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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第四章.愛する私のシャルルへ

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58.閑話、キーリー視点

あけましておめでとう御座います。

本年もよろしくお願いします。

 やっとシャルルが帰ってきた。

 見つけた時は、嬉しかったのに、誰だか知らんヤツの名前ばっかり言ってるシャルルにムカついた。急にどこかへ消えやがって、どれだけ絶望したと思ってるんだ。帰ってきたなら、戻ってこいよ。


 事情を知っているらしい白髪男についていく。

 シャルルは、この城の持ち主のところへ行っていたそうだ。寝室の絵を見た時、とてもそんな風には思えなかったが、城主はシャルルのひいじいさんか何からしい。それが本当なら、この城の跡取りはシャルルなのか? マジか。そんなネタは、もう腹いっぱいだ。いらない。


 シャルルが連呼する男が、じいさんの上、もう死んでるならいいやと思っていたら、バケツの中から指輪が出てきた。「愛する私のシャルルへ」って、何だ。ボケシャルルのじじいだとしても、可愛い孫娘へのプレゼントじゃないだろう。シャルルは、俺のだ! 死んだ後まで、何してんだよ。文句も言えねぇじゃねぇか。

 シャルルは親孝行の指輪を外して、ジジイの指輪をはめた。くそムカつく。



 帰りに、買い物に行くことになった。

 服なんぞ、着れれば何でもいい。シャルルに罰として見立てろ、と言ったら、ジョエルと白髪男も便乗してきた。バカめ。

 俺の服は、いつもと大して変わらないような服を選んできたが、ジョエル用は女物しか持って来ない。白髪男用に至っては、仮装服しか持って来ない。まともに選んできたのは、俺用だけだ。他の2人用は、明らかにふざけている。真面目に選んでいない。日頃の恨みがこもっている。諦めて、着ればいい。


 次に、シャルルの服を買うことになった。

 ジョエルは、いつもの通り緑のフリフリ服を持ってきた。白髪男は、服なのかどうかからよくわからんような物を持ってきた。海だからと、自称水着も持ってきたが、こんなの着せて外に出すとか、正気を疑う。仮装服を選んできた意趣返しのつもりかもしれないが、そんなことばっかりしてるから、仮装服しか持って来ないんだろうよ。俺は、黒と灰色の作業服と、街歩きができそうなセットアップと約束した靴を積んだ。

 外用の靴は重い。履いて歩けるかは知らんが。


 家具は、そもそもいるかどうかから不明なので、材料の木材や金具だけ発注した。道具類も買い込んで、食料調達に行く。

 シャルルは、呆れるほど、また携帯食料を買い込んだ。

「前から思ってたんだが、お前ら、なんでそんなにそればっかり買うんだよ。俺は、非常時だって食いたくねぇぞ」

「無人島に行った時、生きてられたのは、これのおかげだよ。キーリーが怖くて部屋から出れなくなっても、指輪作りに徹夜する時も、これさえあれば生きていけるのに!」

 半分以上、俺の所為か。なんてことだ。

「金はもう払ったんだ。茶色は放っておいて、こちらにおいで」

「先生、先生、あそこの串焼き30本買って! 大至急!!」

「任された!」

 白髪男は、飛んで行った。

「何が大至急なんだよ」

「えー。抱きつかれたくないんだよ。ピンチじゃん」

 びーびー泣いてたシャルルが、すっかり元に戻ったようだった。やっと戻ってきたと思えた。



 海水浴にやってきた。

 海に来たんだから当然の流れなのかもしれないが、気が重い。なんで泳がなきゃなんねんだ。なんでシャルルに水着着せなきゃいけないんだ。何考えてんだ。

 俺は、日焼け防止に頭までパーカーを被ったやる気なしスタイルでいるが、男2人は明らかにはしゃいでいる。いつの間に用意したのか、タケルまで水着姿だ。半裸男どもよ。うぜぇ、どこかへ消え去れ。


 海に行くぞ、と言った時、シャルルがいつものフードマント姿で出てきた時は安心したが、毒貝を拾って遊ぶと言い出したので、野放しにできないなと思った。そういえば、貝と釣りがどうとか言っていたことを思い出す。

「取るところまでは許可するが、食べるのは不許可だ。店で買って食えよ」

 買ってやると言っているのに、何故かいつも拾った物を食いたがるのだ。いつぞやは、毒キノコを毒キノコと知った上で食いたいと言っていた。なんで安心安全な物を食べようとしないんだ。また傷薬でどうにかなる予定なのか? 死ぬぞ?

