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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第七章.暴かれた効用

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86.電池

「ルルー、シャルルー」

 いつものジョエルの声で、いつもの宿の部屋で目覚める。良かった。帰って来れた。

「おはよう。ジョエル。シュバルツも無事?」

「おはよう。あっちも無事よ。会いに行く?」

 ちゃんと目覚めたのに、まだジョエルは心配顔だ。やっぱりお母さんだ。

「うううん。無事ならいいよ。おなか減ったし、ごはん食べたい。食べながら、あの後の話を聞いてもいい?」

「今日辺り起きると思って、猪鍋用意したの。食べてね。毎日、作るから」

 いつものキラキラ笑顔になった。ジョエルも本調子のようだ。良かったよかった。


 自分で歩くと言ったのに、抱き上げられて食堂まで連れて行かれた。こんな生活をしてるから、いつまでも靴ひとつ履けるようにならないんだよ。今日くらいとか言って、毎日甘やかすのは、やめて欲しい。根が怠け者なので、逆らいきれない。

「はい。召しあがれ」

「え? ジョエルが作ったの? ダコタさんじゃなくて?」

「味噌汁を作れるようになりたかったの」

 ジョエルは、今までで最大級のキラキラを発している。急に料理に目覚めたらしい。初めて人に食べさせるドキドキわくわくはわかるんだけど、数日ぶりのごはんで肉山盛りだったり、熱視線を浴びさせられたり、超食べづらいよ! 何の罰ゲームだよ。


「そうなんだ。いただきます」

 食べてね、また、あーって思ったよ。初めてお手伝いで作った弟妹ごはん系だって。味噌溶けば味噌汁でしょ? みたいな味。出汁の素どころか、昆布も鰹節もないのに出汁を取れって言うのは、難しいのはわかる。だけど、シュバルツ宅に置いてある煮干しの存在に気付いて欲しかった! シュバルツは無事だったなら、何をしてるんだ。味噌を使ってるんだから、絶対、気付いてるだろ。なんで放置してるんだ。私への嫌がらせか?

 これを作ったのが、波久部か鈴白なら笑顔で食べるよ。だけど、ジョエルなんだよ。なんでジョエルだ。意味わかんないよ。

「あの日は、酒飲んだテンションで猪鍋作っちゃったんだけどさ。朝は、もう少し大人しめの味噌汁がいいな。今度、作り方教えるね」

 実際のところ、骨付き肉が山積みに盛られてるジョエルの味噌汁は、味噌汁の範疇に収まっているかどうかから、検討の余地があるのだが、期待に満ち満ちた顔を見たら、ツッコめなかった。

 私好みの味噌汁を叩きこめば、被害は鎮静するだろう。私の平穏のために、覚えてもらおう。今日だけならまだしも、毎日は嫌だ。



「ドラゴン、怒ってたよ」

「私の所為じゃないよ。シュバルツが、断りもなくレプリカを投げたんだよ」

 海の雫は、宝石にしては大きいなー、と思っていたのだけど、あれはドラゴンの魔力の結晶なんだって。ドラゴンの心臓と言って、気に入った人間を見つけると分けてくれるんだけど、元々もらった人以外に渡ると回収されるんだそうだ。回収されるだけなら良かったんだけど、渡した相手以外が持ってるなんて、気に入らないから殺されそうになってたんだって。そんなん、知らないよ。誰だよ、もらってきた人め!

「それを持ってたら、魔法が使えるようになるって言うから、殺さずに放置してきたのだけど、やっぱり殺してきた方が、良かったかしら?」

 私は、ドラゴンを倒せなかった。それなりに手傷を負わせることには成功したのだけど、結界の解除には至らなかった。立ち往生するシュバルツを救ったのは、ジョエルだそうだ。気合いで結界を抜けたらしい。気合いって何だ。絶対、嘘だ。気合いだけでどうにかなるなら、私だって、もう少しどうにかできたわ。

 だけど、ジョエルが来てしまえば、もう終わる。ドラゴンを成敗して、帰ってきたんだって。

「助けてくれて、ありがとう」

「ルルーに変な物をあげた、わたしたちの所為とも言えるのよ。怖い思いをさせて、ごめんなさいね」

「でも、そんな事情なら、心臓? 返してあげた方が良くない?」

「いいのよ。ルルーを傷付けた詫びにもらっておけば。わたしも1つもらったもの。それほど大した物じゃないのよ」

「そうなの? その程度の物なら、いいのかな?」



 ジョエルと話していたら、みんながゾロゾロ集まってきた。私は、たまたま起きたところだけど、ごはん時だったのかな?

「起きたか。どうだ? 具合は」

 キーリーが前の席に座って、お酒を飲み出した。仕事終わりの麦酒だ。羨ましい。

「シュバルツオートでケガしなかったから、いつも通りだよ。あれ? そういえば、ずぶ濡れになってた割には、気持ち悪くないな」

 服は、あの日のまま同じ服を着てるようだけど、濡れたまま寝てたんじゃないよね?

