50.閑話、ローワン視点
悪の魔法使いによって、天使様は奪われてしまいました。特級傷薬を作る天使様は、失われました。仲の良かったご両親と、つかみ合いのケンカをするばかりになってしまったのです。
薬なんて知らない、と言われ、絶望致しました。ずっと天使様の村で過ごして来ましたが、帰宅しようと思います。
天使様との生活は、素晴らしいものでした。
素晴らしい薬を開発した割に、まったく薬草に対する知識もなく、創薬する腕力もなく、最初は不思議で仕方がなかったのです。ですが、一度教えたことはすぐに理解し吸収して、考えもしなかった知見をするりと披露されることに、驚かされる毎日でした。与えられる課題も斬新で、飽きることなく取り組みました。
ですが、その生活も、もう終わりです。
帰宅後は、大変でした。
足りない物尽くしで、すぐに薬師に戻ることはできません。客も離れています。何も知らせず、急にいなくなったのだから、仕方のないことですが、元通りの生活に戻すために、忙しい日々を過ごしました。
天使様のところで開発させて頂いた薬は、飛ぶように売れます。新しい客層の開拓は、容易でした。それと共に、従来薬の売り上げも、元通りに回復しました。
薬師としての仕事が落ち着いてきた頃、黒髪の村で同じ薬が売られているのを知りました。どちらが本家かと聞かれたのです。もちろん、あちらが師匠で、自分が弟子だと答えました。しかし、村で創薬をしているのは、誰でしょうか? 天使様が、天使様に戻られたのでしょうか?
居ても立っても居られず、馬を用立てました。天使様が戻られたか、確認するためです。荷物を持たず、不休で走れば、1日で到着します。替え馬を使って、天使様の下へ、わき目もふらず駆けつけました。
創薬ルームに入ると、ダコタさんが1人で毛染め剤を作っていました。
「ご無沙汰しております。天使様は、ご在宅でしょうか」
「こんにちは、ローワンさん。お久しぶりですね。シャルルちゃんは、今頃、海で泳いでいますよ。覗きに来たのですか?」
「違いますよ。天使様が薬師に戻られたと伺って、ご挨拶に参ったのです」
「そうですか。では、存分に挨拶してくれて、構いませんよ。薬師シャルルとは、ボクのことです。名義を借りて、商売をさせてもらっているのです。少し前のローワンさんと、同じですね」
「へ? 天使様が戻られたのでは、ないのですか?」
「毛染め剤の収入が美味しいので、引き継いだのです。このまま稼いで、若い嫁をもらうんですよ!」
なんということでしょうか。僕の早とちりでした。あの日々が帰ってくると信じたかった、妄想でした。
すっかり落ち込んで、一泊したら、帰りました。少し冷静になって、きちんと話を聞いていたら、ダコタさんの企みに気付けたでしょうに。
「シャルル様に近付く男は、いらないんだよ」
という声を聞き逃してしまったのです。一生の不覚です。
次回、また観光に出ます。
気がつけば、投稿開始から一月経っていました。
よくも続けたものだと思いました。
日和って終わりに向かって畳んでいるのですが、
まだまだ残りがあります。
読んで下さった方、ブクマ、評価を下さった方、ありがとうございます。
もう少し頑張ります。




