101.責任をとれ
弟妹が寝るのを見届けて、異世界に戻った。
村に還ってきた。
帰ったと同時に、レクシーたちを舞踏会に置いてきてしまったことに気付いたが、シュバルツがいるし、放っておいても大丈夫だよね? ってことにして、とりあえず寝ることにした。だって、もう眠い。やらなきゃいけないこととか、いっぱいありすぎるから、明日でいい。後で、怒られたらいいだけだ。
シャルルをシュバルツ宅に連れて行き、畳の部屋に布団を敷いてもらって、2人で寝た。
のだけれど、朝起きたら、ジョエルとキーリーが部屋の隅に座っていた。女性の寝所に入り込むたぁ、フテェ野郎だ。家から叩き出し、ゆっくりゆっくり身支度をして、朝ごはんが出来上がってから、ようやく家に入れてあげた。龍の力があれば、この家を封鎖することなんぞ造作もないことなのだよ。
雑穀米に麦味噌汁、焼き魚としば漬けの朝食だ。私以外は、食べ方もわからないだろうと思っていたのだが、シャルルとキーリーは、普通の顔をして箸で食べていた。なかなかやるな!
「で、シャルルとジョエルの結婚について、話を聞いてもいいか?」
キーリーは、あっという間に食べ終えて、話し始めた。シャルルやジョエルに説明するなら気楽だけど、キーリーに話すのは、シンドイなぁ。可哀想だなぁ。
「いろいろ考えたんだけどね。それが一番だと思ったんだよ。シャルルをあっちの世界に置いといても、弟妹とオーナーさんの負担にしかならないけど、こっちには万能ジョエルがいるし。シャルルとジョエルは、元々両思いだったんだから、くっつけちゃえばいいじゃん。キーリーは不満だろうけど、諦めて。諦めたら、『頑張ったね』って慰めてあげるから」
「両思い?」
今のところは、怒っているというよりも、単純に疑問が勝っているような顔だ。絶望に染まる顔とか見たくないんだけど、どう話したらキレイに終わるだろう。
「そうだよ。分かるしかないじゃん。この身体は、ジョエルのことしか見てないし、2人はシャルルが好きだから、お姫様みたいな扱いしてたんでしょう? 両思い確定じゃん。シャルルが、キーリーのことも好きだったら、3人で結婚するのを勧めるけど、ごめんね、諦めて。
あ、でも、今すぐの結婚は認めないよ! 身体を元に入れ替える予定だから、それまではイチャイチャもなしね。したら、ブチ切れて、村を全壊させても止まらなくなっちゃうから、絶対やめてね」
ちょっと前の私なら、3人で結婚しちゃえばいいじゃん、と言っていたかもしれない。でも、結婚を考えられない人が混ざるのは、本気で受け入れられないことを知った。キーリーは悪いヤツではないけれど、結婚には混ぜてはいけないのだ。
「気付いてて、アレだったのか!」
「だって、私は関係ないもん」
シャルルに転生したんじゃなくて、入れ替わってただけなんだから、関係ないよね。シャルルのフリしてモテモテ気分を味わうことができたとして、自分が好かれてる訳じゃないんだし。
「、、、。で、お前は、どうすんだ?」
「私? こっちで、田平の分まで学費と結婚費用を稼ぎつつ、シャルルと身体を交換する魔法を習得して。シャルルの教育もするでしょ? その先は、終わったら考えるよ。鬼に笑われるだけだよ」
「俺の結婚指輪を作る件を忘れている。デザインは、コレだ。御形が描いた。身体を入れ替える前に作れ」
ノートの切れ端を渡された。春の七草に紫の花が追加されている。お店で選んでたデザインは、どうなったんだよ。一応、薄っすらとは記憶してたのに。
「1つの指輪に、随分詰め込んだね。大根やカブの柄なんて初めて見たよ。でも、これ、色付きだよ。難しくない?」
「龍だろ。頑張れよ。お前にできなきゃ、誰にも作れないだろ。御形の頑張りを無駄にするなよ」
「そうだね。御形のためなら、何でもできるよ」
「サイズは、俺の薬指とナズナの身体の薬指に合わせろ」
真面目な顔して、何言ってるの? まだ諦めてないのか。
「は? ダメだよ。シャルルと結婚するのは、ジョエルだよ」
「ジョエルとシャルルが結婚した後で、俺とナズナが結婚するんだよ。悪いが、これはお前の弟妹の総意だ。諦めろ」
「何それ、聞いてないんですけど。じゃあ、お金を集め終わっても、私、あっちに戻れないの? 戻ってくるな、って言われてんの?」
オーナーさんとの結婚話は、勘違いだった。私が向こうに戻る障害はなくなったのだ。なのに、どっちで暮らすか考えることもなく、勝手に決められてるなんて、酷くない? ちょっと留守しただけなのに、そんなに私、嫌われちゃったの? そりゃあ、一時は皆を見捨てたし、もうお姉ちゃんじゃないと言われたら、言い返せない。だけど、だけど。
「戻りたければ、戻ればいい。俺がついていく。コセキ? の取得については、スズネが対策済みだ」
「マジか! うちの子に何させてんの? えー、あっちに行ったら、ジョエルすら役立たずな気がするんだけど! キーリーを養わないといけないの? 私の学費も稼がなきゃダメなの? まぁ、5人分だけで半端ないし、1人追加しても、大して変わんないかなー。まじかぁ」
「シャルルを諦めるんだ。責任取れ」
なるほど。そういうことか。シャルルじゃないなら、誰でも良い的な。そこまで自機にならなくても、適当にいい子が見つかると思うよ。村から出れば。
「そうだね。女なら何でもいいって言うキーリーがあぶれたのは、不幸中の幸いなのか。わかった。わかったけど、身体が戻るまでは、手出し禁止だから。身体が戻ったら、本気で私と結婚するか、考え直したらいいよ」
日本人は若く見える理論で、まだバレていないのかもしれないが、実は私はキーリーの世界では、なかなかの行き遅れだ。気付き次第、即刻フラれるよね。
「まったく相手にされてないのに、貢ぎ続けた俺をなめるなよ?」
キーリーは、いつも通り性格の悪そうな笑顔を浮かべた。シャルルの結婚に、特に傷付いているようには見えない。良かった。泣かれたら、どうしようかと思ってたんだよ。
「そうだね。男にならない限り、後はどうでもいいって言うなら、私も気が楽だよ」
「資金調達には、全力で協力してやる。お前も俺のために、男性恐怖症を完全に克服しろよ」
ちょ。それは、まさか、キーリーとデートしたり、イチャイチャしたりするってことか! マジか! 嫌だ!! 無理だ!!!
「結婚するのは、辞めましょう」
「弟妹の期待を裏切るんだな?」
「お姉ちゃんは、無敵ですよ!」
次回で、この話を終了してしまうか、八章終了にするか、悩みどころ。
落とし所が見つからず、キーリーさんに出てきてもらったけど、なんでだよ、と思わずにはいられない。




