カチッとする。
————バン!!!
「え?!」
突然、大きな音がした。
その瞬間、全ての明かりが消え、部屋は真っ暗になっていた。
突然の暗闇に襲われた俺は、少し気を動転させながらも辺りを見回し、部屋中のすべての電化製品の電源が落ちていることに気がついた。
「停電?」
その瞬間、暗闇の中でパソコンだけが起動を始め、モニターには【グランドファンタジーオンライン】のログイン画面が表示されていた。
「え? な、なにこれ?」
俺は狼狽したままなにも出来ず、画面をじっと見つめていると、カーソルが勝手に動き出し、ログインボタンの上でピタッと止まった。
「え、ちょ、ちょっとまて! ちょっ——」
カチッ
——
——ログインします。
——パスワードの認証開始。
——……承認。
——ログイン完了。
——ようこそ、ヴァンディールの世界へ。
◇
「————ん? あれ?」
俺は気付くと一風変わった場所にいた。
明らかに先ほどまでの自室ではない。
しかし、この景色には見覚えがある。
「ここ、【グラファン】の中だな」
そう、ここは俺のよく知るゲーム【グランドファンタジーオンライン】の中の世界だった。
しかし俺は焦ることもなく、至って冷静に状況を把握する。
今更、異世界転移なんて、驚く程の事でもない。
そんな夢は、今まで散々と見てきたのだ。
しかし、今回はいつもとは少しばかり様子が違っていた。
まず、これが夢だと夢の中で自覚している。
俺は生まれてこのかた、夢の中でそれが夢だと認識した経験がないので、とても不思議な感じだ。
そして、あらゆるものがやけにリアルだ。
触れるものの肌触りはもちろん、それらの硬さや温度、体に感じる風や空気の冷たさ。さらには風に乗ってやって来る匂いまで感じられるようになっている。
まるで現実そのものだ。
しかし、これは夢だ。
だが、凄い夢だ。
俺の夢想レベルはここまで来たのか。
俺は気を取り直してステータス画面を開く。
俺のよく知る、俺のキャラのステータスだ。
相変わらずの廃装備。能力パラメータもなかなか素敵におかしな事になっている。
よくもまあ、こんなになるまでやり込んだものだ。
次に、マップを開く。
やはり俺のよく知る街の地図だ。
「……いや、ん?」
俺は、見慣れたはずのこの地図に、どこか違和感を感じる。
「何かが違うような……あっ」
俺は気づいてしまった。
街や、通りの名前、店の名前や建物の名前、各所の施設の名前や、よく見れば装備欄の一部の装備の名称も、俺の知るそれとは少しだけ、正確に言えば、一文字くらい違っていた。
「これって……」
俺は瞬時に理解した。
「これ、影宮キリトくんの方のやつだ」
悪ノリと勢いだけで書いてみました。
続きは執筆予定ないです。ってか、書く自信ないです。
よければメイン執筆中の「赤猫の鍛冶師」を読んでもらえると嬉しいです!!
コチラ→ https://ncode.syosetu.com/n4934hj/