表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります  作者: 穂村満月
第八章.みんな可愛い私の弟妹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/125

98.閑話、ケネディ視点

 わたしは、ケネディ。今、恋をしている。



 美しい少女がいるという噂は、聞いたことがあった。何処にいても目を引く、絶対の美しさを持っているのだと。一度見てみたいものだと思っていたが、それが叶うことはないままに、彼女は街からいなくなってしまった。


 その時は、さして残念とも思わなかった。美人などと言ってみたところで、どうせたかが知れている。噂だけなら、うちの母も姉も妹も、そこの菓子屋の娘も、みんな美人だ。確かに不細工ではないと思うが、美人と言われると首を傾げざるを得ない。皆が美人であれば、美人に価値などないだろう。


 彼女の存在なんて、すっかり忘れていたのに。ある晩、美しい人を見た。

 艶やかな髪、麗しい顔、均整のとれた体躯、どこから見ても、無駄のない美しさだった。華やかで、煌びやかなオーラを持つ、太陽のような人だった。その人が通り過ぎた一瞬は、昼のような輝きを感じた。

 あの人こそ、噂の少女の未来図に違いない。


 街を駆け抜けた美しい人が誰であったのか、容易に知ることができた。次の日には、止められない噂になっていたのだ。彼女は美しいだけではなく、仕事の腕も一級で、著名だった。あの凜とした佇まいは、美貌だけで裏打ちされたものではなかったのだ。



 早速、知己を得るべく、動いた。何をする前に、まず知り合わなければ話にならない。

 彼女は、たまたまこの街に遊びにきた人で、街には住んではいない。噂を確認した頃には、もう街から離れていたので、会うことは難しくなった。


 住所は簡単に知れたが、わたしが自然と訪れることができるような土地ではなかった。知り合いでもないのに、押しかけることはできない。知り合えれば何でもいい訳ではない。


 わたしは、舞踏会を開催した。

 日頃から、見識を広めるために行っていることだが、そこに彼女を招待することにした。主催者と招待客の関係であれば、自然と挨拶ができる。ビジネスの顔で知り合う方が、スマートに知り合える。

 彼女の兄の友人というだけで、個人的な面識はないので、著名人を片っ端から呼ぶパーティにした。彼女個人ではなく、所属団体を丸ごと招待した。



 隙のない装いを研究し、当日を迎えた。いよいよ待ちに待った日がやってきた。平服の彼女も美しかったが、着飾った彼女の美々しさは如何許りだろう。

 逸る心を抑えて、招待主としての挨拶業務に従事する。挨拶だけきちんとこなしていれば、自然と彼女と知り合えるのだ。あわてる必要はない。

「ジョエルと申します。お招き下さり、ありがとう御座います」

 、、、、、。

「ちょっと待てぃ。お前は、誰だ!」

 見覚えのある金の髪。見覚えのある緑の瞳。見覚えのある整った顔立ち。見覚えのある!

「なんで、男なんだ!!」

「わたしは、生まれた時から男ですから」

 そんなハズはない。噂だけなら15年前から知っている。15年前から、わりと最近までずっと女だった。顔を見れば、人違いでないことは知れる。男装の麗人でもない。生粋の男に見えた。最後の恋のつもりでいたのに。

「なんで、ドレスを着てこなかった!」

「わたしは男ですから、ドレスなど着ませんよ」

「嘘だ。昔は、ドレスしか着てなかったろう!」

「兄の誰かと、勘違いなさっているのではないですか?」

「兄がドレスを着るものか! お前と知り合うために、全員友人になったんだ。そんなのが混ざっていないことは知っている。10年以上、ずっと想い続けていたのに、わたしの初恋を返せ!!」

 泣きながら、つかみかかった。

 無様だ。みっともない。公衆の面前で行うことではない。著名人を片っ端から呼んだ会で乱心するなど、最悪だった。逆上して、それに気付いていないのではない。しれっと適当なことを並べる佳人だったものに、そのくらい腹が立ったのだ。

 お前は、想いを寄せられることなど茶飯事なのだろう。好意を持たない相手に寄せられる想いなど、ただの雑音だろう。むしろ迷惑なだけだろう。だが、その想い1つひとつは、純粋で必死なものだったかもしれないのに。せめて、真剣に話を聞け!

「10年前? ロリコンか」

 Sランクには、敵わない。ひょいといとも簡単に投げられたが、力量の差など関係ない。

「10年前は、わたしも子どもだったに決まっているだろ!」



 舞踏会だったものが、武闘会に変わった。

 一方的につかみかかっては、投げられ続けるだけのショーだが、招待客には、概ね好評を得た。また開催して欲しいとの要望が次々挙がっているらしいが、誰がやるか。しばらくは、ケガの治療で静養だ。誰にも会わずに引きこもった。


 ジョエルは、まったく腹の立つ男だったが、つかみかかって投げられ続けるうちに、想いは消え去った。今は、憑き物が落ちたかのように、不思議なほどスッキリしている。わたしは、新しい恋を見つけたのだ。

 あの舞踏会に、とても美しい女性が現れたのだ。何もない空間に前触れもなく出現し、ふわりふわりと落ちてきた。まっすぐな鳶色の髪、大きな漆黒の瞳。ほんのりと緑の光を帯びている。男装にも見えたが、あの小柄な体型は、今度こそ絶対間違いなく女性だ。愛らしい笑みに、一瞬で心が奪われた。


 ジョエルが連れ去ったので、諦めかけたが、念のために情報を求めた。美しい彼女の目撃情報は、簡単に集まった。

 舞踏会に来たものの、足を痛めて踊ることもできず、人見知りのために、会話を楽しむこともなかったという。夫を名乗る人物もいたが、明らかに口裏合わせの兄だったそうだ。

 父と兄に守られて、付き添いで舞踏会に現れたご令嬢だ。ジョエルのものであったなら、兄が夫の代役などしないだろう。美しく控えめで、奥ゆかしい彼女。最高だ。

 今度こそ今度こそ今度こそ、素晴らしい出会いを果たしてやるぞ。

 そういや、釣書その1の人の閑話書かなかったなぁ、と今頃思い出したので、同族の方を出してみました。釣書さんは、第三婦人希望で、ケネディさんは、第一婦人希望という違いはありますが、どっちでも大して変わらないと思います。

 文章中に齟齬がありますが、ケネディさんの中では、辻褄はあっています。そんなお年頃だという表現のつもりです。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