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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第一章.美女と熊と北の山

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17.閑話、ローワン視点

 僕の名前は、ローワンと申します。24歳で、薬師をさせていただいております。


 一口に薬師と申しましても、いろいろな人間がおります。最も多いのは、知られた定番の薬を作って、店で売ったり、医師に卸したりする薬師でしょうか。中には、研究をして独自の薬を開発する者もいれば、毒を作る者もおります。私は、開発した薬を売るタイプの薬師です。時には、医師の真似事も致します。

 通常の薬の材料であれば、大体問屋に行けば揃います。ですが、新薬の材料となれば、時には自分で探し歩かねばならないことも、多々ございます。常備薬であっても、あまり需要のない物は、取り扱い店を見つけられず、自分で探すことになります。僕は、大体10日に1度ほど天気がいい日を見計らって、薬草探しに行っておりました。


 慣れた北の山で、採集をしていた時のことです。目当ての薬草を摘み終わり、後は下山するばかりであったのに、不注意で穴から転げ落ちてしまいました。

 周囲は真っ暗。何も見えませんし、体感でかなりの高さを落ちたことはわかりましたので、絶望的です。 元気なままでも絶望的なのに、足がとんでもなく痛いです。折れているような気がしてなりません。

 その場で途方に暮れていると、灯りがともるのが、見えました。声も聞こえます。こんなところで、人に出会うことがあるなんて、奇跡です。

「すみませーん! 助けてください‼︎」

 できる限り大きな声で、助けを呼びました。気付いていただけたでしょうか。

 灯りがどんどん増え、こちらに向かって近付いてきます。灯りが数えきれないほど沢山に増えましたが、あれは人間ですか? 灯りを灯すのなんて人くらいだと思っていましたが、こんな場所にいる人数として、おかしくないですか?  冷や汗をかきながら、その場に留まっていると、沢山の小さい獣人の皆様が来てくださいました。もぐら型かネズミ型だと思われます。攻撃性は見られません。良かったです。

「穴から転げ落ちて、ケガをしてしまいました。申し訳ないのですが、助けていただけないでしょうか?」


 獣人の皆様のおっしゃるには、こちらはドラゴンさんの巣穴の空気孔だそうです。保護して食事くらいなら出せるけれど、治療と帰宅は自分でして欲しい、と言われました。獣人さんたちのお部屋は満室だそうで、適当な部屋がないので、宝物庫を使ってくれと言われましたが、1番貸してはいけない部屋ではないでしょうか。圧倒されましたが、手はつけません。助けて頂いたのに、そんなことはできません。


 宝物庫で、ぼんやり過ごす日を3日ほど過ごした後、唐突に天井の穴から人が降りてきました。穴から落ちているハズなのに、ふわりふわりとゆっくり降りてくるのです。心なしか、緑に淡く光っているようにも見えます。幻想的な光景でした。

 そのまま宝物の山の上に、降り立ちました。そこまで這って行くと、黒髪のとても美しい天使様がいらっしゃいました。天使様の目は、閉じられています。

「大丈夫ですかー?」

 頬をペチペチと優しく叩いてみました。暖かいので、眠っていらっしゃるだけでしょうか?

「ちくしょう!」  

 天使様は、ガバリと起き上がりました。

「起きましたか。良かったです」  

「あ、どうも。おかげさまで?」  

 天使様は、瞳の色も美しい漆黒でした。宝物庫にあるどんな物にも比べるべくもない神々しさです。

「どちら様でしょう? 私はシャルルというのですが」

「天使様のお名前は、シャルル様というのですね。可愛らしい素敵なお名前ですね。僕は、ローワンと申します。情けないことに、穴から落ちてケガを致しまして、こちらで静養させていただいておりました」

「へー。ローワンさん。ローワン? ローちゃん?  薬師のローちゃんさん???」

「はい。薬師をしております。僕をご存知でしたか。変な名前を教えたのは、隣人のキャスですね。すみません。天使様は、お客様でしょうか? 申し訳ないのですが、今は、薬の持ち合わせがなくて」

