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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第四章.愛する私のシャルルへ

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52.クロ

すみません。

午前中に投稿したつもりが、失敗しておりました。

 いなくなったのは、ジョエルたちだけじゃない。激混みでうじゃうじゃいた観光客もいなくなっている。ちょっと道をハズれたとして、1人になることがあるとは思えない。私は、どうしてここにいる?


「誰だ!」

 背後から声がした。振り向こうとしたところで、ダン! と力づくで押さえつけられた。

「痛いっ」

「お前は誰! っだ?」

「ゔーっ」

 ひどい。また頭打った。痛い。私が一体何をした? お前こそ誰だよ!

「なぜ、泣く?」

 組み付いて来たのは、男だった。こちらに来て、初めて見た黒髪の男だった。

「頭打って、痛いからだ!」

「避ければ良かっただろう」

「避けれなかったんだよ!!」

 勝手に押し倒してきて、何という言い草だ。ひどすぎる。避けれるものなら、そりゃあ避けていただろうよ!

「お前もクロなんだな。悪かった」

 やっと離してくれた。全く意味はわからないが。

「クロじゃないよ。シャルルだよ」

「シャルル? 名前か?」

「そうだよ。あなたは?」

「クロに名などない。クロはクロだ」

 えー、何それ。また新ルール? 覚えなきゃいけないヤツ? もうそういう訳わかんないの、いらないよ。

「クロって、髪の毛の色のことだよね?」

「そうだ」

「髪の毛黒い人の名前が皆『クロ』だったら、わかりにくくない? 誰かが付けてくれないなら、自分で付けたっていいと思うよ」

「お前は、自分で付けたのか?」

 すごい驚いた顔をしている。なんかこの顔、どこかで見た顔じゃない? 思い出せないけど。

「私の名前かー。誰が付けたんだろね? 私、ここ数ヶ月くらいの記憶しかないからさ。その前からシャルルって名乗ってたって聞いただけで、名付け親が誰なのか、わからないんだよ。考えたこともなかったし」

「記憶がない? 記憶がなくて、大丈夫なのか?」

「大丈夫とか、大丈夫じゃないとか関係ないよね。ない物は、どうしようもないよ」

「強いんだな。悪かった」

 2人でずっと床に座ってたんだけど、クロは立ち上がって、手を差し出してきた。仲直りの握手かな? 立つの手伝ってくれるのかな? また投げられるのかな? ドキドキするね!

 どうしたらいいか考えあぐねて手を見ていたら、腕を引っ張られた。立たせてくれるヤツだった。

「ありがとう」

「俺が転ばせたからな」

「そういえば、そうだったね」

「お前、、、、、」

「今、頭打ったからね。忘れたんだよ」

「すまなかった!」

 表情がすごい困ってる。悪い人ではなさそうだ。

「記憶喪失ジョークだよ。気にしない、気にしない」

 さっき上ってきたハズの階段に戻って、ちょっと降りたところの窓の外を見た。

「やっぱり」

「どうした?」

 クロがついてきた。

「ここ、海の中の城だよね?」

「そうだな」

 窓の外の景色は同じなのに、部屋の中は同じじゃなかった。部屋の形は多分同じだが、色が違う。床や腰壁は焦茶で、壁と天井はベージュっぽい色だった。同じお城で色違い。ジョエルがいなくて、クロがいる。これって、どういうことだと思う?


「まぁいいか。ちょっと向こう向いててくれる?」

 ダン、ダン、ダン!  私は、さっきの部屋に戻り、テーブルとイスを2脚取り出した。

「何だ? これは、どうした?!」

「あー、手品? 魔法? こんなこともあろうかと、色々持ってるんだよ。私」

 私の収納能力の底が今のところ見えてないのをいいことに、邪魔なものを仕舞っといてという人がいるのだ。私は今、家数軒分の家具を持ち歩いている。いちいち出したりしないから、テントとかも常時持っている。カタツムリやヤドカリと、たいして変わらない生活をしてるのだ。

「まぁ、座ってよ。今、お茶を入れるから」

 お湯は持っていない。水筒から、マグカップに入れるだけのお茶だ。

「どうぞ」

「ああ、ありがとう。、、、、、にがっ、なんだこれ!」

「濃い目の緑茶風飲料」

 黒髪ならいけるかと思ったが、村人Dと同じ反応だった。残念だ。

「お前は、普通に飲むんだな?」

「まぁ、私による私のための飲み物だからね」

 おお、おお、クロが、すごい我慢して飲んでいる。いい人じゃないか。村人Dは、絶対に飲まなかったよ。

「ここが何処か、聞いてもいい? 私、なんでここにいるか、わからないんだよね」



 クロは、クロの父とクロの母の下に生まれ、男はいらないと、この島に住まわされているらしい。クロのツガイが何組かおり、娘が生まれると出荷され、息子の場合は、ツガイに欠員ができるまで放置されるという。たまに食料が届く場合があるが、期待してはいけないそうだ。

 似たような話を想像したことがあった。あの時は、ただの冗談だったが、こちらは実話だ。とてもひどいと思うのは私だけで、クロはそれが普通だと言う。

「クロ以外を羨ましいと思わないの?」

「俺は、あんなヤツらになりたくはない」

「そういう意味じゃなくて、、、わかった。少し改善しよう」

 そろそろ日暮も近い。暗くなる前に、頑張ろう!  



 全ての部屋を見て回ったが、見事なまでに何もなかった。1番上の階にクロの部屋を作る。ベッドを置き、布団を乗せる。チェストを置いて、ジョエルとキーリーの服を入れる。もう1つのチェストは、瓶詰めだ。ここまでで、今日の作業は、終了だ。暗すぎるので、カンテラを付ける。

「すごいな。シャルルは」

「私は何もすごくないよ。すごい人が、これをくれただけだよ」

 正確には、もらっていない。無断使用しているだけだ。罪は後で償おう。償う機会に恵まれればだが。謝って許されるように、大事な品が含まれていなければいいね。

「にしても、寒いね。暖房器具は持ってないなー。困ったね」

 まず、窓が全開なのが、どうしようもない。ガラスの窓とは言わない。木戸でもなんでも、とりあえず塞がないと、温まるものも、温まらないよね。

「よく何もなくて寝れたね」

「寝るのは昼だ。夜は徹夜で走っている。動いてないと死ぬ」

「マジか! そんな体力ないよ。今夜死ぬよ! 死んじゃうよ!!」

 ありったけの服を着込めばなんとかなるかなぁ? とりあえず冬服に着替えてみる? 寝袋だったら、いける?

 この部屋の窓は、タンスを出して、塞いでみた。あまり塞げていない気もするが、ないよりはマシになったと思う。

「死なせない。一緒に頑張ろう」

 寝ないで、おしゃべりをした。頑張って起きていたけど、予想通り、いつの間にか寝ていた。

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