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死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第九章.これはハッピーエンドですか?

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108.お久しぶりです

 光龍が住んでいるという、森にやってきた。

 光魔法は、回復魔法だと習った。病気とかケガとかを治す魔法だ。人間が使う魔法には限界があって、なんでも治せる訳ではないようだけど、魔法の元締めをしてる金ピカドラゴンなら、なんとかできるかな、という期待をしている。とっとと見つけて、戻してもらおう。光精霊を統べる光魔法の第一人者だ。シュバルツより、魔法に詳しいに違いない。

 竜は巨大生物ではあるものの、それでも容易には見つからないだろう広大な森だった。だから、放っておいても見つけることができないだろうに、先生が竜の魔法で迷いの森になっていると言っていた。だから、竜のところまで案内すると最後まで言っていたのだが、無視した。行き先がバレたところで、転移してしまえば追いつけない。転移魔法は風魔法だから、私が許可しなければ、誰も追ってくることはできないのだ。


 光龍は、以前、気持ち悪い廊下を作っていた。森もあんな風にしているのだろう。私は、もうあんなものに付き合う気はないが。

「マチュア、森を枯らせる?」

 私の不用意な一言で、森が端から順に枯れていった。植物にだけ作用するようで、時折、動物が逃げて行くのが見える。このまま枯らしていけば、いずれ光龍が見つかるだろう。見つかったら時間を巻き戻すか、植物を強制生育させるかして、森を戻せば良い。

 枯れていく様をイスに座って観賞していたが、私は、大事なことを忘れていた。

「このバカ娘! 何をしているのだ!」

「ひぎゃあぁあぁああああああああああああ!」

 速攻で光龍が出てきてくれたのに、私は、恐怖で意識を保っていられなかった。



「お嬢さん、お嬢さん! お嬢さん」

「きぃやぁああああああああああぁああああ!」

 至近距離の先生の顔に耐えられず、状況を確認せずに魔法で吹き飛ばしたら、自分も吹き飛んだ。受け身は取らずとも精霊たちが勝手に守ってくれるが、とてもびっくりした。

「なんで先生がいるの? 竜に誘拐されたの?」

 この状況には、心当たりがある。前回はシュバルツが誘拐されてきたが、今度は先生が誘拐されたのだろうか。光龍、人選ミスだよ。私は、先生も怖いんだよ。これ以上、シュバルツに怒られるよりは、良かったけども。

「お嬢さんに償いがしたかったから、追いかけてきたんだよ。魔法で負けるなんて、役に立てる自信をなくしてるけれども」

「私事で恐縮ですが、先生を全身が拒否してるから、同じ空間にいたくないんだよ!」

 今となっては、どう考えても私の方が強いだろうに、それでも涙と震えが止まらない。二龍になっても克服できないのだ。もう無理だ。

「光龍が通訳が欲しい、と泣いていたよ。竜まで泣かせるなんて、何がしたかったんだい?」

「ぐふっ。光龍に聞きたいことがあって質問しに来たんだけど、竜が怖すぎて話ができなかったんだよー」

「その話の代行をさせてもらえないだろうか。罪滅ぼしなのだから、無論、無料だ。お嬢さんは、無料が大好きだろう」

「私の手伝いをすると、シュバルツの恨みを買うよ。シュバルツは、反対してるんだよ。私の肩を持っていいの? 肩を持ってくれたところで、生理的に無理なものは、改善の余地はないよ」

「自分の不利をわざわざ言うとは、相変わらずだね。問題ない、協力しよう。何を聞きたい?」

「光龍の光魔法で、私とシャルルの体を入れ替えて欲しい。できなければ、私が精霊を根こそぎ奪って、魔法の研究をしたい」

「その研究には、是非とも参加させて欲しい!」

 なんと! 探していた共同研究者が、こんなところに。先生なら、知識経験共に申し分ないのではなかろうか。だが。

「先生の知識は有用だと判断した上で、断る!」

「何故だ!」

「さっきから、涙と震えが止まらないんだよ。察してよ」

「察した上で、引いたら終わりじゃないか。ひとまず、光龍に会ってくるから、森を修復して欲しい。ここまで荒野になってしまうと、オレには直せない」

「了解です」


「ヴィリエーミャ、森をちょちょっと直して」

 端からまた徐々に緑が返ってきた。細かい植生がどうだったか覚えていないが、ぱっと見は木や草の種類や大きさは前と同じではないかと思う。動物がいない森になってしまったが、戻ってきてくれるかな。私も、ここまで大規模に森を消去するつもりはなかったのだけど、私が気絶している間に、森が半分くらい消えていて、ちょっと焦った。影響力のある魔法は、気軽に使ってはいけないね。

 やりすぎて魔力を根こそぎ持っていかれたのかな。頭がくらくらしてきた。二龍になったのに、魔法は使い放題ではないんだろうか。魔力は、まだまだありそうなんだけど、なんだろう。イスをしまって、ベッドを出して、休むことにした。



「ここは、どこだ」

 少し寝ている間に、土壁で囲われた部屋にいた。

「屋外にベッドを出して寝てるなんて、本当に無防備がすぎる」

「近寄るな!」

 カマイタチを放った。基本はハズしているが、2、3発は掠らせた。うっかり直撃しても、後悔はしない。

 立っていたのは、トリトリ先生だ。ここに現れる人間など、聞かなくても最初からわかっていた。最悪の人物しかいない。

「しゅっ、周囲に壁を作っただけで、半径3m以内に近寄ってもいないよ!」

 先生も、ようやく実力が逆転したことを実感したのか、慌てている。もうセクハラは許さないよ!

「光龍に聞かなかった? 私は、ニ龍になったんだよ。敵なんて、そうそういないよ。嫌いな人はいるけれど」

「お嬢さんのお願いを聞いて、お嬢さんの保護をしたつもりでいるのだけど、今オレはどこに立っているのかな」

「ニ龍軟禁罪」

「そんなつもりは、まったくなかったよ」

 先生は、ショックを受けたような顔をしていたが、許してなんてあげない。


「光龍からの伝言を伝えるよ。『2人の身体に異常はない。光魔法では戻すことはできない。』理論上無理だから、精霊を奪うのはやめて欲しいそうだ。そして、できることなら、既に奪われている精霊も返して欲しいそうだよ」

「そっか。やっぱりそうか」

 この身体を入れ替えたのは、シャルルだ。だとしたら、風魔法か地魔法か、そのハイブリッドか、そのどれかだ。そうすると、もう他力本願は無理だ。意地でも独力で開発せねばならない。光龍に、お前光魔法のエキスパートだろと言うのは、まんま自分に返ってくるブーメランだ。魔法なんて意味がわからん、なんて言ってないで、ちゃんと向き合わなければならないようだ。

「光龍の人徳がない所為で、私にくっついて来ちゃった子は、返せないよ。何したのか知らないけれど、反省して謝って、許してもらえばいい」

次回、他力本願お姉ちゃんが、最後まで他力本願を諦めない話。

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