75.作戦会議
海街の先生宅に着いた。着いたが、もう城は閉門しているし、私も体力の限界だ。タケルは便利だが、能力が高すぎて、私の方こそついていけない。
到着時に叩き起こされたので、起きてはいるが、ソファでぐったりと倒れている。それでも、口と耳だけは、作戦会議に参加しているよ。
「まず1つ目だが、今の装備は、どうなってる? 足りない物があるなら、行く前に補充だ。行った先で困るだろう?」
ああ、そうか。とにかく助けに行くことしか、考えてなかった。ジョエルがいれば、何もなくてもなんとかなりそうだけど、私が会いに行けるのはシュバルツだ。どうせ行くならお土産も持って行った方がいいかな。
「携帯食料と木材と大工道具と調理器具と野営セットは、全部置いてきた。シュバルツの指輪もあげて? 返して? きた」
指折り数えて、なくなった物を挙げていく。私しか、わからないことだ。忘れたら、私が困るのだ。一生懸命思い出す。
「お前、またあんなに大量に食い尽くしたのか。アゴはどうなってんだ。魔獣並みか」
「違うよ。詳しくは言えないけど、分ける人数が100人くらいいたんだよ。あっという間になくなったよ」
「博士の指輪は、結婚の証なんだろう? お嬢さんは、そう言ってたよね。あげてきたということは、お嬢さんが結婚を申し込んだということで、いいのかな?」
「え? そうなの? お揃いが2つあったから、片方はシュバルツのだと思って、、、。そうだね、あれ、結婚指輪だったよね。私、シュバルツに結婚指輪の話をした気がするよ。しかも、絶対に1人を選んで結婚しろと迫ったよ。通いの女と結婚して欲しかったんだよ」
そうか! 私がプロポーズしたのか。それをこちらから断るのは、申し訳ないな。だからと言って、あちらも断ってくれる気配はなかった。もう亀裂を入れるしかないのか。やんわりと仲良しのまんま断る方法って、何かあるかな? まったく思いつかないな!
「どうしよう。シュバルツを怒らせたら、シャルルが生まれなくなっちゃうよね。シュバルツは、謎スペックの高い男なんだよ」
「「生まれない?!」」
え? 生まれないよね。ひ孫の私を生み出すために、結婚してない女性との間にわざわざ子どもを作った、って、先生が言ってたよね。違ったっけ?
「だが、結婚は不可だ。結婚したら何するか、わかってんのか?」
「式だけあげて、こっちに戻れるなら、それはそれでいいかな、とは思った」
「お嬢さんは、相変わらず鬼畜だねぇ」
「どうしたって、ずっと一緒にはいられないもの。先生は知ってるんでしょう? シュバルツの奥さんは、どうなったの?」
「何を聞くやら。お嬢さんは気付いたじゃないか。オレは、博士に嫌われていた。最愛の妻の話なんて、詳しく教えてもらえるハズがない。オレも周囲も、博士の妄想だと思っていた。まったく知らないよ」
「何を威張ってるんだ。使えない男だな!」
「はっはっは。君ほどではないよ」
「うるせぇよ」
「まぁ、いい。次は、俺を連れて行け」
急に話が変わった。ジョエルを置いてきちゃって大変! って話をしてるのに、一緒に行く立候補するとか、意味がわからない。キーリーは、どれだけジョエルが大好きなのか。置き去りにされても、ジョエルだけいればオーケーなのか。
「嫌だよ。なんでよ」
「お前とジョエルじゃ、シュバルツに勝てないんだろう? 俺が、結婚を阻止する。父親に反対される分には、角が立たないだろう?」
「あー、それは来て欲しいような気もするけど、嫌だよ。ジョエルだけでも連れて帰る自信がないのに、これ以上、無理だよ。私の手は2本しかないんだよ」
「2本あれば足りるじゃねぇか」
「いつ戻るかわからないんだよ? 常にジョエルとキーリーと手を繋いでたら、何もできないじゃん!」
ジョエルとキーリーは、片手が自由でいいけど、私はごはんも食べられないじゃん。食べさせてもらえたら生きてはいけるけど、ごはんくらい1人で好きに食べさせて欲しいよ。
「お前、常にジョエルと一緒にいる気か? ダメだろ。余計に、俺を連れて行け」
「嫌だよ。それで失敗して、キーリーまで置いてきちゃったら、こっちで先生と2人だよ。嫌だよ。死んじゃうよ」
「それはいい。協力しよう」
「でもね。1人で行っても誘拐されるだけだから、タケルを連れて行きたいとは思っているよ」
タケルなら、頭の上に常時乗せとくことは可能だ。1番忘れにくいし、護衛も頼める。シュバルツのところにジョエルがいなかった場合、捜し歩くのに護衛は必須だ。
「それで、結婚しないで帰ってくるあてはあるのか」
「ないよ。でも、結婚してもしなくても、そのうちこっちには帰ってくるんだよ。その時、ジョエルをこっちに戻せたら、後はどうでもいいよ」
「どうでもよくはないだろう」
「優先順位の問題だよ。私は自分の結婚よりも、シュバルツよりも、ジョエルが大事なんだよ」
連れ戻すのが最優先。できたら、シュバルツとケンカしたくないし、結婚とか意味わかんないと思ってるよ。
「そ、、、、、うか。じゃあ、タケルと行け」
キーリーを怒らせてしまったようだ。朝になっても、寝室にこもって出てこなくなった。呼んでも無視されたので、先生とタケルと買い出しに出かけて、城に行った。
シュバルツに変化したタケルに抱えて行ってもらったので、入り口で止められたが、ひ孫その2で貫き通した。
久しぶりにお墓参りはできたけど、城のどの部屋を覗いても転移はしなかった。
やっぱり城じゃダメだったので、次回、結婚式場に行きますよ。




