表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第六章.Let's get married

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/125

70.助手になる

 最近のマイブームは、パン作りだ。

 薬師を辞めて、パン屋になったんじゃないかと思うほど、パンを作っている。パン作りが、とても楽しい。

 パン作りの何が楽しいかと言えば、やりたいところだけできるところだ。パン屋さんの強力バックアップの下パン作りをしてるので、大変な生地作りや難しい焼きの部分はお任せで、デコレーションだけやっててもパンが出来上がるのが、最高だ。毎日、パン屋さん体験で遊んでいるような感じか。だから、楽しいだけで終わっているのだ。

 食べるのも、楽しみだ。日本に住んでた頃は、日本人はパンじゃないだろ? などと言っていたが、実際のところは、ただのやっかみだ。パンを買う余裕がなかっただけだ。兄弟6人分のパン代が恐ろしかっただけだ。食べれなかった物を、今なら食い放題なのだ。弟妹に持って帰ってあげたい。

 あの時、食べてみたかった惣菜パンや、菓子パンを毎日、次々と作っている。日本のパンの作り方を見せているので、パン屋さんにとってもメリットがあると思ってもらえてたら、いいけどね。


「レクシー。またメロンパンを作ってやったぜぃ。今度こそは、最高の焼きを期待してるよ!」

 失敗作を食べるのはいいが、試行錯誤は面倒臭くてやりたくない。レクシーが、お友達として手伝ってくれるので、大助かりだ。パンがどうとか言うよりも、女の子の友達も久しぶりなので、そちらも嬉しいのだけど。

「今度こそ、最高のお姉様のパンにしてみせます! 見ていてくださいね」

 レクシーは、ふわふわの茶髪テンパ娘だ。今は、調理中でまとめられているものの、動く度に毛先が揺れるのが、しっぽのようで可愛い。先生が気に入るのも納得だが、私の貴重な友達だ。譲る気は毛頭ない。

「私の中では、パン屋と言えば、キャラクターパンなんだけど、レクシー、チョコレートって知ってる?」

 ココアっぽい物はあった。ならばチョコレートもあっても良さそうなものだと思うのだが、名前が違うのかなんなのか、見つからない。もしかして、自分で作らないといけない案件なんだろうか、とドキドキしている。カカオマスやカカオバターをどうにかするって本で読んだ覚えがあるけど、言葉は聞いたことがあっても、そもそもカカオマスが何かというところでつまずいている。ローちゃんさんか、シュバルツなら、簡単に作ってくれそうだが。

「聞いたことがないです。食べ物ですか?」

「食べ物なんだよ。折角パン屋の知り合いができたのに、チョココロネが作れないなんて! スプレーチョコ食べてみたかったー。食紅ないけどー」

 言いながら、パン生地でウインナーを巻いている。食事パンは、材料調達が簡単なんだけど、菓子パンは、ジャムパンとクリームパンしかできてない。あんまり生産すると、砂糖ストックがなくなってしまう。

「あー、そろそろ時間かー。ちょっと行ってくるね」



 私に、パン作りではない仕事が増えた。トリトリ先生の創薬実験の助手だ。

 前に、特級傷薬の作り方を教えたのだけど、すぐに教えなかった秘密がバレた。普通の魔法薬は、混ぜたり煮たりするところで魔力を混入させるのに、材料の時点で混ざっていることに喜んだ先生が、私に材料を作れと強要するのだ。

 魔力を材料にしてる先生は、薬草を否定してたくせに。魔力を使えば、魔力がこもってるんじゃないのかよ。やりたければ、自分でやれよ。

 面倒臭いから嫌だと断ったんだけど、手伝った日はセクハラしないと脅されて、陥落した。なんで私は、セクハラしてもいいよ、なんて約束をしてしまったのだろう。正気を疑う。


「ああ、気が重い。やりたくない」

 ぶつぶつボヤきながら、薬草の手入れをする。

「魔力的負担は、大してないよね? 木の実潰してるより楽だって、言ってたよね? 何がそんなに嫌なのかな?」

 先生の笑顔が、引きつりぎみだ。怒っているのだろうか。怒りついでに、家に帰ってしまえばいい。

「正直、カマイタチを乱発しなければ、ほぼ魔力が減らないよ。そよ風なら、24時間発動可能だし。でもさ、先生の顔を見て、先生と会話して、先生のために働いているって言うのが、もう全部嫌なんだよ」

「なんで、そこまで嫌われてるのかな!」

「だって、先生は、私の弱点をついて、変な言質を取るじゃない。一緒にいたら、どんどんおかしな約束を追加されるじゃない。断れないようにするじゃない。なんで、一緒にいたいと思うのよ。恩はできても敬遠したい気持ち、わかんないかな?」

 いちいちダメな方に流される私も悪い。強く断れない私も悪い。だが、いい悪いと、好き嫌いは関係ない。自分のダメさ加減を棚に上げっぱなしで申し訳ないけど、触られるのも、距離感が近いのも、イケメン面されるのも、全部ぜんぶ本当に嫌なんだよ。

「心当たりはあるけれど、そうせざるを得なかった、こちらの心情もわかって欲しいな。お嬢さんと仲良くなりたかっただけなんだよ」

「私は大人なのでこうしてるだけで、先生のことは、日々嫌いになってるよ」

「反省した。猛烈に反省した。でも、今更やめると、もう顔も見られなくなるんだろう?」

「そうだね。セクハラさえなければいい先生だと思ってたけど、そろそろ顔を見ただけで身体が震えるよ」

 理屈で嫌いになってた時期ならともかく、生理的に受け付けなくなってしまったので、もう何を言われても無理だ。

「なんでそんなになるまで我慢したんだ。もっと早く言って欲しかった!」

「我慢は無料だからだよ」

 逐一指摘するのも、面倒臭いしね。嫌なことをされたとして、今一番嫌だと思っていることは文句も言うが、先生の嫌なところが1つだったことがないんだよ。

「時間を巻き戻してもいいだろうか」

「そういうところが、ダメなんだよ。札束と魔法以外の解決方法を学んできてよ」

次回、先生のお詫び。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