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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第四章.愛する私のシャルルへ

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53.無人島サバイバル

 起きた!  私は、やっぱり城にいた。昨日出したベッドの上で、布団で簀巻きになっていた。何故だ!

「起きたか。どうだ、生きてるか?」

 クロは、ベッドの足元の方に座っていた。

「生きてるから、起きるんだよね? これ、どういう状況?」

「起こしても起きなくなったから、心配でアレコレやってみた結果だ。生きてるなら良かった。心配で死ぬかと思った」

「それは、、、ごめんね?」

 携帯食料で朝食をとると、クロは寝てしまった。私は、タンスを解体して、窓を塞ぐ木戸を作る。もちろん、寝ている人の部屋ではやらない。別の塔に来ている。城全部の窓を塞ぐのだ!

 こんなこともあろうかと、ノコギリや金槌や釘も持っているのだ。定規やメジャーがないのは失敗したが、ないよりマシ程度の物でもいいから、作るのだ。きっと一個作れば上達する。窓はいっぱいあるのだ。考えるより動かなければならない。


 作業が全然進まなくてイライラしていたら、後ろからタックルされた。何かと思ったら、クロだった。

「ひっ! 急に、何? ノコギリ持ってるんだよ。危ないよ」

「いなくなったと思った」

 ちょっと前に、「誰だ!」とか言ってたくせに、もう懐いていた。タケルより早いな!

「ごめんね。今夜は昨日より暖かく過ごしたいと思ってさ。頑張ってたんだよ。と言っても、まだ窓2つ分しかできてないんだけど。この城、窓いくつあるんだろうね。終わんないね!」

「一緒にやる」

 また携帯食料でお昼を済ませたら、クロに木戸を作ってもらう。最初は、2人でやっていたのだが、2人で作業するよりクロが1人で作る方が早かった。おかしいよね? 論理的じゃないよね? おかげで、クロの部屋を作った塔だけは、窓が出来上がった。


 今日は、ベッドで一緒に寝る。暖房器具がないと嘆いていたが、すぐ側に暖房器具がいることに気付いたのだ。私もクロを温めるのだから、対等だ。何の問題もない。

 実家の夢を見た。 夢だけど、弟妹に会えて、嬉しかった。



 次の日は、完全分業制だ。窓塞ぎの件では、私は役に立たないことは理解した。それは完全にクロに任せて、私は違うことをやった方がいい。

 今日は、天気が良い。外に出て、果樹園を作ろうと思う。

 私は、遭難した時用として、果物の種を常備しているのだ。普通に植えたら、収穫まで何年かかるか知れないが、不思議魔法があれば、5分とかからず収穫できる。やりすぎると魔力切れで倒れることと、成長を考えて間をあけて植えること。注意が必要なのは、それくらいだ。

 気候が合う物、潮風に負けない物がどれなのかは、わからない。手当たり次第に植えて、どれか1つでも残ればいいね作戦だ。私の魔力など、どうせ他に使い道はない。倒れない範囲なら、ばんばん使って構わない。


「シャルル!」

 問題があるとしたら、ちょっと側を離れると、すぐにクロがこっちに来てしまうことだな。作業効率が上がらない。

「クロ。窓はできたのかな?」

「新しいのができた。見て欲しい」

 効率的ではないが、私より作るのが早いし、一応、1つは出来上がらないとこちらに来ないので、私が作業してた時よりはいい。自分で窓を作るのが嫌だから、そういうことにしているだけかもしれないが、生活スペースじゃない窓なんて作りたくないから、文句は言わない。

「そうだねぇ。でも、こっち来ちゃったんだし、私の成果を見てよ。果物作ったんだよ。気が向いたら、食べてね」

 まだ蜜柑と林檎と葡萄しかないけどね。


 蜜柑をもいで、2人で食べた。水分補給にもいいかもしれない。そうか、水か。。。

 私は多少の水を持ってきたが、もうとっくに使い果たした。城に雨水貯蓄装置があって、今はそれを使わせてもらっている。クロだけなら足りていたかもしれないが、私が増えた。

 クロは節約して使っていたんだろうに、現代っ子の私は、クロほどストイックには節約できない。我慢にも限度がある。我慢方向の努力は無理だ。死んでしまったら、水が残っても仕方ない。だが、水の確保を協力できなければ、申し訳ないにも程がある。

「濾過するか、一回蒸発させるか、なんだよね? 海水って、濾過してなんとかなるものなのかな?」

 日本のテクノロジーを使えば、なんでもアリだと思うが、薪だって無限にはない。この島は、狭いのだ。私がいろいろ持ち込んだ物でどうにかなると最高だが。

「貧乏って言ったって、水は水道水だったもんなぁ。小石や砂利だけでイケる? 炭作る燃料があったら、炭なんぞいらんっつーの。あれ? 砂浜で2、3日で炭作る話なかったっけ?」

 異世界転生主人公たちよ。その英知を我に分け与え給え!

「よし! とりあえず穴を掘ろう。秘密兵器でっかいシャベルちゃん、君の出番だ!」

 落とし穴として活躍しない場所を選んで、穴を掘ってもらった。そう。掘ったのは私ではない。クロだ。どうせくっついてくるなら、やって貰えばいい。私は、村の子どもより使えない女だ。無人島で一人暮らしができるクロに、敵うものなど何もないのだ。

 そして、バケツに海水を入れた物をしこたま穴に置いてもらう。頑張れ、クロ! 何も入っていないバケツを真ん中に置いたら、鉄板で蓋をした。一枚鉄板ではない。以前、護衛のお姉さんたちとバーベキューした時に使った鉄板を全部出して、敷き詰めた。密閉性が甘いのだが、これでなんとかならないか? やっぱり素人発想ではダメか? 

