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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第四章.愛する私のシャルルへ

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60.真っ先に行くべき場所

「暇ついでに、もう一つ聞きたいことがあるんだけど、先生って、魔法の先生だけじゃなく、魔法薬の先生でもあるんでしょ? 魔法薬の作り方を教えて、って言ったら、教えてもらえるのかな?」

 ローちゃん弟子先生がいなくなってしまったので、新作に飢えていたのだけど、そういえば、先生もう1人いたじゃん! と気付いたのだ。魔法薬だよ、作れるようになったら、カッコイイよね。

「ふむ。それはなかなか難しい相談だね。確かに、魔法薬を作るのは得意だが、お嬢さんに教えられるようなストックがあったかどうか。金払いのいい客は、ロクな薬を注文しなかったが、お嬢さんはどんな薬がご所望だい?」

 聞いてはいけないことを聞いた気がする。ここで、私がロクでもない薬を望んだら、教えてもらえるのだろうか。作ってはいけない薬など、覚えるだけ無駄だと思うけれど。

「どんな薬だ?」

「お嬢さんには、似合わない薬ばかりだね。精神を操作する薬だとか、病に見せかける薬だとか」

 マジで、いらないな! それは、いつ何のために使う薬なんだよ。どうして、そんな薬を作っちゃうんだよ。また先生のダメポイントを知ってしまった。

「病気を治したり、傷を治したり、そういうのがいいんだけど」

 そういうプラスイメージの物じゃないと、怖くて売れないよね。私は薬師なんだよ。売るための商品が欲しいんだよ。

 そう思っただけなのに、予想外なことを言われてしまった。

「それなら既にお嬢さんは作れるだろう? 外者には売ってもらえないが、店に置いていたじゃないか」

「えっ!?  あれ、魔法薬だったの?」

 村の誰もそんなことは言ってなかった。最も一般的な大衆薬って、触れ込みだった。その辺に生えてる草をちょっと混ぜただけだ。作れたらカッコイイはずだったのに、もう作っていたとは。

「あれだけ魔法的な薬を作り出しておいて、本気かい?」

「いや、だってアレ、作り方教えてくれたの、村人Dだし」

「あの薄らぼんやりした青年は、魔力を持っていないだろう? 作り方だけ詳しいのかな。宿屋の息子が?」

「村人全員作れる、って言ってたよ」

「すさまじい村だな。確かに、少し変わった村だとは思っていたが」

 だから、あんな雑貨屋に無造作に置いてあるのか、とぶつぶつ言っているが、それは店が他にないからだ。

「ああ、そうだ。出血毒と神経毒と筋肉毒を緩和する薬なら、どうだろう。昔、毒とセット販売で作った気がする。毒はいらないだろうが、解毒薬の方なら役に立つんじゃないかな。オレの毒以外にも効果はある。魔法薬だから」

「教えて欲しい!」

 大体なんでも効くのが、魔法薬なんだろうか。薬は、用法容量を守って、正しく使うものだと思っていたが、適当な感じは嫌いじゃない。

「ならば、対価をいただこうか? 君の薬のレシピを譲ってもらうか、1日デートするか、どちらがいい?」

「薬のレシピ進呈」

 迷う余地のない選択だった。

「何故、即答だ!」

 先生は、怒っているようだが、まったく意味がわからない。

「誰でも知ってる創薬レシピと、セクハラ先生とのデートじゃ、まったく釣り合わないよ」

「「そうだな」」

「プレゼントを買ってあげるよ!」

「デートしなくても、ほいほい買ってくれるよね」

 海に来ただけで、いくら使わせているのか、正直、知らない。

「完敗だ!」



 先生の気が変わる前に教えてもらうため、材料を調達に行くことになった。

 表も裏も、不祥事を起こした芸能人ばりにお姉さんがひしめいているので、外出を控えていたのだが、外に出たくなったのだから、仕方がない。

 まずは、ジョエルに派手な服を着せて、屋上から落とす。助走をつけたジョエルは、見事にお姉さんの壁の向こうに着地した。そのまま早歩きで遠くに行ってもらったら、お姉さんの大半がいなくなった。先生よりもジョエルの方が人気があったのだろうか? イケメンに転生しなくて良かった。

