21.閑話、ジョエル視点
ブクマ登録ありがとうございました。
嬉しくて、ちょっと浮上しました。
わたしは、ジョエル。17歳。剣士よ。
わたしは、男ばかり5人兄弟の末弟として生まれた。ハズなのだけれど、両親の女の子が欲しかったと言う意向で、女の子として育てられたの。4人の兄たちと何の違いも見つからないのに、なんでわたしだけ女の子なんだろう? と疑問に思った頃、自分の境遇を教えられて、驚いたわ。そんなことがあるなんて。
心も女性ではなかったのだけど、両親の悲しむ顔は見たくないし、もう慣れてしまっていたから、女の子の服装をやめなかったの。兄は、どうせ大きくなったら似合わなくなる日が来るから、と言っていたけど、その日は、いつ来るのかしらね。
小さい頃は、女の子と遊ぶこともあったわ。可愛い女の子に囲まれて遊ぶのも、嫌いじゃなかった。だけど、いつからか、女の子に意地悪されることが増えたの。自分が生粋の女の子じゃないから排除するのかと悲しかった。諦めて、男の子の格好にしてみたら、同じ女の子にちやほやされて、気持ち悪かったのをよく覚えてる。
男の友達は、やたらと服を脱がそうとするヤツが多かった。男かどうか確かめてくれるって、余計なお世話なのよ。
友達と遊ぶのに見切りをつけて、1人で遊ぶようになったわ。猿を追いかけて木登りをしたり、熊と相撲をとる方が楽しかった。
時には、連れて帰って食べた。5人兄弟の食争いは激しく、食べ負けてばかりいたから、肉が増えるのはいいことだと、狩りに夢中になった。
人付き合いをせずにできる職業は、見つからなかった。客商売でなくとも、上司や同僚がいるのが普通よね。わたしは、持ち前の拳を生かして、冒険者登録をしたの。人との付き合いは、最低限でできる職業だと思ったから。
駆け出しの頃は、チームに誘われたりイロイロあったわ。上位ランクのオヤジに狙われてみたり、俺の女に色目使うなと責められたり、宿の部屋に知らない女が座っていたり。腹立たしかったわ。だから、実績を積んで、ランクを上げて、見下してやった。上げすぎた弊害で、ギルドがうるさくなったから、失敗したと思ってまた下げたけれど。
そんな頃、酒場で飲んだくれていたら、声をかけてきたのが、キーリーだった。見た目に惑わされてきた男だと思ったのだけど、女性向けのお店の場所を聞かれただけだった。女じゃないから知らない、って答えた後の顔は面白かったから、一緒に飲んで、潰れたキーリーを宿に連れて行ったのが、シャルルとの出会い。
とても華奢で清楚で可憐で。これは絶対、苦労していると思った。家族でも恋人でもない男と一緒にいるなんて、危ないと思ったから、守ってあげることに決めたの。
兄は沢山いるけれど、妹はいない。妹ができるなんて、とても素敵じゃない?
シャルルが倒れたって聞いて、とても心配で見守っていたら、記憶をなくしたと言われて、驚いたわ。どうしたら元に戻るのかしら? と、思ったのだけど、以前のシャルルよりずっと楽しそうにしてるから、これはこれで良かったと思うことにしたの。
一歳違いでお母さんって言われたのは、ちょっとショックだったけど、慕われていたんだと思えばいいのよね。妹でも、娘でも、可愛がればそれでいいじゃない!
行商のオーランド経由で、ギルドからとっても面倒な依頼がきた。簡単な討伐依頼のわりに報酬はいいけど、招集地が遠い。
「オーランド。この依頼は、断っておいて。ギルドはともかく、あなたはわたしの事情を知った上で持って来てるのよね? 次回から、話も聞かないことにしようかしら」
「商売に関係ないこの村に来る行商なんて、私くらいですよ? ギルドとの連絡が取れなくなりますよ!」
「仕事なんて、どうでもいいのよ。ルルーだけいれば、満足だもの」
「秘密の友達から、ひと財産もらったばっかだしなー」
「キーリーさんも、反対なんですか?」
「そりゃまぁ、こいついないと戦力落ちるし。金の方が代わりがきくからな」
「1つの依頼で年収を超えるんですよ!」
「あんま稼いでも、この村、金の使い道ないじゃん」
「私が商品持ってきますよ!」
「なんであなたの稼ぎのために、仕事しなくちゃいけないのかしら」
何度言われても受ける気なんてないのに、時間の無駄よね。食べ終わったら、放って出かけましょう。
無視して黙々と食べ始めたら、シャルルたちがやってきた。
「ごはん一緒に食べていい?」
「いいよ。オーランドは、ちょうど帰るところだから」
笑顔で返事をした。オーランドに突き刺さって、本当に帰ってくれたら助かるわ。
「おじさんをいじめるのは、ジョエルの勝手かもしれないけどね。食べ物を粗末にするなら、私は絶対に許さないよ!」
怒られた! 失敗した。そういえばこの子は、食べ物を大事にする子だった。
「ルルー、ごめんなさい」
許してもらえなかったら、どうしよう! オーランドなんて、どうでもいい。ごはんに気をつける。ごはんに気をつける。覚えないと。
「という訳で、お邪魔しまーす」
シャルルは、オーランドの横の席に座った。くっ、オーランドが羨ましい。妬ましい。そこは、わたしの場所なのに!
