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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第七章.暴かれた効用

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89.閑話、シュバルツ視点〈後編〉

 多少の打撃は、与えたらしい。竜の足はヒレだけだ。元々、地上では機敏に動くことはできないのだろうが、それにしても、竜の動きが鈍っていた。俺の足でも魔法なしで引き離すことができた。あと2日、寝ずに逃げ切ってやる。

 出口に魔力を放ってみたが、突き抜けることはできなかった。やはり足で逃げ切らねばならないのか。2日も隠れられる場所はあるだろうか。



 途方に暮れていたら、出口から大量の水が噴き出てきた。圧倒的水量に押し流される。なんとかシャルルだけは守り切ったが、背中を打った。骨は無事で良かったが、またずぶ濡れだ。もうなんなんだ!


 出口に、お母さんが立っていた。水を突き抜けてきたハズなのに、少しも濡れていない。

「お母さん、竜に阻まれて帰れなくて困っている。竜を倒してくれないか」

「ルルーは、無事?」

「今は魔力切れで意識をなくしているだけだが、早く帰らねば、どうなるか知らんぞ」

「竜は、どこ?」

 視線を向けただけで、お母さんは、もう消えていた。


 歩いてついて行ったら、竜がなますにされていた。なんとか倒すどころか、いたぶる余裕があるらしい。

「お母さん、できたら殺さないでくれ。それは、シャルルの育ての親かもしれない」

「それは、もう手遅れかもしれないな」

「シャルルの薬で、傷をふさいでくれないか。血は魔法で回復させよう。ヒレがなくなるのは諦める。とりあえず、死ななければ良い」

「わかった」


 2人がかりで、竜の傷の治療をした。折角の機会なので、実験的治療を試みたら、ヒレは2つくっついた。あまりいい成功率ではなかった。残念だ。

「おい、竜、何か言いたいことはあるか?」

「其が」

 竜が話し始めたところで、お母さんが、竜を刺した。

「竜を殺すな、と言っただろう。お母さんも、記憶障害なのか」

 氏より育ちと、シャルルが言っていたが、そんなところは似なくていい。その理論でいけば、俺も記憶障害か。そんなものは、いらん。

「あなたが殺されるよ」

「せめて身体を刺せ。首はやめろ。死ぬ。竜もいい加減にしろ。お母さんを止めてる俺を殺して、何をしたい」

 あまり近寄りたくはなかったが、剣を抜いて、竜の首に薬を塗った。シャルルの薬は、竜にも効いた。本人にそっくりな出鱈目な薬だ。こんな物に囲まれているから、ああいう人間になってしまったのか。

「シュバルツは、どうしたいんだ?」

「ドラゴンの心臓を貰って帰りたい。シャルルの強化に必要だ。これは迂闊に殺すと、社会の理を壊す。シャルルを龍にしないといけなくなる。俺では代われない。龍にすると、何を始めるか、わからない。できたら、殺さないでくれ」

「ドラゴンの心臓?」

「見た目は、拳大の宝石だ。水龍の心臓は天色。龍の魔力の結晶で、持っていれば無魔力、無詠唱で魔法が使えるようになる。怠け者を魔法使いにするのに必要だ。お母さんももらえばいい。もしかしたら、魔法使いになれるかもしれないぞ」

「お揃いはいいね。出せ」

 お母さんは、また竜に剣を刺した。

 シャルル曰く、とても優しい甘やかしのひどいお母さんとのことだったが、どこがだ。シャルルは、人を見る目もないのが、よくわかった。



 結局、竜から30個ほど心臓を奪って、帰ることになった。簡単には手に入らない物のハズなのに、お母さんの所為で、有難味も何もなかった。

 結界が解かれ、通過できるようになったが、お母さんの手にかかれば、水に濡れることなく、脱出することができた。水を剣圧で退けて、ジャンプで飛び出たら、水面を走って岸に戻った。

 濡れずに出入りした方法はわかったが、意味がわからなかった。

 結界がある状態でも、力一杯剣を振り抜いたら通れたという。他のみんなは、気合いが足りないから通れないんだ、と言った。来てくれて助かったが、納得がいかない。気合いだけでいいなら、俺だって通れた。追い詰められた状態で、気合いが足りないなどあるものか。絶対に嘘だ。


 今日は、疲れたし、シャルルを休ませなければならないので、議論は諦めて帰ることにした。魚は鳥頭に任せて、シャルルを持って帰った。

 ずぶ濡れのまま結構な時間を過ごしたが、シャルルに体調の変化は見られなかった。シャルルを丸洗いして、乾かして、布団に寝かせて帰った。

 1つあれば良かった心臓が、ゴロゴロ手に入った。使い道や、保管方法を検討しなければ。また、お母さんへの礼も考えねばならない。お母さんなら、味噌が適当か。どうせシャルルに増産を頼まれる物だ。面倒だが、また味噌を作るか。



 味噌を作って持って行ったら、喜んでいた。そこまでは良かった。想像通りだった。

 だが、試作の味噌汁の量が、尋常ではなかった。その上、クソ不味い。もったいないが、1人で食い切れる量じゃなかった。俺が食べ切れない量を、シャルルが食べる訳がない。流石、シャルルの母親なだけあって、とんでもない考えなしだった。

 シャルルに料理を教えたのは、お母さんだと思っていたが、違ったようだ。飯を食わせてくれる人だと言ってなかったか? 産んでもいないし、飯は作れないし、竜は刻むし、お母さんの定義とは何だ。

次回は、魚を塩焼きに。

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