せめて薬草カゴと一緒に落ちれば、天使様にも獣人の皆様にも、少しはお役に立てたかもしれないのに、一生の不覚です。

「あ、私は薬持ってるんですよ。ケガって、どこですか? もしかしたら、治るかも!」

「いや、ケガと申しましても、骨折なので薬では」

「いいから、いいから。治ったら、ラッキーくらいで塗ってみましょうよ。痛みがちょっと引く薬らしいですよ」


 いくら天使様のお力でも、傷薬で骨折は治りません。恐れ多くもありますのでご辞退申し上げたのですが、素早い動きについていけず、とうとう塗られてしまいました。

「こっせつなおれー! なーんてね」

天使様は、大変純真な心の持ち主なのでしょう。見た目通りの方なのですね。

「あはははは。治るといいですねぇ」

「ねー、、、ん?」

 どこからともなく、爆発音がして、こちらへ近付いてきているようです。こちらへ来て、初めて聞いた音ですが、何の音でしょう。

「何か、音がしませんか?」

 天使様は、不安そうな顔をしていらっしゃいます。不謹慎ですが、とても可愛らしいです。

「そうですね。ドラゴンの部屋の方でしょうか。運動でもしてるんでしょうかね」

「ど、ドラゴン? あの、トカゲに羽つけて大きくした? あれ? ヘビだったかな?」

「そうですね。少しですが、トカゲに似ていらっしゃいました。親類なのでしょうか。

 あちらにドラゴンの部屋があって、こちらは宝物庫だそうですよ。適当な部屋がないと言われ、こちらを借りているのです」

「宝物庫!」

 天使様は、初めて気付いたように周囲を見回し、宝石を手に取られました。これらで装飾品を作ったら、更にお美しくなられるでしょうね。

「いや、本当に音が、どんどん! ちょっと見てくる」

「あ、天使様。え? 歩ける???」

どうしたことでしょう。痛みが引くという話でしたが、足が元に戻っていませんか? 確認してみても、そのようにしか思えません。

 足が治った理由は、先程の天使様の薬以外、心当たりがありません。天使様のお力は本物でした。素晴らしいです。


 天使様を追いかけると、天使様が見知らぬ男に襲われていました。お助けしなくてはなりません! 走り寄り、天使様を奪還しようと思ったのですが、男に蹴り飛ばされました。情け無いことです。

「ちょ、やめてよ、キーリー。私を助けようとしてくれただけだよ。ひどいよ!」

「野郎に殴られる趣味はねぇ。殴るなら、蹴られる覚悟を持つべきだ」

 天使様と男は、押し問答をしています。このままではいけません。なんとしてもお救い申し上げねば!

「天使様を離せ!」

 向かって行ったのですが、また蹴飛ばされました。

「うるせぇ。これは、うちのシャルだ」

 男は、天使様を抱きしめました。天使様が嫌がっている様子はありません。

「え? お知り合いですか?」

 ならば、お助けしなくても良かったのでしょうか。

「父でーすー」

ずずいと顔を寄せて言われました。

「ず、ずいぶんとお若いのですね?」

正直、同じ年にも見えるお二人なのですが、天使様が否定されないのですから、事実なのでしょう。

「父でーすー」

母御の後添えなのかもしれませんね。それなら、年齢など関係ないでしょう。

「すみませんでした」

血のつながりがないのなら、似ていないのは当然です。人を見た目だけで判断するなど、恥ずべきことでした。

「キーリー、薬師さんだよ」

「うすうす気付いてまーしーたー」

「ごめんなさい」

 お2人は、とても親しげにお話しされています。義父にも優しい天使様。素敵です。

「おい、薬師、ドラゴンを止めれるか? 俺は、ジョエルを止めるから」

 ぼんやりお2人はを眺めていたら、お父上にとんでもないことを言われました。

「え? ドラゴンを? 無理ですよ!」

見かけたことはある。その程度の間柄です。一方的に大変お世話になっていますが、面識はないのです。

「できない男に、シャルに近付く権利はねぇっと、そぉーれー」

信じられません。天使様を崖から落としました! 父親じゃなかったのですか? 義理だからですか? 慌てて淵まで駆け寄りましたが、僕にはどうすることもできませんでした。

「ひぃいいやぁあぁ!」

「じょえるー、たーすけろー」

 しかし、天使様は、ドラゴンに乗った女性に助けられました。

 それだけで終わらず、天使様はドラゴンの傷の治療も行いました。ドラゴンの治療実績など聞いたことがありません。天使様!