「シャ、シャルル、ダメだ。そこは、ローワンの席だから」
そうね。キーリーは、いいことを言ったわ。
「シャルルちゃんは、こっちのイスに! ジョエルさんの横で! ここでお願いします‼︎」
ダコタも良い仕事するわね。
「わ、私も、ローワン君と座りたいかな」
そんなことを言っても、依頼は受けないけどね!
「シャルルちゃんからも、説得してくれない? お仕事頑張るジョエル格好いい! とか、おじさんに優しいジョエル素敵! とかさ」
それは! いい‼︎ 素敵ね。シャルルにそう言われたら、考え直してしまうかもしれないわ。
「嫌なの?」
「絶対に嫌」
「嫌なんだって」
ちょっと期待していたけれど、言ってもらえなかった。残念。
「そう言わないでよー。SランクとAランク全投入して歯が立たないんだよー。ジョエルだけが頼りなんだって言ってたよー」
「うちはしがないCランクなの。Bランクを投入すればいいでしょう。Bランクまでは、ギルドの命令は絶対だもの。Cランク以下は断る権利があるんだから、わたしは行かない」
「難しいの?」
わたしの腕を疑われてる? オーランドの所為ね。
「違うわ。魔物退治に参加するより、ここでルルーを抱きしめている方がいいじゃない。招集場所が遠いのよ。毎日帰って来れないの。絶対、嫌だわ」
「抱きしめるのは、禁止だから。骨折れるから。怖いから。痛いから。やったら嫌いになるから」
半分冗談だったのに、こんなに嫌がられるなんて! こんなに可愛いのに、抱きしめちゃいけないなんて、辛すぎる。
「だけど、皆の役に立つジョエルは格好いいから、抱きしめる方ならいいかな?」
‼︎ 抱きしめるのはダメだけど、抱きしめられるのはいい? わたしは、どっちも変わらないと思う。いや、むしろ抱きしめられる方がいい? 依頼、受けちゃう?
だけど、シャルルは野放しにできない。誘拐されたら、いつだって助けられる場所にいないと。Sランクが投入されるような現場にも連れて行けない。討伐対象より、Sランク冒険者の方が危ない。
折角のシャルルの提案なのに、わたしは、、、
「できない」
血の涙が出そう!
わたしは、泣く泣く諦めたのに、シャルルは更に言う。そんなにわたしを抱きしめたいのかしら!
「おじさん。戦場から日帰り圏内で、温泉地とか、観光地とか、薬草パラダイスとか、何かそういうのない? 私、しばらくそこに遊びに行くから」
「シャルルちゃん、ありがとう! 調べてくる」
ようやく、オーランドは帰って行った。
追加の前払い報酬にリゾートホテルのスイートルーム宿泊無料券や、シャルルの喜びそうなオプションが付いて来たから、依頼を受けることにした。
「ジョエルって、すごいんだね」
と言われたのが、1番の報酬だった。
毎日ハグは断られてしまったが、今回のシャルルの足はわたしだ。特権を生かして、抱っこして行く。シャルルは、悲鳴をあげながら必死でくっついている。シャルルには悪いけれど、とても素敵な時間だった 。
以前の温泉宿でも思ったけれど、温泉の後のシャルルは、ふわふわしていて、いつもの3割り増しで可愛い。村に風呂付き一軒家を建てて、引っ越そうかと思うくらい可愛い。男どもが見る機会を作るなら、やめた方がいいけれど。
シャルルは、変なテンションで、ネタとしか思えないようなパフェを注文した。大きすぎて、1人では一口も食べれない代物だった。
食べるのを手伝う名目で、シャルルを抱き上げたり、楽しい時間を過ごしていたのに。ギルドの阿呆が出てきて、シャルルに意見しようなんて、100年早いのよ!
温泉に入って、幸せそうなシャルルに見送られて、仕事に出かけた。今回の依頼は、討伐。但し、討伐対象が何物か、何処にいるのかがわからないのが、厄介な仕事。早く切り上げて、シャルルと食事ができるといいけれど。
4日目は、討伐対象探索中に、シャルルが誘拐されたと言う伝令が届いた。黒い虎に連れ去られたらしい。絶対に許さない! 止めるギルド関係者を蹴散らして、ホテルに戻った。
ホテルの部屋に行くと、ローワンがいた。キーリーは捜索に出ているらしい。
「ジョエルさん! 天使様が! 天使様が‼︎ 虎に!」
「ええ、聞いているわ。ルルーの最後の足取りを教えてくれる?」
次回、vsジョエル。
勝てる訳ない。




