67.王子様
昨日、お母様の家にお泊りさせてもらったのだが、朝起きたら、素敵な物を見つけた。
「きゃあぁあ。すっごい、格好いい!」
偽ジョエルが、全員ゴスロリ王子になっていた。
私の語った童話の王子ではない。カスタマイズされて、素敵王子になっている。袖のレースもイケメンだし、胸元のスカーフや、ズボンの裾がリボンになっていて、可愛い。私の想像では、どうにもならなかったかぼちゃパンツすら、ロング丈になっていい感じ。もちろん、赤と黄のシマシマではない。シックな色の単色だ。全員、色も形も違う王子なのだが、それぞれ全員格好良かった。
「ちっ。やっぱりお前も顔なのか」
「そりゃあ、そうだよ。顔は大事だよ」
遊びじゃないんだよ。仕事をナメんな。
「お母様、これ、どうしたんですか? すごい素敵です」
「シャルルちゃんに聞いて、これだ! って思ってね。張り切っちゃった」
「流石です。大好きです。格好良いです。メロメロです。私も着てみたいですー」
「「「「「「え?」」」」」」
ジョエルが全員、こっちをガン見してきた。何故だ?
「え? これ、女性用ですよね? モデルが男なだけで」
王子モチーフだから、モデルが男なのだろう。モデルなのだから、顔は大事だ。息子だからモデル料も割安で済ませられたら、言うこと無しだ。
ジョエルだし、モデルだからギリギリ許されてるが、こんなレースとリボンが満載の服、どこの男に着せるんだよ。
「ふふふ。息子たちには、まだ言ってないのよ。シャルルちゃん、ドレスよりこっちが好きそうかな、と思ったの」
「大好きです!」
「シャルルちゃんのもあるから、着てみてもらえるかしら」
「はい! 今すぐ着替えてきます!!」
私の服は、真っ白だった。胸元に大きなリボンがついたブラウスに銀糸の刺繍が入ったポンチョコート。コートに合わせた短パンに、ニーハイソックスとブーツ。ポンチョには、フードもついていたが、かぶらずに皆のところに戻った。
「着てきました。どうでしょう」
「あら、可愛い王子様ね」
「ありがとうございます」
「ところで、参考までに聞くのだけれど、どの息子が1番いいかしら?」
偽ジョエルが集まってきて、お母様の横に並んだ。
モスグリーンジョエル、茶色ジョエル、真っ黒ジョエル、白黒ジョエル、、、。
「どのジョエルも格好いいですけど、私は、このジョエルが1番好きです」
灰色のリボンタイブラウスに黒ベスト、黒ハーフパンツのジョエルを選んだ。
「ですって。良かったわね、ジョエル」
「え? ジョエル?」
そう言えば、さっきキーリーがいた気がする。そして、ジョエルも1人増えてる気がする。気が付かなかった!
「このジョエル、そっくりさんじゃないの?」
「そっくり、、、。見分けがつかないのか。わたしは、ジョエルだよ」
「じゃあね、お願いがあるんだけど、エスコートしてくれる? お母様と約束したの」
「承知致しました。王子様」
王子ごっこで一日遊んで、次の日に帰ることにした。
私はもう着替えてしまったが、代わりにヤマトを王子にした。服ごと変身できるヤマトは経済的だ。
ジョエルとキーリーが来た時点で逃げてしまったので、おじさんはいない。いつもの4人で村に帰る。
「キーリーは、どれがジョエルかわかった?」
ジョエルに聞こえないように、こっそりキーリーに聞いてみた。
「ちょっと待て。まさか、お前、全然わからないのか? 1番上は、10は年が離れてるんだろ? 流石にわかるよな?」
キーリーは、驚き顔だ。まさか、余裕で見分けられるのか? そうか。キーリーは、ジョエルが大好きだから。愛があれば、わかるのだ!
「並べてみても、はい、イケメン、イケメン、イケメン、、、って感じで、特徴がないよね? なんで皆わかるのかな。女装してた時は、わかったけどさ」
「マジか。もう少し興味持てよ。俺の切り札なのに」
「興味はあるよ。ジョエルはどれでしょうゲーム、面白いよ。でも、1人でこっそりやっても、正解がわからないんだよ。正解の印に後ろ頭にピンクのリボンをつけてもいいかな?」
「なんでピンクだよ」
「お兄さんたちは、付けなそうだから」
「そう思うなら、ジョエルにも付けないでやれよ」
「じゃあ、キーリーに付けてもいい?」
「なんのためだよ!」
「可愛くなるよ」
「いらんわ!」
村に戻ると、村民が増えていた。パン屋さんが、村に住むらしい。
「え? なんで、そんなことになってるの?」
「パンを食べてみたら、悪くない味だったんだよ」
「で、惚れちゃったの? だったら、家に連れ帰りなよ」
「違う。別の場所にパン屋を新設する必要があったから、村を推しただけだ。食べ物の選択肢は、多い方がいいだろう」
地上げ屋さんと、パン屋さんは、料金面で争っていたらしい。土地代しか払わない地上げ屋さんと、建物代がないとパン屋ができないパン屋さんのバトルだった。引越し自体は問題がなかったので、建物代を先生が持つことで合意したそうだ。その建物は、魔法で建てたため、ほぼお金はかからなかったって。
私のリスクだけ大きかった!
地上げ屋さんも、パン屋さんもハッピーエンドなら、良かったけども。
「お嬢さんの覚悟を聞きたかっただけだよ。以前のようにはしないよ。保険にするだけだよ。だから、睨まないで欲しいな」
「触っても怒らないけど、嫌いになるからね! 訴えないけど、こっそり嫌がらせするんだから!」
睨み合っていたら、味方が増えたよ。
「お姉様のことは、あたしが守ります!」
「パン屋さんの娘さん?」
そう言えば、パン屋さんには、娘さんがいた。村に引越しさせられて、お友達と別れ別れになったんじゃなかろうか。先生の所為だ。敵の敵だ。味方にしよう。
「あたし、レクシーって言います。仲良くして下さい。お姉様」
この村には、女性が少ない。先生の標的は、パン屋さんではなく、レクシーか!
「レクシーのことは、私が守るから。一緒に戦おうね!」
「はい」
「オレは、お嬢さんの頼みを聞いただけなのに、なんで仇みたいな扱いをされているんだろう」
しれっと新キャラみたいな人が出てますが、幻です。
プロットを作った時は、もう少し村を発展させて、続ける方針でいたのですが、その後、終了する方に傾いたので、この人は活躍の場がありません。気にしないで下さい。
最後に、オーランドさんを書きたかっただけのこの章は、閑話だけで終了します。