 天使様は、ドラゴンに認められたのですが、倒れられてしまいました。たおやかな身体では、耐えられなかったのでしょう。



 僕の骨折は治ったので、帰ることになりました。天使様御一行と同道させていただきます。

 お父上が天使様を抱えられ、連れの女性がドラゴンからもらったお土産を持って帰ります。お土産と言っても、1番大きな物は、馬車です。どういう理屈かわかりませんが、1人で抱えて持っています。

 街に着いたところでお別れし、自宅に帰ります。

 さて、急がなくてはいけません。荷造りをし、自宅の片付けをします。家の鍵を隣のキャスに預け、毎日天使様のご宿泊所の前に立ちます。

 天使様に創薬をご教授頂くのです。あの骨折を治す薬、ドラゴンを癒す薬の処方を教えて頂きたく思います。秘術だと断られるかもしれませんが、何年かかっても引くことは考えておりません。


 3日目に、女性に抱えられた天使様にお会いすることができました。後は、誠意を見せるだけです!

「お父さん、僕を娘さんの弟子にしてください。お願いします!」

 最大級の礼を尽くして、お願いしなくては!

「却下だ! ドラゴン止められないヤツは近寄るな、と言ったハズだ」

 素気無く断られてしまいました。何故あの時、行動しなかったのか、悔やまれます。

「婿じゃありませんよ。弟子ですよ?」  

天使様は、大変可愛らしい方です。言い寄る男が多すぎて、辟易しているのかもしれないことが想像できます。理解はできるのですが、僕だって譲れないんですよ。

「どっちも募集してないんだよ」

「娘さんの薬は、本当に素晴らしい物だと思いました。簡単に教えて頂けるとは思っておりません。あの薬で治癒できる患者を増やす手助けがしたいのです。よろしくお願いします」

「うぜぇ!」

 紐でぐるぐる巻きに縛られた上、道に転がされてしまいました。認めて頂けず、置いて行かれてしまったけれど、このくらいなら想定内です。僕は、諦めない。



 通行人に助けて頂いた後、馬を手配して追いかけました。今なら轍の後を追えるし、街に着けば馬車の情報は簡単につかめました。誰かに聞く必要すらなく、みんなが黄金の馬車の噂をしていたのです。泊まっている宿には、馬車の見物人。人混みができているから、あちらには気付かれずに確認できました。

 次の日からも、距離を空けて追跡します。途中、盗賊に襲われているところに追いついてしまいました。天使様の姿はなく、お父上と力持ちの女性の2人で応戦していました。お父上は、馬車の上から弓で狙撃して、女性は剣を抜いて戦っていました。お父上の狙いも正確でしたが、女性の動きが早すぎます。包囲網を敷かれているのに、ほぼ一人で馬車の全方向に対応し切れているのです。あの様子なら、僕が助けに行っても邪魔にしかならないでしょう。むしろ、お父上にわざと狙撃されかねません。  

 僕は安心して、馬車を追い抜きました。


 街道に沿って行くと、村を発見しました。ひなびた村ですが、そろそろ補給がしたいです。店を見つけて立ち寄ったら、あの薬らしき物を見つけました。

「すみません。これは傷薬ですか?」

「いえ、違いますよ。うちの孫が作った、オブジェですよ」  

 お店のお婆さんは否定したけれど、そんなことでは誤魔化されませんよ。

「シャルル様のお婆様なのですか? その薬に大変な価値があるのは存じております。1つで構いません。お譲りいただけませんか?」

「ごめんなさいね。これは私の宝物だから、お譲りすることはできないの」

「そうですか。無理を言いました。申し訳ありません」

 補給をして先に進む予定でおりましたが、生活用品を買い足して、宿をとりました。


 宿の食堂でオススメの熊カレーをいただいていると、急に騒がしくなって、天使様御一行が現れました。当たりです。

「お父さん、娘さんの弟子にしてください」

「何でいるんだよ。断っただろ! 却下だ。ドラゴン倒して出直して来い‼︎」

 またドラゴンですか。無理なことばかり言うのであれば、僕にも考えがありますよ。お父上は置いておいて、後日、天使様に直接申し入れましょう。

次回も閑話です。

pvが伸びてきて、嬉しいです。

ありがとうございます。

励みに頑張ります。

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