28.閑話、パーカー視点
すみません。
昨日あげる予定の閑話をあげ忘れておりました。
俺の名はパーカー。19歳。公園の清掃管理をしている。ジョエルの4番目の兄だ。
ジョエルには、感謝している。
うちは、そろそろ女の子が欲しいのに、と産んでも産んでも男しか生まれなかった5人兄弟だ。最終的に両親は、末弟であるジョエルを女の子として育てた。ジョエルが生まれてくれなければ、ジョエルが受け入れてくれなければ、その役目は、自分に回ってきたかもしれない。
弟は、女装の所為で苦労していた。可哀想だが、助けなかった。あまりにも馴染んでいるからいいじゃないか、と目を逸らしていた。
服装だけなら、まだ良かった。弟は、大きくなっても着こなして、立ち居振る舞いや話し方にも気を配っている。親の期待だけで、そこまでする必要はないのではないか、と思うくらい弟は頑張っている。
それに気を良くしたのか、勘違いしたのか、両親は、男との結婚を勧めているらしい。あまり自信はないのだが、弟は男が好きではなかったと思う。本当に、弟がいて良かったと思った。
そう思っていたのだが、弟は家を出て、変わってしまったようだ。今度、亭主と子どもを連れて、帰省してくるらしい。亭主もおかしいが、子どもって何だ? まさか、産んだんじゃないよな? 亭主の連れ子だろうか?
話を聞いて、恐怖した。ジョエルは、もしかしたら自分がなったかもしれない存在だ。帰省してきたら、温かく迎えてやろう。優しくしてやろう。
ジョエルは、約束通り旦那と子どもを連れて戻ってきた。子どもはなんと、2人もいた。2人ともフードをかぶっていて、顔もよく見えないが、片方は明らかに大きい。旦那の年頃はジョエルと変わらないように見えるのに、子どものサイズ感も大して変わらない。どういう関係なのか、想像が付かなかった。戸惑いすぎて、挨拶を交わしたかどうかも曖昧だ。
だが、俺は、ジョエルに感謝した。
マントを預かろうとしたら、逃げられてしまったが、その下にとても素晴らしいものが隠されていたのだ。
弟のタケル君も、可愛かった。見たこともない聞いたこともない斬新な髪色をしていたが、そんなことはどうでもいい。問題なのは、姉のシャルルちゃんだ。
美しい髪色も去ることながら、愛らしい顔立ち、妖精を思わせる華奢な身体、甘やかな声。フードを取ったら、理想を具現したような女の子が現れたのだ。ふわふわした洋服は、俺の瞳の色だ。俺と出会うために来たに違いない。
挨拶が終われば、お茶の時間だ。
俺は、ジョエルに感謝をしている。ジョエルが子どもを連れて来ると聞いて、子ども向けのお菓子を用意していた。どんな子どもかわからなかったので、手当たり次第、用意した。用意していて、良かった! 今が、努力の報われる時だ‼︎
「シャルルちゃん、これも美味しいよ」
次々とテーブルにお菓子を積み上げていく。子どもウケを狙って、見た目の可愛いお菓子を沢山用意していた自分、グッジョブだ。女の子は、お菓子が大好きだ。好きなだけ食べてくれ。食べたお菓子の種類と、食後の感想は、要チェックだ。
だが、俺は見落としていた。シャルルちゃんは可愛いだけでなく、弟思いの優しい子だった。自分のお菓子を選ぶ前に、弟のお菓子の心配をしていた。俺も兄なのに、盲点だった。
「タケル、食べたいのある?」
「くま」
「熊かー。お菓子じゃないなー」
「タケルくんは、クマさんが好きなのかな? どこかにクマもあったと思うんだけど、、、」
そうだね。優しいお兄さんは、弟にも優しい顔をしなければならないだろう。うちの女装した野生児の弟とは違い、タケル君は2つか3つかそれくらいだ。無視するのは、あり得ない。
「タケルは、肉好きなんです」
熊型お菓子を探していたが、間違いだったようだ。シャルルちゃんが、顔を真っ赤にして教えてくれた。なんだこの可愛い生き物は! お茶の時間に肉は想定していなかったが、期待に応えてみせようじゃないか。
「用意しよう」
シャルルちゃんは、涙目になって慌てていた。可愛い。熊肉なんてあったかどうかわからないが、迅速に手配しなくてはならない。
「お待ちどうさま。ステーキで良かったかな?」
賞賛を浴びるつもりで出したのだが、シャルルちゃんの様子がおかしい? 気の所為か、震えているの、かな?
「シャルルちゃん?」
「るる、くまきらい」
衝撃の事実だ。弟が熊好きで、姉が熊嫌いとは思いもしなかった。そうか、さっき涙目だったのは、そういうことか。想像力が足りなかった!
「え⁈ ごめんね」
「るるのくまは、ぜんぶタケルがたべる。だいじょぶ」
弟よ。マイペースだな。君の所為で地雷を踏んで、お兄さんは大失敗だよ! 2人前を平らげて、今度は食べ過ぎてお腹痛いとか、言い出さないでね!
そんなこんなしていたら、シャルルちゃんはジョエルに連れて行かれてしまった。今度は、キーリー君の相手をしなくてはならない。自分に義弟ができるとは、夢にも思わなかったが、男兄弟がもう1人増えた感覚でいいだろうか。
「こんにちは。キーリー君」
「はじめまして、パーカーさん。どうぞお構いなく」
キーリー君は、俺の世話になるより、タケル君の世話を焼くようだ。そりゃそうか。3歳児の父親だ。手掴みで食べていたタケル君を叱って、フォークで食べさせている。急に手持ち無沙汰になってしまった。
夕食は、家族席に離れて、俺とシャルルちゃんの席を作ったのだが、兄たち全員が割り込んできた。俺は、仕事を休んでお菓子を用意したりしていたんだ。何もしなかった兄たちは引っ込んで、キーリー君かタケル君と食べればいいのに!
だが、にわかの兄たちと違って、俺はすでに面識を持っている! いくつか情報も入手済みだ。マウント取って、撃退してやればいい。
「シャルルちゃん、メニュー大丈夫かな? 嫌いな物がないといいのだけど」
さりげない優しさを振り撒く。もうお茶の時の二の舞はしない。
「お気遣いありがとう御座います。とても美味しそうなものばかりだと思います」
どうだ、見たか、兄たちよ。もう矢印は、こっちを向いているぞ。
兄たちは、必死になって、情報の入手を始めた。みんな一緒にいる時に聞いても、プレゼントがかぶるだけのような気がするが、負けてもいられない。
次の牽制は、何にする?
次回、お兄さんズから逃れるため、お出かけします。




