34.爆弾娘爆誕
ドゴーーーン!
「うっきゃーーーーー!」
やってしまった! マズイマズイマズイマズイ‼︎
「何だ? どうした⁈!」
もうもうと立ち込める砂埃のむこうから、ジョエルの声が聞こえた。良かった。とりあえず、生きているようだ。生きていてさえくれれば、あとは、特級傷薬でなんとかなるだろう。怒られるのは間違いないが、それは仕方がない。甘んじて受けよう。
「大変申し訳ありません。以後、このようなことのないように重々気を付けますので、どうぞお赦し下さいませ」
ジョエルからは見えないだろうが、私はその場で精一杯土下座した。
「で、あれは一体何だったの?」
自室は大変煙くてとんでもないことになったので、食堂に降りてきて、尋問再開だ。
「私ね。魔法の本を持っていたの。前から暇な時に時々解読しておりまして、少しだけ読めるようになったの。さっきも読んでたんだけど。音読してたのが悪かったらしくて、気付いたら部屋の壁を壊していました」
難しすぎて、いくらも読めない本。アラビア語の教科書を思い出して、懐かしくなって音読した。本の内容を考えて、もう少し考えるべきではあったと思う。だがしかし、私は通常魔法は使えないハズなのだ。実際、音読をしたのは初めてではないが、今までは何も起きなかった。何がどうしてこうなったのか、まったくわからない。
「今までは、できなかったのよね? どうしてかしら?」
「わかりません。身に覚えがありません」
「実験してみるか」
横で話を聞いていたキーリーが立ち上がった。
という訳で、やって来ました村の外! それほど遠くまでは来てないが、街道から離れた何もない場所だ。生えてる草には迷惑をかけてしまうが、それ以外には影響はないだろう。
「同じことをやってみろ」
「はい。、、、、氷の精霊グラスィェロよ。彼の地を息吹きで閉ざし給え」
ドカーーーンッ!
村人ギャラリーができているので、ちょっとだけ張り切って唱えてみたら、直径10mくらいのクレーターができた。やりすぎてしまった。
「ちょっと待て。なんで氷の精霊で爆発を起こしてんだよ。凍らせるんじゃないのか」
「知らぬ。本には凍らせると書いてあったけど、やってみたらこうなった。事実を直視しよう!」
本を書いたのは、私ではない。文句を言われても困る。
「ルルー、ちょっといい? これで、もう一度やってみて」
ジョエルに指輪を取られた。お揃いの指輪! 前に、指輪を欲しがってたけど、詫びに取り上げたりしないでね!
「氷の精霊グラスィェロよ。彼の地を御力で閉ざし給え」
さっきより控えめに唱えたのが良くなかったのか、何も起きなかった。そして、ジョエルは指輪をはめて真似してみたが、何も起こらなかった。キーリーも同じだ。何がなんだか、さっぱりわからない。
皆、それぞれ仕事があるので、お開きになった。指輪は、しばらくジョエルに預けることになった。寂しい。
「さすがは、天使様でしたね。神々しかったです」
いつものほわほわ笑顔のローちゃんさんと、創薬に励む。ちなみに、髪色は赤毛に戻っている。痛んだりもしていないようで、開発成功だ。髪用染料は、飛ぶように売れているので、生産が追いつかない。頑張って作らないといけないのだ。髪色が黒になるだけで、超級美人になれるのだ。ダイエットするより、美容法を試すより、お手軽度がハンパではない。美を求める人が、目の色を変えて買ってくれるのが、簡単に想像できる。是非、誘拐対策をしてから使って欲しい。
「宿の壁を壊しちゃったんだよ。補修費いくらかなー」
「それは、染料が売れて、幸いでしたね。頑張りましょう」
「だねー」
しゃべる間も、手は止めない。なんだかわからない草をゴリゴリ潰している。家内制手工業なのがツライ。機械化したい。だが、異世界ファンタジーの主人公のようなノウハウを、私は持っていない。こんなことになると知っていれば、毛染め剤工場について、勉強しておいたのに。どうやって勉強するかも、思いつかないけど!
材料を育成魔法で増やすのを禁止されているのも、痛いところだ。まあ、植物性ではないものは、どうせ増やせないので、無敵ではないが、これでは私のアドバンテージはないも同じだ。
「ジョエルは、魔法を使った時、指輪の石が光ったって言ってたが、この石は何の石なんだ? 入手先は、知ってるか?」
いつものお目付け役はダコタだが、問題を起こしたからだろう。今日は、キーリーがついている。やってしまった感がいつまでも消えないのは、その所為かもしれない。
「ドラゴンさんの宝物庫から、無断持ち出ししました。容赦なく沢山持ってきたので、激ギレで村まで取り返しにくるかもしれません」
いつぞやまでは、ド貧乏ヒモ暮らし街道まっしぐらだったが、こっそり一生遊んで暮らせるだけの宝石を手に入れていたのだった。うひゃっほーい。換金方法がわからないし、換金に行けば誘拐されるので、無駄な蓄財だけどな!
「ドラゴンは、何でもお前にやるって言ったんだ。怒りゃしねぇと思うけども。何の石なんだろな?」
キーリーが、部屋を出て行った。
「天使様、やっと2人きりになれましたね」
ローちゃんさんが発言した瞬間、矢がシュン! と飛んできて、乳鉢を割った。ドアの隙間から、殺し屋の目が見えた。
「部屋にいなくとも、宿の中の音くらいなら拾えるんだ。大人しく、創薬だけしてろ」
怖い怖い怖い! 私は、腰がくだけて立てなくなった。
次回、新キャラ登場。
まだ一人称を何にするかも決めてない。
どうしよう。




