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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第四章.愛する私のシャルルへ

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55.シュバルツのその後

 シュバルツ。泣かないで。シュバルツ。

「おい、こら、テメェ、シュバルツって、なんだ!」

 目を覚ましたら、殺し屋がいました。儚い一生でした。

「やめろ。ルルーが泣いてるだろう」

 ジョエルいた! やっと見つけた!

「ジョエル、ジョエル! シュバルツを助けて欲しいのー! シュバルツを泣かせちゃったの。助けて!」

「よしよし、もう大丈夫だよ。落ち着いて。シュバルツって何? 犬? 猫? ウサギ?」

「ヒト! 黒い人!」

 はたと、気付いた。ここは、城だ。シュバルツは、何処だ?

 シュバルツの部屋は、1番上だ。誰かが来ても見つからないように、誤魔化せるように、上に作った。私は、階段を駆け上がった。息がきれて、へろへろになったが、部屋に着いた。シュバルツの部屋があった。


 シュバルツの部屋は、黒くなかった。あの日のままだ。観光客さえいなければ、同じだ。でも、増えているものがある。壁に大きく描かれた絵。緑の服を着た黒髪の女。それより背の高い黒い人。シュバルツ。2人が仲良く手を繋いでいる絵だった。

 なんだよ。シュバルツ。心配したのに、結構余裕だな!


「この絵、お嬢さんに似てるよね。何処に行っていたの?」

「シュバルツのところ。シュバルツを探さなきゃ」

 階段を走り降りようとしたら、先生に止められた。

「シュバルツ博士のところに案内してあげるよ。ついておいで」

 私が果樹園を作った方へ、歩いて行った。妄想だったのか、植えた木は一本もない。

「いっぱい木、植えたのにな。全部ダメだったか」

「以前は、見事な果樹があったよ。育つハズのない品種ばかりで、とても不思議だった。博士自身が世話をしないと枯れると言っていた。誰に教えても育てられない、と」

「そっか。シュバルツ、育てられたんだ。だったらいいや」

 そこを抜けると見晴らしのいい丘に出て、いくつかの碑があった。


「シュバルツは?」

「これ、全部だよ。シュバルツ博士の功績は、素晴らしいものだった。オレも惜しんだよ」

「また会う約束をしたの。もう会えないの? シュバルツ、寂しがり屋なんだよ。私も会いたいよ」

「悪かった。こんなことになるなら、本人の意思など尊重せずに、生かしておけば良かったね。ところで、シュバルツ博士からの伝言を伝えるよ。『もう一度、穴を掘れ。』お嬢さんには、何のことだかわかるかな?」

「穴?」

 私がシュバルツと一緒にいた時間は短い。穴と言えば、あの穴しかないだろう。

「こっち」

 水が欲しくて掘った穴だ。結局、あれは役に立たなかったのだろうか。穴を掘った場所に行ったが、元通りの穴のない場所になっていた。

「秘密兵器! あ、、、」

 そうだ。でっかいシャベルちゃんは、置いてきてしまったんだ。どうやって穴を掘ろうか。手? 手でいけるかな?

「ちょっと待った、お嬢さん。何にもないが、ここであっているのかい? 掘るなら、許可を取ってくるから待ち給え」

「そうか。許可、、、」

「君とシュバルツ博士の関係性は何か、わかるかい?」

「よくはわかりませんが、かなり濃い血縁の誰かだと思います。髪が同じなだけでなく、顔が双子のようでしたから」

「了解した」



 先生は、ぞろぞろ人を連れてきて、穴を掘る許可を取ってくれた。今は、彼らの監視の下、ジョエルとキーリーが穴を掘ってくれている。私は、先生とタケルと近くに座って、それを見ていた。

「なんでこんなに簡単に許可が出たんですか?」

「『穴を掘れ』は、有名な話でね。皆興味があるのさ。ひ孫を見つけたから連れてきたと言ったら、簡単に許可が降りたよ。オレが、ここの管理に金を出してるのもあるだろうけどね」

「私、ひ孫だったんですか?」

「知らないよ。年齢的にはそれくらいだと思っただけで。シュバルツ博士は、君のことを妻だと言っていた。結婚したの?」

「そうですね。長く一緒にいたら、したかもしれません。でも、3日しか一緒にいられませんでした」

「3日であの熱量か。流石だな」



 シュバルツのその後の話を聞いた。シュバルツは、結局、ツガイになることなく生涯を終えた。ツガイに迎えられることにはなったのだけれど、その時に、島でいろいろな発明をしているのに目を向けられ、そのまま研究開発を続けることが許されたそうだ。

 シュバルツは、浄水システムを作り出した偉大な博士になっていた。私が眠気覚ましや暇つぶしに、ちょっと漏らした情報を熱心に研究したらしい。なんというハイスペック超人。シュバルツが作ったというシステムの模型を見ても、ちょっと理解ができなかったんだけど!


