87.お姉ちゃん力 vs お父さん力
「お前な、キスだぞ? 嫌じゃないのか? もう少し考えて発言しろよ」
「そうだね。気軽にしていいことじゃないよね。姉として、注意しないといけないね」
姉として、というのが、重要だ。知らない間に育って、シャルルよりも那砂よりも年上になってしまったシュバルツの姉として君臨し続けるためには、もっとしっかりとしたところを見せないといけない。
「シュバルツ。キスは、気軽にしていい物じゃないんだよ。2人とも、ずぶ濡れになったばかりでしょ? 風邪ひいてキスすると、うつるんだよ。シュバルツは、若さで即刻治るかもしれないけどさ、お姉ちゃんは、いつまでも治んないからね。15すぎた辺りから、マジ辛いんだよ。うつしたら、本気で怒るから!」
「「違う!」」
「くくっ。わかった。うつしたら責任をもって、薬を提供しよう」
折角、誰もが納得できるわかりやすい説教を思いついたのに、まだ納得してくれないらしい。キーリーめんどくさい。私のことなんだから、どうでもいいじゃんね。
「なんで、それだ。これは弟じゃないと何度言ったら、わかる?」
「キーリーこそ、私の事情を知ってて、なんでわかんないかな? 私にとっては、ジョエルもシュバルツも赤の他人だよ。だけどさ、シャルルにとっては、キーリーは大切なお父さんだし、先生はただの変態なんだよ」
「ただの変態、、、」
「キーリーが一緒に寝るのはダメだって言うから、それはやめたじゃん。ジョエル以下の男も見つけて来ないよ。言う通りにしてるじゃん。何が不満なの? こっちの常識なんて、知らないよ」
たまたま私が彼氏を欲していないだけなのだが、物は言いようだ。確か、キーリーの要望は、男を作ってチームから抜け出さず、荷物運びを頑張れというものだったよね。働いているかどうかは自信がないが、男を作らないというのは、全力で賛同できるよ!
「お前の常識を聞いてるんだよ」
「弟に、お腹いっぱいご飯を食べさせたい。妹の笑顔を見たい。それ以外なんて、どうでもいいよ。それすら満足にできてなかったんだから」
学業もバイトも家事も、全部弟妹のためになると信じてやっていたことだった。自分1人なら、適当で良かった。何もいらなかった。
「今は、こっちにいるのよ。ルルーの幸せは?」
「シャルルが、私の夢を叶えてくれたの。だから私は、ジョエルとキーリーの役に立ちたい。ジョエルがダメって言うなら、もうキスもしない。気をつける。ごめんなさい」
「ルルー、違うのよ」
「シャルルに義理立てする必要はない。俺たちは、シャルルの役に立っていなかった。好かれてもいなかった。お前の勘違いだ」
怒り顔が、苦々しい顔に変わってしまった。言ってはいけないことを突いてしまったか。
「そんなことないよ。大好きだったよ。証拠は出せないけど、私が保証する。この世界が嫌いだっただけで、ジョエルとキーリーのことは、大好きだった。キーリーに嫌なことを言ったとしたら、それはただの甘えだよ。よくあることだよ。時間をあけたらまた仲良くなれたのに、私が戻りたくないって、仲直りの機会を奪っちゃったんだね」
弟妹のことを思って頑張ってる時に、逆ギレされると、すごい切なくなるんだよね。わかるわかる。でも、よくよく話すと、納得できる何かがあったりするんだよ。どっちかが悪いとかじゃなくてね。低年齢でも、高年齢でも、あるあるだ。外じゃやらないんだから、お姉ちゃんに甘えているだけなのだ。
「ちがっ」
「お姉ちゃんには、わかるのですよ。キーリーのお父さん力は、まだまだですな。パワーアップさせてやろう」
私は、浮遊魔法を使って、キーリーにキスをした。
「な゛っ、おまっ、バカか!」
「しないって、言ったのに!」
「ふふふふふ。さあ、キーリー、魔法を使って、シャルルに会いに行っておいで!」
私には使えない魔法も、私じゃなければ使えるだろう。キーリーは、精霊の嫉妬は関係ない。
「行けるか!」
「シャルルの魔力を受け取れるのは、多分、クロだけだぞ。実験するのは、悪いことではないが」
「わたしも、実験する!」
「気合いで結界を突破する人は、被験者に向いてないよ」
「そうだな。お母さんが被験者になれるのは、女になる薬くらいだな。飲むか?」
禁断の薬が、グラスに並々と注がれた。
《おまけ》
「シュバルツ、ジョエルが猪鍋作ったんだって。食べて」
今日は、ジョエルに食べさせちゃえ作戦は、使えない。ごはんを捨てられない友の会NO.2のシュバルツの出番だ!
「いらん。昨日も一昨日も食べた。今日は、シャルルが食べたらいい」
「え? 食べたの?」
今日、初めて作った雰囲気を醸し出しておいて、毎日作ってやがったのかよ! あれで上達した後だったとは、恐ろしい。シュバルツの目に止まってアレは、ヤバくない?
「捨てるのは、もったいないだろう。城の俺に食わしてやりたい」
「わかる! わかるけどさ、あの味は放置なの?」
博士の監修を受けてあの味だとしたら、私が修正できる気がしないんだけど。料理に目覚めたジョエルをどう扱ったらいいの?
「猪鍋なんぞ、俺だけが作れればいい」
「え?」
「知りたければ、対価を払うべきだ」
「私は、無償で教えてるよ」
無償で教わったものにまで、対価を求めて教えるの?
「それは、シャルルの勝手だ。だが、俺は可能な限り、対価を支払っているつもりだ」
!! ただの親切だと思っていたアレやコレは、私に何かを教えてもらった対価だったのか。
「ごめんなさい。気付いていませんでした!」
くっつけるのが面倒になって、変なおまけ付き。
みっともないですね。
次回、閑話で竜戦をちゃんと? 書きます。