「よし、今のうちに出るぞ」

 私は、キーリーとタケルと一緒に玄関から堂々と出ることに成功した。

 玄関を開けた瞬間、人が殺到してきて怖かったが、みんなキーリーを見て逃げて行った。

「キーリーは、不細工に生まれて良かったね」

「うるせぇよ。俺だって、そんなに酷い顔はしてねぇよ」



 初めて薬草問屋さんに来た。それに気付いて、びっくりした。冒険屋よりも、シュバルツ城よりも、海水浴場よりも、真っ先に来なければならない場所ではなかったろうか。創薬から逃げてきたのが発端だったので、まったく考えもしなかった。仕事に飢えて、なんとか始めた新人薬師なのに、まったくやる気が感じられなかった。

「すっごー。何これ。商品いっぱいすぎて、何する場所か、わかんないね!」

「お前な。一応、今大注目の売れっ子薬師なんだぞ。薬草覚えたんだろ?」

「えー、弟子が勝手にイロイロ私の名前で作っただけで、私は何もしてないよ。あれ作れ、これ作れって、無茶振りしてただけで」

 薬草の正式名称も知らなくて、弟子に怒られてる師匠ですよ。確かに、売り上げだけはすごいけど、作る作業も嫌になって逃げ歩いてる体たらくだ。今も逃げずに作り続けている助手村人Dの方が、薬師としては上と言わざるを得ない。

 あまりにも役に立たない薬師なので、注文はすべてキーリーが済ませてくれた。最近は、創薬を手伝ってくれていたので、村で足りない物も私以上に把握していた。魔法薬関連の注文だけでなく、村で使う分もまとめて発注してくれた。弟子に逃げられて回らなくなっている分も、キーリーを補佐にしたら何とかなりそうだと思った。

「じゃ、品物は揃ったら宿に届けてくれ。代金は引き換えで払う」

 そう言って、店を出た。

「教えてもらうのに、先生にお金を払わせるの? ひどくない?」

「いいんだよ。あれは、支払うことで自己顕示してんだから。あいつから財布を取り上げたら、何も残らないだろ?」

「そんなことないよ。すごい魔法をぽこぽこ使えて、イケメンで、惚れない女はいないんだよ」

 確か、本人がそう言っていた。魔法のチョイスさえ違えば、私も素直にすごい魔法使いだと感動するし、顔もキレイだと思う。あの顔が、何かの役に立った記憶はないが。

「お前は、あいつに惚れてんのか?」

「惚れないよ。セクハラ、ダメ、絶対」

「ちょっと同情心わくな」



 今現在戻っても、お姉さんの壁が復活して帰れないだろう、ということで、市場に来て、食材の買い出しと、食べ歩きをすることにした。

「今晩、何か食べたいものある?」

「お前の国の料理」

「えーっ、ざっくりし過ぎだよ。この世界と同じくらい種類があるよ」

「じゃあ、お前の好物」

「ケーキ? 前に作ったら、食べなかったじゃん」

「あれが、お前の1番なのか?」

「兄弟みんなで作るど素人ケーキだよ。洗練された美味しさじゃないけど、我が家の味なの。年に6回食べるきまりなんだよ」

「エールギースみたいなもんだな?」

「何それ、聞いたことないよ」

 エールギースとは、動物の内臓で作ったお菓子で、7歳の誕生日を超えるまで、新年のお祝いの席で食べないと許されないものだそうだ。お菓子と呼んではいるものの、苦くて臭い食べ物らしい。

「全然違うし。うちの弟妹に謝れ」

「今度、食わせてやるから、機嫌直せよ」

「私は20歳だ。いらん!」


 その後、お姉さんをまいたジョエルと合流したのだが、別荘に戻るのが面倒になって、村に帰った。

次は、ssか、閑話か。

今日は書きすぎました。

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