63.男の背中
次は、私の薬を教える番なのだが、正直には教えてあげない。村人Dに教えてもらったことだけを伝える。
鉢植えの薬草は、既にオリジナル部分など残っていない。水をあげたり、肥料をやったりするのは面倒臭いので、魔力だけで育てていたら、そうなったのだ。だから、鉢植えを使う分には、加工なしで特級傷薬は完成する。
そんな訳で、創薬実演するのは魔力を持たないキーリーにお願いした。村人全員作れる説を立証するためだ。
ふふふふふ。いつ真実に気付くか、大変楽しみである。
キーリーが、村のそこら辺に生えてる草を使って魔法薬を作ったのを見て、驚く先生は面白かった。
できた特級傷薬を早速、先生に塗るよう指示された。さっき、私が魔力を放り込んだ所為で、中が傷だらけになったらしい。大変、申し訳ないことをした。 お詫びの印に背中いっぱい厚塗りサービスだ。
「切ない。男の背中なのに、まったく気にもとめてない。予想できた事態なのに、立ち直れそうにない」
また先生が変なことを言っている。私がおかしいみたいな言い草が、むかつく。先生には、人を変人呼ばわりする資格はないと思う。
「男の背中くらいで騒いでたら、子育てなんてできないでしょ。私には、妹3人、弟2人いて、下3人に関しては、ほぼ私がお母さんだったんだから。オムツも替えたし、お風呂も入れたし、今更、男が全裸で現れたって騒がないよ。通報はするけどね」
全裸の男が現れて、きゃっきゃ言ってたら、それはそれで乙女じゃない気がする。一体、どういう反応をするのを求められているのだろうか。悲鳴をあげて、殴ればいいのか? 手が痛くなるじゃないか。面倒臭いヤツめ。
「大人と子どもじゃ、違うだろ?」
「上の弟は、もうそこそこ大きいよ。シュバルツやローちゃんさんと同じくらいなんじゃない?」
日本なら立派な子供だが、こちらの世界ではそろそろ結婚するお年頃だ。大人と言っても差し支えないんじゃないかな? 違うかな?
「また微妙なラインをついてきたな。お前がその2人を何歳くらいかと思ってるかなんぞ、誰にもわからないだろ」
「中学生前後?」
「中学生って、何だ? ローワンは、25歳くらいだっただろう」
「え? あの子、そんなに年上なの?」
てっきり御形と同じくらいだと思っていた。記憶を失って以来、会っていなくて良かったかもしれない。失礼働くところだった。危ない。
「それ、2回目だぞ」
「しょうがないじゃん。記憶をなくす前のことは、細かいことまで思い出せた訳じゃないんだよ」
一度は全部捨ててしまった記憶だ。みんなが大切な人だって思い出せただけで上々だ。それに比べたら、年齢や性別なんて、些細な情報じゃないか。
「そうだったのか」
「記憶なくす前の記憶、ほぼ熊しか思い出せてないから。ジョエルよりキーリーよりタケルより熊だよ。私は、何をしてたのよ」
「それは、ジョエルの所為だ。お前の所為じゃない。まぁいい。やたらと年下に甘い理由は、わかった」
「可愛いは、正義だよ!」
「それなら、お嬢さんは無敵だねぇ」
「そんなことないよ。まだまだジョエルもキーリーも、私から見たら可愛いお年頃だよ。海に入ったキーリーは、頭ぺたんこで、面白可愛かったよ」
「これっぽっちも嬉しくねぇな。何だそりゃ。常に水かぶってろってことかよ」
「風邪引くから、やめた方がいいよ?」
「やらねぇよ!」
寝る前に、今日の出来事をタケルに愚痴っていたら、タケルが魔力液の精製ができることが判明した。
魔力を持ってること自体初耳なのだけど、魔獣の魔は魔力の魔である。姿形が変わるのも、魔法だったと考えれば、魔力を持ってるのは当然だった。
属性ごとに切り分けるどころか、薬草見せたら薬草配合で魔力液を出せるくらいの習熟度だ。熊を食べ尽くしてくれる便利魔獣タケルの便利度が、更に上がってしまった。もう人を殺す魔獣とか言わせない。魔法薬師の大事な相棒だ。
魔力なんて、好きなだけあげると言われた。ヤバイ。魔法薬師としても、名声を勝ち取ってしまうかもしれない。私自身の腕や功績は、まったくないのにね。
どこで切ったら良かったか、わからない4章は、これで終了です。
次章は特にいらないオーランドさん回をさせて頂いて、セルフ打ち切りに向けて畳み掛けていく予定です。
迷走致しましたが、もう諦めました。
私には無理でした。
この人たち冒険に行ってくれません。