「俺が、洗っておいたからな」

「「!!」」「そうなんだ。ありがとう、シュバルツ」

「おま、、、ありがとうでいいのか?!」

 お父さんの顔が怖い。私に怒ってるのか、シュバルツに怒ってるのか知らないが、酔っ払いウザい。

「心配するな。ただの洗浄魔法だ」

「だよね」

 一回脱がせて洗ったんなら、服を洗って乾かして同じ服を着せるなんて、非効率だ。私なら、別の服を着せる。私の着替えは全部私が持ってるから、替えの服がないのだけど、誰かの服を適当に着せとけば、それでいいよね。 シュバルツの方が大きいんだから、シュバルツの服を着せることはできるじゃないか。

 お父さんは、いちいち心配しすぎなんだよ。脱がして洗ったんだとしても、状況的に怒らないよ。

「ありがとうなら、礼をもらってもいいな?」

「え? 何でも博士にお礼? 私に用意できる物にしてね」

 シュバルツが悪い顔をしている。絶対にロクなことを考えていない。倫理的に問題があることと、銅像的な変な物だったら、断固として断らなければならない。

「できない要求をするなど、無駄なことはしない」

 シュバルツが私にキスをして、ジョエルが剣を抜いた。デジャヴ!

「HAHAHAHAHA。ヘタレ男め、やっかみか。情けないな」

「絶対、許さない!」

 私もシュバルツに抱えられて、巻き込まれている。シュバルツのオート回避魔法は優秀かもしれないが、避けるのが紙一重なので、スリルがたまらない。涙が止まらない。楽しんでいるのは、男2人だけだ。いちいち私を巻き込むな。そして、店が壊れる、外へ行け!


「ジョエル! 味噌汁がこぼれた!!」

 なんとか白目をむく前に、ジョエルを止めることに成功したが、私ももう瀕死だ。2度とないように、釘を刺さねばなるまい。

「シュバルツ。ジョエルをからかって遊ぶのに、いちいち私を巻き込むのはやめてね」

「お母さんをからかう趣味はない。ただキスがしたかっただけだ」

 わかってはいたが、シュバルツは、まったく反省のそぶりを見せなかった。本当に、可愛くなくなった。

「弟がキス魔だったなんて、そっちの方が、お姉ちゃんガッカリだよ!」

「1番手軽な栄養補給だ。他の女じゃダメなんだ。一緒に寝るのを否定された今、最も効率的な方法だ」

「栄養?」

「俺は、本来、魔法を使えない。無断で、シャルルから魔力を分けてもらっているんだ」

 しれっと言ってるけど、爆弾発言ではなかろうか。

「は?」

「シャルルは、特別なクロだと言っただろう? 俺には、なくてはならない存在だ。シャルルを横に転がしておけば、俺は無敵だ」

 シュバルツは、イイ笑顔だ。私を姉でも妹でもなく、電池扱いするなど、いい度胸じゃないか。

「だから、私を巻き込むのか」

「そうだ。抱えていれば、俺は魔力切れが起きない。シャルルも、俺への魔力供給くらい負担もないだろう?」

「まったく気付いてなかったからね。本当の話なの?」

「元々、魔法なんて使えなかったんだ。使えたら、あんな城で暮らしてなかった。シャルルに出会って使えるようになったが、シャルルに会わなければ残量が減るばかりだ。シャルルの所為だと気付いた」

「一緒に寝るか、キスするかしかないの?」

「日中、ずっと手を繋いでてくれてもいいが、ウザいだろう?」

「それは、ウザいね。あり得ないね」

 毎日行動制限がかかるなら、味噌も醤油も必要ない。面倒くさ過ぎる。シュバルツが、同じ判断基準の人で良かった。

「お前ら、おかしいだろう。どういう選択基準だ」

「じゃあ、キーリーは、毎日ジョエルと一緒に寝るのと、時々キスするのと、毎日手を繋いで過ごすのだったら、どれを選ぶの?」

「どれも嫌だ! 魔力を渡さない選択肢もあるだろう」

「無理だよ。1番便利に使ってるのは、私なんだよ。シュバ衛門のいない日常なんて、もう考えられないよ」

「そうなるように、甘やかしたからな」

 わかりやすい悪い顔をしているのに、逆らえないのだ。基本、私にプラスな提案をしてくるのだから、逆らう意味もないのだが。

「ズルズル罠にかかってるんだよ」

「そこまでわかってるなら、自力で抜け出せるだろう?」

「次は、何を作ってやろうかな。魔力が足りないと作れないな」

「くぅっ。握手して下さい」

「しょうがない。手を繋いでやろう」

「お嬢さん、どうしてだ!」

もう少しこの雑談が続きます

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