41.閑話、キーリー視点
あの日、あの時、くそ野郎の魔法の所為で、俺の可愛いシャルルはいなくなった。残ったのは、笑わない人形のようなシャルルだ。
以前は、こいつのことが好きなんだと思っていた。でも、元に戻って、勘違いだったと気付いた。見た目が同じでも、全然違った。今更気付いても、もう遅い。
シャルルが逃げ出したから、捕まえた。保護するためだったが、罵られた。俺は、シャルルに尽くしているつもりで、全く感謝されていないことを初めて知った。言われて納得したが、許せなかった。
俺を罵るのは、構わない。だが、俺のシャルルの身体を奪ったのは、許せなかった。
俺は、シャルルのおかげで、あいつに出会えた訳だが、あいつはすっげぇ迷惑だったろう。何も関係ないのに巻き込まれて、頑張っていた。頑張らなくていい、と言ったのに。
シャルルの勝手を許す訳にはいかない。ジョエルと監視することにした。
ジョエルが、シャルルが変だと言い出した。あいつが変なのは今に始まったことではないが、シャルルが変なのは気になる。食事を名目に様子を伺うことにした。
確かに、シャルルは変だった。いつも無感動に真っ直ぐ前だけを見て歩くヤツだったのに、周囲を見回しながら歩いている。まるで、あいつのようだった。
いつか何処かで聞いたような会話が続く。あいつのことを思い出す。イライラする。俺は、あいつを守らないといけないんだ。ツライ。
「お前、いい加減にしろよ。これ以上、変なことするな!」
「私が何したって言うの? 変かもしれないけど、悪いことなんてしてないよ」
あれが悪いことじゃなければ、なんなんだ! 不満があるのは、分かった。だが、何をしてもいいとは言わせねぇ。
「るる!」
タケルが来た。いつぶりだ? お前は、シャルルがどっちでもいいのか? 黒けりゃ何でもいいのか。
だが、こいつの方がシャルルがわかるらしい。
「える、るる、もどった」
「戻った? まさか、また?」
戻った? 戻った? 何に戻った。
「シャル、うちのイケメン、どう思う?」
「ムカつく」
即答だった。そんなことを言う心当たりは、1つしかなかった。
「あいつかもしれない!」
「ルルー、記憶はどうなってる? わたしたちのことは、覚えてないのよね」
そうだ。あいつが戻ってきても、もうあいつじゃない。あいつはあんなに頑張っていたのに、全てを捨てた。俺のことを全て消した。なのに。
「知らん!」
と言われて、めちゃくちゃ嬉しかった。我慢できなかった。すげぇ後悔した。
抱きついたら、拒否られた。
そりゃそうだ。俺は、見ず知らずの誰かなんだ。そんなことをして受け入れられる訳がない。だけど。
あいつが拒絶したのは、俺だけじゃなかった。あいつの笑顔を、俺が奪ってしまった。
シャルルは、猫だけは受け入れたらしい。ジョエルは、助っ人を呼びに出かけて行った。戻るまで、シャルルを守るのが、俺の役割だ。次は失敗しない。
シャルルに姿を見せることなく、護衛を果たすのが、目標だ。村の人間に周知するのは、簡単だ。だが、話を聞かない男が1人いる。案の定、接触した。
「やあ、お嬢さん、久しぶりだね。君と添い遂げる障害は、消え去った。さあ、こちらへおいで」
やむを得ず、シャルルの横を通り過ぎ、バカ男をヘッドロックして引きずり連れる。適当な部屋へ放り込んだ。
「お前は、バカか! 今、シャルルは人間恐怖症だ、と言っただろう。そんな状態で結婚したがるヤツが、何処にいるんだよ。しばらく出てくんな。俺も隠れてんだから。いいな。シャルルが部屋に戻るまで、この場を動くな。悪化するぞ」
「また時間さっこ」
「阿呆か! 反省しろ!!」
シャルルを部屋に戻して、食事を持って行った。
食事がとれるなら心配はいらないという気持ちと、外に出たかったと罵るシャルルの顔が浮かぶ。
魔獣の飯の心配なんかより、自分を大切にしていいのに。やっぱり、シャルルは、あいつなのか。
俺は、シャルルに何をしてやれるだろう。あいつの笑顔をもう一度見たい。
次回、助っ人到着。