 濾過装置も作ってみたけど、やはり砂利と小石だけでは厳しそうだった。濾過した結果、キレイになったか、より一層汚くなったか、とても微妙だと思う。水質検査薬もなく、人体実験をする勇気もない。どうしようもない。特待生だと驕っていたが、私は理科で何を学んできたのだろうか。もう風呂に入りたい。


 ごはんを食べながら、今後の作戦会議をした。食料は、私が山ほど持ってる携帯食料だ。シャルルが好きだったのか、とんでもない量を持っている。毎日同じでも食べ物がないより大助かりなのだが、あんまり食べ続けていると、アゴが痛くなるのと、水が飲みたくなるのが欠点だ。

「水の確保、携帯食料以外の食べ物が欲しい、防寒。あと何があったら、いいと思う?」

「シャルルがいたら、それでいい。シャルルは、外に出ない方がいい。奴らに見つかったら、奪われる」

「あー、そっか。女は売り物なんだっけー。髪切ったらいいのかな? でも、クロも長いもんね」

 何処でも、此処でも、あそこでも。なんでこの世界は、誘拐ばっかりなんだろうね。黒髪だけ人権がないかのように。

 幸い街からは離れている。なんでだか、歩いて渡れないようになっていたから、早々気付かれはしないと思うけど、用心はした方がいい。今はジョエルがいないのだから。

「あー、ジョエルがいたら、クロも助けてくれるのになぁ。どこ行っちゃったんだろう」

 ジョエルがいたら、とっとと島を脱出して村に帰れる。いないから、島を脱出すると危ない。ジョエル頼みが過ぎる。

「クロは、街に行っても誘拐されない? ここで過ごすより、インフラ的には楽だと思うんだけど」

「さあな。捕まって、ここに戻されるか、殺されるか、売られるか、ツガイのクロの数次第だろうな」

「うーわー。それはダメだね。絶対にだめなヤツだね。ここの環境をどうにかしよう」

 本当は、水をもっと増やしたいんだけど、どうしたらいいかわからない。干物でも作ろうか? 囲炉裏かかまどか暖炉でも作ろうか? 火事が怖いなぁ。

 結局、午後も果樹園を広げた。

「初日よりは大分暮らしやすいけど、ジリ貧だよね。何をどうしたらいいのか、わからないよ」

「シャルルは、すごいな。俺はもうこれ以上はいらないけど」

「無欲だねー」


 また夜が来てしまった。窓を塞いでしまったので、月明かりもないが、特に見るべきものもないので、カンテラも消して、2人で布団に包まっている。眠くなるまで、おしゃべりタイムだ。

「欲はある。シャルルだ。シャルルがいればいい。シャルルを死なせない」

「そうだねぇ。すぐ死にそうに見えるよねぇ。根性なしで、ごめんね」

 1人じゃ寂しいもんね。私もクロがいなかったら、何もしなかったと思うよ。作業効率より、一緒にいる時間を大切にした方がいいのかな?

「他にも、まだある。名前が欲しい」

「名前? そんなの付けちゃえば、簡単に手に入るじゃん」

「付けてくれ。クロじゃない名を呼んでくれ」

「ええーっ。私? 超苦手なんだけど」

 タケルの時のアレ再びなの? しかも、今度は人間ですよ。成人男性ですよ。えー。いやー! クロめっちゃガッカリ顔になってる。ヤバい。ダメだ。頑張れよ私。

「付ける。付けるから、考えさせて。ぱっとすぐは難しいから」

 でも、即座に付けないなら、それはそれでハードルが上がる気がする。



 ずーっと考えに考え続けて、全然寝れなかったよー。

 いや、何時間か寝てたけど、寝られなかったよ!

「クロー。名前なんだけどさ。どんなのがいいかな? 考えてみたんだけどさ。気に入ってもらえない気しかしないの」

「どんな名前? 俺は、シャルルが付けてくれるなら、なんでも嬉しい」

 ヤバイ。クロが可愛い。私より大きいのに、弟の御形や田平のようだ。くそー。喜ばせたいのにな。

「シュバルツ。私が生まれた世界で、黒って意味だった言葉なの。黒なんて嫌かなー、って思うけど、クロだったから仲良くなれたのかな、って思うし、頭文字がお揃いだから。そんなの嫌かもしれないけど。、、、ごめん。まだ考えられるから」

 だ、き、し、め、ら、れ、ま、し、た!

「ありがとう」

 喜んでくれた? 良かった。だけど。

「シャルル?!」

 私の身体が光りだした。足が消えていく。

「ごめん。なんだかよくわからないけど、私はこれでお終いみたい。あんまり活躍できなくて、ごめんね」

 折角仲良くなったのに、クロと、シュバルツと離れるのは、嫌だ。私が消えるなら、連れて行く訳にはいかないのだけど、置いて行きたくもない。1人で生きていけるだろうけど、シュバルツは寂しがり屋だ。ひとりぼっちにしたくない。心配すぎる。

 シュバルツが、無事に生きていけますように。幸せになりますように。私は、気合いでどんどん物を出す。私が持ってる食べれそうな物を全部。あと、傷薬。道具類も可能な限り置いて行こう。手が消えてしまう前に。

「シャルル、ダメだ。消えるな!」

「また会いに来るから。だから、それまで生きていて。食べ物置いていくから。幸せになって、シュバルツ」

 私は、全て、消えてしまった。

次回は、閑話です。

書けば書くほど凹む日々。

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