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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第六章.Let's get married

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77.結婚式

 シュバルツは、わかってくれた。結婚しなくて良くなった。シュバルツと姉弟になった。私は、ハッピーだ。

 シュバルツに茶髪にする染料の作り方を教わったり、釣りをしたり、山菜摘みに行ったりして毎日遊んで過ごしているのだが、1つ問題がある。

 いつ元の時代に戻れるのだろうか?


 今日の夕食は、鶏のアヒージョとパンを用意した。ジョエルとシュバルツが酒飲みだから、ツマミでもおかずでも良さそうな物にしたのだけど、そういえばキーリーがいないんだし、私も飲んでもいいんじゃなかろうか? いえいえ、わかっていますよ。ジョエル連れ帰りプロジェクト中ですよ。飲みませんよ。ムキー。

「今日も、戻れなかったね」

 酒飲みたい。

「そんなに俺といるのが、気に入らないか」

 ぎゃー。デスフラグ!

「違うよ。ジョエルだよ。ずっと一緒は大変なんだよ。万が一また置き去りにしたら、っていうプレッシャーに押し潰されてるんだよ。暢気に遊んでるだけなら、いつまでいたって構わないんだけど!」

 毎日毎日、見せつけるように飲まないでくれたら、構わないんだけど!

「まあ、そうだろうな。母親が男とは。俺も初めて見たからな」

 シュバルツは、頭かたいなー。男女平等の時代だよ。男がお母さんだって、いいじゃない。ジョエルは、お母様の次に素敵なお母さんだよ! リアル母も大好きだけど、リアル母は、リアルすぎて夢がないからね。

「すまないが、女になることはできない」

「研究するか?」

「いらないよ」「やめてくれ」


「冗談は、それくらいにして、だ。シャルルが言っていたろう。結婚式で戻ると」

「結婚式かー。やっぱり、それかなー」

 結婚式場で再会したのだ。結婚式をしないで帰ることは、想像できないよね。結婚する気もないし、しなくていいみたいだから、思いっきりスルーしてたけれど。

「式だけやるか?」

「帰っちゃって、いいの?」

 べったりさんだと思ってたのに、嫌われちゃったかな? 大きくなったから、お姉ちゃんはいらなくなっちゃったかな? 面と向かって言われると、悲しくなっちゃうね。

「連れ帰らないと、調子が出ないんだろう? 俺以外の男もいらないしな。寝室が一緒なんて、有り得ない」

「ねー。ジョエルは、一番一緒に寝たくない男だよ。今夜こそ死ぬかもしれないよ」

「戻るまで、夜は寝ないと誓うよ」

「昼に寝られても、邪魔だ」

「ぐっ。睡眠ゼロは、無理だ」



 試しに式を挙げてみよう、ということになり、式場に戻ってきたよ。

 ジョエルには、お母様デザインのモーニング風スーツを渡して、それぞれ着替える。

 私は、シュバルツが用意していたドレスだ。長袖の首まである上衣に、ロングトレーン付きのベルラインドレスだった。背中のリボンのボリュームもすごい。お母様のおかげで、ドレスも少し馴染んできたけど、これは1人じゃ着られない。歩くとトレーンが乱れる。なんて難易度の高いドレスを用意してくれたんだ! お手伝いのお姉さんたちが助けてくれるとはいえ、お手を煩わせるのが申し訳ないんですけど!

 顔や髪もいじられて、へろへろになって廊下に出ると、ジョエルがいた。今日のジョエルは、キラキラが足りない。

「花嫁の父にもなれるなんて、高性能なお母さんだね」

「そんな物になりたくなかった」

 ジョエルだって、いずれ結婚して子どもができたら、リアル花嫁の父になるだろう。美人の娘だ、本人の意思とか関係なく、結婚したりするんじゃないの? だが、まだ娘もいないのに、今から嫁に出すのが嫌とか、どんだけだ。

「ルルーが、こんな時まで可愛くて、腹立たしい!」

「ありがとう。ジョエルも、今日は、いつもより格好いいよ」

 ちなみに、タケルは、私の肩の上に乗っている。ずっと頭に乗せていたのに、お姉さんたちにダメだと言われたのだ。肩乗せもダメだと言われたけど、離れる訳にもいかないのだ。色を白くして、許してもらった。



 ジョエルのエスコートで、チャペルに入場する。シュバルツが正装で立っていた。

 ああ、弟妹の結婚式に出席したかったなぁ。出会って大した日数は経っていないけど、ちょっと目を離した隙に、すくすく育って立派になったシュバルツを見て、そう思った。出会った時は、双子の弟だったのに、今では身長に差をつけられてしまった。あのまま日本にいたら、那砂も弟に身長を抜かれる日が来ただろう。

「大きくなったねぇ」

「今頃、気付いたのか」

 エスコート役をシュバルツにチェンジした。子猿のように飛び付いてきたシュバルツは、いなくなってしまった。成長は嬉しいけど、寂しい。

 祭壇の前に立つと、シュバルツはこちらを向いた。

「俺の幸せには、シャルルが不可欠だ。シャルルなしには、楽しみも喜びも得られない。シャルルの幸せの為に尽くす。だから、俺と結婚して欲しい。俺を選んで欲しい」

 えぇえっ。急に何が始まったの? 私が話した結婚式に、そんなのなかったよね? なんだ、こ、れ、は!