「他にもね。携帯食料を開発したのも彼だったし、窓ガラスを作ったのも彼だった。お嬢さん、携帯食料大好きだったよね?」

 バレている。バレている! 先生に疑われている。

「アゴが痛くなるので、1か月は見たくないですよ」

「そうか。それは大変だね」

 そっぽを向いて、口笛でも吹いてやろうかと思った時、キーリーに声をかけられた。

「シャルルの馬鹿! 宿のバケツが出てきたぞ!」

 ヤバイ。告白する前に、キーリーにバレた。


「ごめんなさい。今すぐ仕舞いますー」

 シュバルツ、穴を埋めたなら、バケツも片付けておいてくれたら良かったのに!  早急に証拠隠滅しに走ろうとして、先生に捕まった。

「ちょっと待った。バケツの中身は何かな?」

「中身?」

「バケツだ」

「バケツ」

 バケツを取ったらバケツが出てきて、バケツを取ったらまたバケツ。バケツマトリョーシカをどんどんむいていったら、最後に小箱が出てきた。

 小箱を開けたら、指輪が2つ入っていた。


「愛する私のシャルルへ、と書いてある。君宛てのプレゼントで間違いなさそうだね」

「シュバルツ、私の手が指輪でいっぱいになっちゃうよ。大変だよ」

 試しに、指にはめてみたら左手の薬指にぴったりだった。恐るべし、シュバルツ博士の観察力と記憶力。



 次の日、花を持って、またシュバルツのところに遊びに来た。

「シュバルツは、私を妻だって言ってたって言うけど、私が生まれてるんだから、結局、奥さんいたんだよね?」

「いや、博士の妻はお嬢さんだけだ。彼は聡明なだけでなく、美しい容姿に恵まれていたからね。通いの女は何人かいたようだが」

「通いの女? 何人か? 普通に結婚してて欲しかった!」

 長生きして、幸せになってって言ったのに。なんでそうなった? どうしようと、シュバルツの勝手なんだけど! だが、なんとなく嫌だ。

「仕方がないだろう。彼は聡明だった。そうしなければ、お嬢さんが生まれないことに気付いたんじゃないか?」

「だったら、普通に結婚しろよ!」

 もう意味がわからないよ、シュバルツ!


「で、気は済んだのか?」

「まだだよ。いろんな人に謝らなければならないの。ジョエル、キーリー、ごめんなさい」

 シュバルツの墓前で土下座。謝るのに、最も適当な場所かもしれない。

「無事戻って来てくれて良かったよ。心配はしていたけれど、怒ってはいないよ」

 ジョエルに抱き上げられてしまった。 怒られずに済みそうなのは幸いだが、理解されていないのも困る。

「ちが、そういうことじゃなくて、ジョエルとキーリーの服を大量にシュバルツにあげてきたの。携帯食料もほぼ全部あげちゃったし、宿の家具も置いてきたし、他にもいろいろ」

「道理で、何処かで見たような家具ばっかだった訳だ」

「そうなの。ごめんなさい」

 告白しなくても、いずれというか、既にバレかけていた。ちゃんと謝ることにして良かった。

「無事戻って来てくれて良かったよ。シュバルツ博士が困っていたから、あげてきたんだろう? 博士がルルーの血縁なら、わたしにとっても大事な人だ。物はまた買えばいい」

「そうだな。今なら分厚い財布がある。気にしなくていいぞ」

「ちょっと待て。何故、オレが男に服を買ってやらねばならん」

「シャル、あのケチ男、金が尽きたらしいぞ」

「そうは言ってないだろう。よし、いいだろう。買ってやる。ただし、お嬢さんの服も一緒だ。オレが選ぶ」

 そのまま買い物に行く流れになった。


「ジョエル、ごめんね。ちょっとだけぎゅってさせて。お返しはなしで」

「あ、ああ、いいよっ」

 唐突な別れが寂しくて、シュバルツの身代わりが欲しかったんだけど。

「やっぱりいいや。ジョエルごついし、後でキーリーに頼むよ」

 本当は、体型だけなら先生の方が近いけど、先生は、セクハラキングだからね。シュバルツに会いたかったなぁ。せめて、もっとちゃんとお別れしたかった。

「そっかぁ。そうだね」

次回は、閑話です。

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