 タケルが貝を食ってる姿にドン引きすると、案の定、釣りをすると言い出した。海だ、泳ぐぞ! という男もウゼェが、拾い食いしか考えない女もどうなのか。

 拾い食いを禁止したら、途端にシャルルが不貞腐れだした。どれだけ拾い食いに心奪われているのか。海をやめて、屋台にでも連れてった方がいいんじゃないか?  だがしかし、予想外の返事が返ってきた。

「水着は着てるけど、マントのままじゃ泳げないよ。でも、フード取れないでしょ」

 黒髪を隠す分別はついたようだが、裸を隠す分別はないのか? そうか、こいつは、混浴も辞さない女だった。そんなもの最初から、持ち合わせてないのか。  

 白髪男が、シャルルの髪色を変化させてしまった。マズイ。マントを脱ぐ前に手を打たなければ。

「ジョエル、なんでもいい。ダッシュで買ってこい!!」

 とりあえず、ジョエルは排除した。次は、白髪男だが。シャルルが、マントを脱ぐ方が早かった。

 シャルルの髪は銀色に、瞳は水色に変わっていた。腹立たしい色だが、似合っていた。だが、それより問題なのは水着だ。

「シャル! その水着はなんだ。話が違うだろ!」

「え? 村人Dにもらったんだよ? 昨日のアレよりはいいでしょ? え? アレ着なきゃダメなの? アレは、ダメだよね。いくらなんでもだよ。着たいなら、キーリーが着ればいい」

 半分ガッカリ、半分安心、半分腹立つこの気持ち。シャルルにまったく伝わらんことは、わかっている。俺にアレを着せて、どうしたいんだ。

「すっげぇサイズがぴったりじゃねぇか。ダコタの野郎、しばいてやる!」

 洋服だったら、大体でいい。だが、水着のサイズなんて本人だって試着しないと選べないような物じゃないのか? こいつは女だぞ?

 シャルルは、わりと最近、スタイルに大幅な修正が入った。なのに、何故こんなにちゃんと選べている? 村には水着など売っていないのに。



「じゃあ、泳いでくるねー。ナンパ頑張ってー」

 白髪男は、あることないこと吹き込んで排除した。シャルルにモテるところを見せつけてやろう、と勇んで行った。バカめ。

 自分にも自信がないので、タケルは連れて行く。ギルド指定の駆除魔獣だったのに、気付けば安牌なメンバーになっていた。おかしい。

「キーリーも、ナンパしてくればいいのに」

 これだよ。1番腹立つヤツ! 何もかもをぶち撒けてやろうかと思う瞬間だ。わざわざお荷物抱えて貢いでる男がいたら、普通わかるだろう! 最もらしい苦し紛れの言い訳を信じてんのか。有り得ん。


 ある程度深いところまで来たら、唐突にシャルルが泳ぎだした。歩くのも覚束ないヤツに、負けるとは思わなかった。凹む。

 だが、泳げるヤツがここにいるなら、教わって泳げるようになればいい。

 泳ぎを教えた経験があるのか、テキパキ指示されるのを素直に聞いて、練習に励む。水に浮く理論は全くわからないが、推進力は手に入れた。

 先生に、浮き輪があれば、完璧に泳げると太鼓判を押されたが、浮き輪アリなら元々困ってねぇよ。



 飯を食いに行ったら、雌の群れができていた。なんなんだ。あの阿呆共め、さっさと女を作ればいい。これだから、顔のいい男と女は嫌なんだ!


 午後も、水泳特訓だ。折角、見つけた指導員だ。陸にあげてもロクなことにならないんだから、大人しく俺に付き合っていればいい。もう少しで仕上がりそうなんだから。

 呼吸は、横を向いて吸う。吐くのは、水の中。泳法を考えれば、実に合理的な方法だった。ナズナの世界は随分と理路整然とした物が揃っているように感じられる。なのに、何故、本人はこんなに適当なんだろう。社会が機能的だと、人間は考えなしになるのか? いや、社会がどうだろうと、混浴はダメじゃないか? どんな社会だ。

「潮時だな。上がるか。褒美になんか食わせてやるよ」

「潮時?」

「髪色が、戻りかけてる」

「え? 水の中だけど、フード出した方がいい?」

「最悪、タケルに制圧させるから、いい」

「え? 殺しちゃダメだよ」

「じゃあ、俺の腕にでも、しがみついてろ。俺のもんだって主張しとけば、横取りにくるヤツもいねぇだろ」

「そういうもの?」

「可愛い娘の1人も守れねぇで、何が父親だ」

「そっか。そうだね」

 着替えて、フードをかぶるまでは、俺のものだった。海も、たまにはいいもんだ。

別荘から出れなくなりました。

次回は、だらだら過ごします。

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