 びっくりして、一歩後ずさると、シュバルツが仏頂面に変わった。

「結婚する前に、プロポーズの言葉? を言わなきゃダメだ、と言っていただろう。なあなあで済ませるのは、許せないんじゃなかったのか」

「細かいことをよく覚えているね。私は、聞いても何の話だったのか、全く思い出せないよ」

「俺が、頭を打ちつけたんだ。悪かったな」

 いつまで、そのネタを引きずっているのか。まさか、まだ信じているのか。冗談だ、って言ったよね? 言わなかったかな?

「新郎シュバルツは、シャルルを妻とし、

 病める時も、健やかなる時も、

 喜びの時も、悲しみの時も、

 富める時も、貧しい時も、

 妻として愛し、敬い、

 この命ある限り真心を尽くすことを誓います」

 シュバルツは、しれっと結婚式を続けたが、ちょっと待て。それを続けて、私も言うのか?

 牧師さんはいないし、結婚式の知識を持ってる人は、私とシュバルツだけだ。確かに自分で言うしかないだろう。だが、言えるか? 急にそんなの一言一句間違えずに言えるか? 別に、これは本当の結婚式ではない。間違えたって、どうということもない。だが、弟分があれだけスラスラ言った後に言えないとか、無様だ。姉の沽券にかかわる。練習しとけば良かった!

「新婦シャルル。

 あなたもまたシュバルツを

 喜びに充ちた時も、悲しみ深い時も、

 ともに過ごし、互いに支え合うことを誓いますか?」

「はい。誓います」

 負けた。やっぱりシュバルツには、勝てる気がしない。

 悔しさに、下を向いて打ち震えていたら、シュバルツにベールをあげられていた。おでこにキスを落とされる。そこまではいい。まだわかる。だが、耳やら首やらキスが終わる気配がない。

「ちょっと待って。シュバルツ。何をしているの?」

「うっかり指輪をつけたままだったから、交換するのも変だろう? だから、代わりに誓いのキスを多めにしてる。誓いが多い分には、構わないだろう? 後は、鼻と頬と口だったか?」

「違うよ。どこか一ヶ所でいいんだよ。結婚式は繰り返すのは縁起が悪いから、2度3度重ねちゃダメなんだよ。確か」

 結婚式なんて、知り合いのにも出たことないから知らないけれど、そんな決まりがあったよね? 世界が違うし、なんでもいいだろうけどさ。

「そうなのか。なら、1ヶ所はここだ」

 シュバルツに口をふさがれた瞬間、祭壇が吹き飛んだ! シュバルツが、私ごと転がって避けたから無傷だけど、死ぬかと思った!

「ジョエル、危ないよ!」

 まだ未来の娘に思いを馳せて、拗らせてるのか! 拗らせるのはジョエルの勝手だけど、剣を抜くな! 死ぬわ!!

 シュバルツは、転がったまま半眼でまだ結婚式を続けてる。

「本日、私たちは母御の前で結婚の誓いを致しましたー。今日という日を迎えられたのも、シャルルを支えてくださった母御のおかげですー。これからは、2人で力を合わせて苦難を乗り越え、喜びを分かち合い、笑顔あふれる家庭を築いていくことを誓いますー。だから、もう俺に任せて消えるがいい!」

 すごい! 超棒読みだ!! 剣を抜いたジョエルにケンカを売った人を初めて見た。無人島サバイバル博士は無敵なのか? 博士は無敵でも、私は怖いから巻き込まないで欲しい。

 しかし、2人の仲裁をしてる時間はない。もう足が消え始めている。やはり、結婚式がキーだった。

「ジョエル、手!」

 シュバルツに抱きつかれて動けないので、必死にジョエルに向かって手を伸ばした。ジョエルにスネられたら、終わりだ。

 シュバルツは、私が何をしに来たのか知ってるハズなのに、手を取って、邪魔してくる。

「なんで邪魔するの? お母様にジョエルを返すんだから!」

「結婚式で、他の男の名を呼ぶなよ。俺はもう待つのは嫌だから、今度は俺が会いに行くからな。今度は、シャルルが待ってろよ」

 こんな緊急事態に何を言ってるんだ。もう半分くらいしか残ってないのに。

「ジョエル! 私を無理矢理抱きしめて! シュバルツから奪い返して!!」

次回、新たな美術作品が。

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