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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第七章.暴かれた効用

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84.囲炉裏を満喫しよう

 シュバ衛門との生活は、最高だった。お風呂の蛇口がMAXだと思っていたが、まだまだ先があった。

 まず、創薬が簡単になった。ミキサーを作ってくれたのだ。材料入れて、スイッチポンで薬がほぼ出来上がってしまうのだ。私の仕事は、ほぼなくなったと言っても過言ではない。魔力がないと動かせないので、村人Dに使ってもらえないのは残念だが、供給過多にして、値下げする気もないので、問題ない。面倒なミキサーの洗浄は、村人Dでもできるから、このままでいい。


 次に取り組んだのは、味噌と醤油作りだ。

 味噌は、小学4年生の夏休みの宿題で作ったことがあった。醤油は、無料の工場見学に行ったことがある。弟妹に、何を聞かれてもスマートに答えることができるように、予習して行ったのだ。誰にも質問してもらえなかったが、今でも作り方は覚えている。

 だが、覚えていると言っても、温度管理とかめちゃくちゃ大変じゃん? そこまでして醤油なんていらないよ! と思っていたところに、シュバルツの登場だ。シュバルツに温度管理をさせて、先生に時間をいじってもらえば良い。シュバルツと先生の魔法二重詠唱で、1時間もしないで出来上がったよ!



「ふふふふふ。君たち、とうとう出来上がってしまいましたよー」

 私は、朝から風呂に入って、酒を飲んで出来上がっていた。所謂、いいご身分というヤツだ。でも、ちゃんと自分で働いた金で飲み食いできるようになったのだ。たまには、いいよね。

「今度は何やってんだ。臭くないか?」

 失礼なことを言いながら、部屋に入ってきたのは、キーリーだ。

「私は、謎豆を手に入れて、味噌を作ってやりやがったんだよ。囲炉裏で猪鍋だよ。ヤバくね?」

 囲炉裏の自在鉤に吊るした鍋で猪鍋を作って、灰に徳利埋めて熱燗を楽しんでいる。日本酒がなくて、中身はワインなのだが、絵面がイイ。日本昔話だよ。

「ヤバいのは、お前だ。ふらふらして火に近付くな。もう寝ろよ。誰だよ、酒飲ませたヤツは!」

「俺だ。大人をバカにするな、と主張するから飲ませてみたが、子ども以下だな」

 酒をちょっと舐めただけなのに、ずっとシュバルツに蔑むような視線を浴びせられていた。ちょっとくらいいいじゃんか!

「私は、大人だ!」

「大人が、弟から酒を巻き上げるのか」

「シュバルツおにーいちゃん」

 ちっ。今回は、酒を飲めたのだから、負けてやろう。確かに、いくらも飲んでない割には、千鳥足が過ぎた。だるくて仕方ない。

「はいはい。鳥頭、一杯よそえ。食わせりゃ静かになるだろう」

 先生からお椀を受け取ると、ジョエルを座椅子にして、猪鍋を食べ始めた。もう一人で座るのもダルイ。

 猪鍋なんて初めて食べたし、これこれ! って感じはしなかったが、久しぶりの味噌味だ。ちょっと肉固めの豚汁風だ。美味しい!

「ルルーは、猪が好きなの?」

「んー。もう少し肉が柔らかければ、好きかもね。でも、そんなことより、味噌汁だよ! ザ・和食だよ。『毎朝、俺に味噌汁を作ってくれないか』とかいうプロポーズがあるくらいの定番メニューなんだよー」

「「「「プロポーズ?」」」」

「だから、俺のために作ったのか?」

「ふっ。味噌汁を作るのは、妻じゃなくて、姉ちゃんに頼みやがれ! って思うよね?」

 弟のためなら、早起きしてでも作るが、夫の味噌汁なんて前の日の味噌汁を一人で勝手に温めて食えよ、としか思えないよ。

「ああ、そうだな」

「何の話かな?」

「気にするな。酔っ払いの戯言だ。適当に相槌を打っていれば、いずれ寝る。シャルルは、酔わなくとも毎晩こんなものだった。眠いんだろう」

「酒なしで、毎晩これなのか?」

「今は兄だからな。手はつけない。心配しなくていい。俺は女に不自由していない」

「お嬢さんが嫌がっていたのに、辞めてないのか」

「シャルルに手をつけるよりは、いいだろう。間違いなく、絶対に泣いて暴れるぞ。面倒臭い」

「シャル一筋じゃなかったのか。聞いてた話と全然違う!」



 一生の不覚だ。酒を飲んだら、一日スキップしてしまった。朝の次が朝とは、どういうことだ。もったいない!

 その上、住まないと言っていたシュバルツ宅に普通に泊まっていた。兄ならいいか、と思う自分がいる。このままでは、シュバルツの予言通りになってしまう。負けるものか!

「猪鍋なくなってるし!」

「酒を飲むからだ。必要なら、また作ってやる。作り方は覚えた。今日は、釣りに行くんだろう?」

 小さい頃は、表情豊かだったような気がするのに、大人シュバルツは、基本無表情だ。何を考えているやらわからないのだが、自分がロクなことをしていないからか、嫌がられているようにしか見えない。

「行く! 釣れるかな? 囲炉裏に刺して焼いてみたいんだよ」

「絶滅覚悟なら、確実に獲ってやれるがな」

「それはダメだよ」

 ちょっと熊鍋食べたい、と冗談を言ったら、熊はいなくなってしまったのだ。魚に同じ道を歩ませてはいけない。


「ジョエル、キーリー、行ってきまーす」

「拾い食いも、大概にしろよ」

 今日は、シュバルツと先生とタケルと森に行く。川で釣りをするのだ!

「海のお魚は食べちゃダメって言われたけど、川のお魚は、毒はないの?」

「どうだろな。俺は、海の魚も食ってたけどな」

「そうだよね。食べる物ないもんね」

 右手にタケル、左手にシュバルツの手を掴んで、てくてく歩いていく。捕まえておけば、歩くのが遅くとも、置いていかれる心配はいらない。

「鳥頭は、馳走してやっても食わなかった」

「うわぁ、最悪」

「毒魚しか出されなかったですよね?」

「当然だろう。死ねばいい、と今でも思っている」

「わかるー」

「数々のご無礼大変申し訳ありませんでした。本当に反省しているので、お許しください」


 川は森の中にある。熊が出る森だ。出入りは少し躊躇ってしまう。最近は、まったく熊が出てこなくなった、とジョエルが言っていたけど、少し不安だ。護衛がいるから出てきても大丈夫だろうけど、葉擦れ音がする度にビクビクしてしまう。来たのは、早まったか。

「大丈夫だ。心配はいらない」

 頭を撫でられた。シュバルツに、熊の話をしたことがあったろうか。弟に守られるのは、嫌だなぁ。

「そうだよね。大丈夫だよね。シュバルツは、戦う博士だもんね!」

「戦う? 俺に戦闘力を期待するのは、的外れだぞ。戦うのは、鳥頭とちっこいのだ。俺が戦えるなら、連れて来なかった」

「え? 前にジョエルとタケルとキーリーと戦ってたよね」

「俺は、嘲笑って、回避していただけだ。回避は得意だが、攻撃は苦手だ。もちろん一般人レベルで良ければ戦えるが。肉体労働職と一緒にされても困るな」

「え? 回避だけ?」

「シャルルもできると思うぞ。俺より余程簡単にできるハズだ。今度、教えてやる」

 ジョエルの攻撃を回避できるようになるなんて、すごいよね。期待して、待っていよう。

次回、またアレに遭遇します。熊ではありません。

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